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部下に一任してみる

個人としての能力の高い人物が、必ずしも上長として優秀であるかというと、決してそういうわけではありません。

その人の仕事ぶり自体は素晴らしいものがあるのですが、その人の仕事の素晴らしさが目立てば目立つほど、その下にいる人たちは何をしているのだろうという疑問が湧いてきます。

上司が全ての荷物を持って、先頭に立ってどんどん山を登っていってしまうので、部下たちは手持ち無沙汰な感じでゾロゾロとその後を手ぶらでついていきます。

どこを目指すのか、そのために何をすればいいのか、全て上司が決めてくれますし、何ならやってくれます。

こういう環境の中で、いつまでも部下が育たないとボヤくのもこういう上長の特徴です。

もう亡くなられて何年も経ちますが、かつての私の上司は、人を育てるのが上手い人でした。

酔った時には、「オレの部下だった奴らは、皆出世している」と言うのが口癖の憎めない人でした。

故人を悪く言うつもりはありませんが、決してすべての言動が尊敬できる人ではありませんでした。

理不尽なことも沢山言われましたし、サボってサウナに行っているところを更に上の役職者に見つかったり、部下に諫言されるとムキになって怒ったりと格好悪いことも結構されていました。

それでも、今でも感謝しているのは、大きく目指すところだけを示してくれて、細かいところは全て任せてくれるという経験を若い頃からさせてもらえたということです。

当時、私は訪問看護部門の事務方として仕事をしていたのですが、昔も今も大変なのが看護師さんをいかにして採用するかということ。

ここはやはり抜本的に給与体系を魅力的なものに変えないと反応は良くならないのではないかということで、ある日突然「新たな給与体系を作れ」と指示されました。

セクショナリズムというものは、本来組織にとってはマイナスな要素でしかないのですが、指示をされて最初に思ってしまったのは、「それは人事の仕事なのでは?」という疑問。

こちらはあくまでも一部門の担当者です。

ところが、有無を言わさず「お前がやれ」ということでしたので、色々調べてゼロベースから創り上げていきました。

出来上がったものを見せると、そこからは人事と交渉してくださり、晴れて新たな給与体系として制度に組み込まれ、表に出せるようになりました。

大きな指示や指令を与えられ、その目標を達成するための具体的な細かい部分については特に口を挟まれることなく、全てやりたいように決めさせてもらいました。

自身の能力が高くて部下が育っていない上長というのは、自分だったらこうするという確立されたものがありますから一から十まで細かく指示を出してしまう傾向があるのだと思います。

それにより、自分で思考するのを止めて、ただひたすら指示を待つ「言われたことはするけれども、自分で考えて行動はできない」部下ばかりとなります。

ただ、部下に丸投げという姿勢は、人によって合う合わないはあると思います。

私には、この上司のある意味乱暴なやり方がフィットしましたし、「任せてもらえている」という実感の中で楽しく前向きに仕事に向き合うことが出来ましたが、同じやり方をされて困っている人もいたことは事実です。

同じ部署に配属になったどちらかというとネガティブ思考の新卒一年目のスタッフが、同じような乱暴な指示を受けて、何をどうすればいいのかも分からずに、会議室でひとり自分の手帳を見ながら長い時間呆然としていた姿を今でも覚えています。

指示を出す側は、丸投げをする前にある程度指示を出す相手の経験値を見定めつつ、少しずつ任せる量を増やしてみる。

本来上長が持つ荷物は、その上長の機能と役割を果たすために必要な荷物のみであるべきで、それ以外の荷物は、部下たちの力できちんと持てるように任せていくのが優秀な上長の在り方なのだと思っています。

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