徳永純二

コラム、エッセイ、小説、そして自由律俳句などを、過去、現在、未来、そして思いつくまま、…

徳永純二

コラム、エッセイ、小説、そして自由律俳句などを、過去、現在、未来、そして思いつくまま、気の向くままに、行方定めぬ、言葉の旅を続けています。

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記事一覧

自由律俳句-6 バースデイ

 7月30日。いやあ、今日も暑い。暑い。  83歳になりました。  自分の生まれた日を知っている。生物界で人間だけですよね。  届け出た日が、誕生した日とちがう、…

徳永純二
3週間前
7

コラム 独り善がりの出版録

 おそれおおいことでございますが、現在7冊目の本を出版すべく、作業中です。なになに書き下ろしたものではなく、長年地元新聞のコラムに書いた文章をまとめたものです。…

徳永純二
1か月前
13

俳句でドラマ 4

今回ぼくのドラマづくり細胞を刺激してくださったのは次の自由律句です。 なんというやけくそな雲だろう  磯﨑峰水  ぼくは、空や雲を見上げるのが大好きなのですが、…

徳永純二
1か月前
16

コラム 悪の発想

 6月1日の朝日新聞の記事です。 「詐欺救済求め『だまされた』」「ロマンス詐欺」相談で非弁提携(弁護士法違反)の疑い」「1800人超から約9億円」  これが見出し…

徳永純二
2か月前
7

小説 淫らな闇

     1 「ヘルパーさん、帰ったよ。シーちゃん」  そう言いながら、階下から上がって来たタツオは、甚平とパンツをつつっと脱ぎ、無造作にベッドの足許に投げやった…

徳永純二
2か月前
4

小説 「カポック」

 ぼくとチチが、いま借りて住んでいる家には塀がない。どの温泉町でもそうなのだろうか、この別府では土地に余裕がある家が少ない。特に、細い路地に向かい合って建物が密…

徳永純二
3か月前
13

コラム 余命

 えっ! 余命? このままだと1年か2年だって?  これって、だれに言ってるの? えっ! オレ? このオレ?   お医者様の顔をうかがう。その視線は、たしかにぼく…

徳永純二
3か月前
7

コラム キャンプの思い出

 高校教師になって4年目の夏休みのことです。  その夏、学校ではキャンプが流行っていて、生徒たちの強い希望で、ぼくたち5,6人の若手教師が、クラスや部活動のキャ…

徳永純二
4か月前
5

自由律俳句ー6

それぞれに春の陽にくるまれて羅漢さま 老梅のくびれくびれよ 命の管よ 神様 もう盗まないで 残り少ない寿命ですから 言の葉に生きた証の濃淡あり 「ご破算に願いま…

徳永純二
4か月前
4

コラム 元気だったあの人が

 知人が大病で入院した、という。  その知人を共通して知っている人たちが、知人のことを話している。ともに、70代後半である。 「若い頃、スポーツ万能だった、あの人…

徳永純二
5か月前
6

俳句でドラマ 3

今回の「俳句でドラマ」は、次の自由律俳句が題材です。 干涸びたみみずのさいごの抵抗  瀬崎峰永 「だから言ったじゃないか」  徳永純二  ぼくが今いる場所は、あ…

徳永純二
5か月前
7

自由律俳句ー5

   死 相 ぼくの死相はまだ涅槃を知らないらしい 宇宙太陽系地球日本大字臼杵字死相 死相を変換 そこは永遠だった あの雲を千切って死相を作りたい 死相は「ぼく…

徳永純二
5か月前
5

コラム どうしようもない人たち  

 本当のことは言わないは、昔も今も  村上春樹さんはエッセイを書くに当たって、時事的な話題には触れないことを原則にしているとか。ぼくもそう考えておるのですが、最…

徳永純二
5か月前
4

コラム 匂い騒動事件

 今、匂いに悩んでいます。  世の中、特にコロナ禍で、匂いがわからなくなった、と悩んでいる方が大勢いるらしい。ところが、ぼくは匂いに敏感すぎて困っています。  特…

徳永純二
5か月前
7

俳句でドラマ 2

 今回で2回目の「俳句でドラマ」。  1回目でご説明いたしましたが、この「ドラマ」の趣旨はお分かりいただけましたでしょうか。まだまだですよね。なんたって、2回目…

徳永純二
6か月前
5

自由律俳句ー4

あの日も月を見ていた 少年のぼくと決別した日 端役にもなりきれず でもそれらしいふうをして 最後までつつましく善人のままで ひょいと出てきた陽水を一日中口ずさん…

徳永純二
6か月前
9
自由律俳句-6 バースデイ

自由律俳句-6 バースデイ

 7月30日。いやあ、今日も暑い。暑い。
 83歳になりました。
 自分の生まれた日を知っている。生物界で人間だけですよね。
 届け出た日が、誕生した日とちがう、なんてのは、昔はよくあったこと。だからって、どうってことないのだけど、気にする人がいますね。親が役所に行くのを、忙しくて忘れてた、なんてことを後で聞くと、自分がおろそかに扱われたとでも思うのか。その日が厄日だったので、大安に生まれたことに

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コラム 独り善がりの出版録

コラム 独り善がりの出版録

 おそれおおいことでございますが、現在7冊目の本を出版すべく、作業中です。なになに書き下ろしたものではなく、長年地元新聞のコラムに書いた文章をまとめたものです。

 1冊目から3冊目はエッセー集でした。こちらは書き下ろしたものです。いずれも退職後の、自分の身辺の、現在、過去、未来のよしなし事を綴ったものであります。
 4,5冊目は、自由律句集。自作の自由律俳句に、つぶやきほどの小文をつけ、読み物風

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俳句でドラマ 4

俳句でドラマ 4

今回ぼくのドラマづくり細胞を刺激してくださったのは次の自由律句です。

なんというやけくそな雲だろう  磯﨑峰水
 ぼくは、空や雲を見上げるのが大好きなのですが、磯﨑さんのこの句は、雲が「やけくそ」になっている、という表現が面白くて、ドラマが浮かんできました。    

世界雲会議  徳永純二

「そろそろ会議を始めたいのだが、みんな集まってるかい。すじ雲さん、上層の雲さんたちはどうだい」
「ええ

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コラム 悪の発想

コラム 悪の発想

 6月1日の朝日新聞の記事です。
「詐欺救済求め『だまされた』」「ロマンス詐欺」相談で非弁提携(弁護士法違反)の疑い」「1800人超から約9億円」
 これが見出しです。「何のことやら」とチラッと目をやっただけでしたが、読み進めると、「えーっ!」「何と!」「ここまできたか!」と、思わずうなってしまいました。
 記事の内容をかいつまんで。
 今、話題の、「ロマンス詐欺」は、ご存知ですよね。SNSなどを

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小説 淫らな闇

小説 淫らな闇

     1
「ヘルパーさん、帰ったよ。シーちゃん」
 そう言いながら、階下から上がって来たタツオは、甚平とパンツをつつっと脱ぎ、無造作にベッドの足許に投げやった。そして、タオルケットをめくり、引き締まった体をシズカの脇に滑らせた。
「またまた、素っ裸になって。あとで、モリナガさんが来るんでしょう。恥ずかしいったらありゃしないわ」
「何をいまさら。それに、モリナガとは雇い手と雇い人というより、兄弟

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小説 「カポック」

小説 「カポック」

 ぼくとチチが、いま借りて住んでいる家には塀がない。どの温泉町でもそうなのだろうか、この別府では土地に余裕がある家が少ない。特に、細い路地に向かい合って建物が密集しているこのあたりでは、どこも狭い敷地いっぱいに建てられている。
 小さいながらも造りのいい2階建て木造家屋なのだが、建物がそのまま外に向かって剥き出しな感じがするのは、ぼくにはとても気恥ずかしい。生活の場が、そのまま外の世界に続いている

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コラム 余命

コラム 余命

 えっ! 余命? このままだと1年か2年だって?
 これって、だれに言ってるの? えっ! オレ? このオレ? 
 お医者様の顔をうかがう。その視線は、たしかにぼくに向けられている。
 ぼくが「余命」と言われても、医学のうえでは、ごくごく当然のことなのです。
 経緯は、こうです。
 元にあるのは、動脈硬化です。それに、忙しさと心づかいによる疲労が加わって、心身ともに飽和状態となり、心筋梗塞を発症した

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コラム キャンプの思い出

コラム キャンプの思い出

 高校教師になって4年目の夏休みのことです。
 その夏、学校ではキャンプが流行っていて、生徒たちの強い希望で、ぼくたち5,6人の若手教師が、クラスや部活動のキャンプを一手に引き受ける羽目になって。
 ある教師が発案したのは、それぞれが違う場所でキャンプするのは、計画も実施も面倒だ、同じ場所へ行こう、しかも、公共の施設を借りることができれば省力化できるぞ、ということで、「なるほど、なるほど」と全員で

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自由律俳句ー6

自由律俳句ー6

それぞれに春の陽にくるまれて羅漢さま

老梅のくびれくびれよ 命の管よ

神様 もう盗まないで 残り少ない寿命ですから

言の葉に生きた証の濃淡あり

「ご破算に願いましては」とならないままに

枯れるまで反抗したかどくだみ茶

ぼくの道はひらがなばかり

お変わりないですか あの約束は忘れません

達磨さんが転んだ ダークマターはどこじゃ

コラム 元気だったあの人が

コラム 元気だったあの人が

 知人が大病で入院した、という。
 その知人を共通して知っている人たちが、知人のことを話している。ともに、70代後半である。
「若い頃、スポーツ万能だった、あの人がねえ」
「5年ほど前に会ったとき、スポーツジムにも通っている、1日1万歩のウオーキングを欠かさない、と言っていたがねえ」
 この会話をする二人は、今もほどほどに元気な人たちだ。普通の生活が、過去からこれまで、普通に継続している人たちだ。

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俳句でドラマ 3

俳句でドラマ 3

今回の「俳句でドラマ」は、次の自由律俳句が題材です。

干涸びたみみずのさいごの抵抗  瀬崎峰永

「だから言ったじゃないか」  徳永純二

 ぼくが今いる場所は、ある農家の庭の端っこの、土の上に直接置かれた植木鉢です。
 植木鉢には結構大ぶりのカネノナルキが植わっていて、ぼくはその鉢の底に住んでいます。
 ぼくは普段は無口で、話し下手なんです。でも、昨日とても悲しい出来事があって、誰かに聞いても

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自由律俳句ー5

自由律俳句ー5

   死 相

ぼくの死相はまだ涅槃を知らないらしい

宇宙太陽系地球日本大字臼杵字死相

死相を変換 そこは永遠だった

あの雲を千切って死相を作りたい

死相は「ぼく」と「生きる」の繋ぎ目か

ぎょっとしたのは鏡の中の死相の方だった

「なんだか腹が減ったなあ」と死相が言ってるよ

そーゆーのってぼくの死相らしくなーい

ぼくの細胞のどこかに死相が寄生している

死相を保存パックに入れ拾得物と

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コラム どうしようもない人たち   

コラム どうしようもない人たち  

 本当のことは言わないは、昔も今も

 村上春樹さんはエッセイを書くに当たって、時事的な話題には触れないことを原則にしているとか。ぼくもそう考えておるのですが、最近、ええっ、ということがあまりにも続くので、ついつい。 
 ここのところの政局は、自由民主党の、政治資金パーティーの、キックバック不記載の問題が中心です。
 マスコミ報道や政治倫理審査会の答弁などを聞いていると、かねてから行われてきたもの

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コラム 匂い騒動事件

コラム 匂い騒動事件

 今、匂いに悩んでいます。
 世の中、特にコロナ禍で、匂いがわからなくなった、と悩んでいる方が大勢いるらしい。ところが、ぼくは匂いに敏感すぎて困っています。
 特に、魚。食べる間は問題ないのです。おいしいのです。ところが、食後数分もすると、口中に魚臭が取り憑き、ぼくを悩ませるのです。
 魚のほかに、焼肉、ふろふき大根、調理の油煙の残り香も。それに、デパートの化粧品売り場や、すれちがった女性の濃い香

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俳句でドラマ 2

俳句でドラマ 2

 今回で2回目の「俳句でドラマ」。
 1回目でご説明いたしましたが、この「ドラマ」の趣旨はお分かりいただけましたでしょうか。まだまだですよね。なんたって、2回目ですからねえ。
 で、簡単に、もう一度。
 ぼくは、人様の俳句を読んでいると、やたらと、ぼくの頭の中にドラマが浮かんでくる作品があるんです。それを、さっとすくい上げて、短い文に仕立てる。これが、結構、快感なのです。寄席の大喜利で、お題をいた

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自由律俳句ー4

自由律俳句ー4

あの日も月を見ていた 少年のぼくと決別した日

端役にもなりきれず でもそれらしいふうをして

最後までつつましく善人のままで

ひょいと出てきた陽水を一日中口ずさんでいる

飲んで来し方 酔って行く末

大阪の串揚げ屋の夫婦は同郷の人だったよ

背中が寒い だから言っておきたいことがある