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コラム 悪の発想

 6月1日の朝日新聞の記事です。
「詐欺救済求め『だまされた』」「ロマンス詐欺」相談で非弁提携(弁護士法違反)の疑い」「1800人超から約9億円」
 これが見出しです。「何のことやら」とチラッと目をやっただけでしたが、読み進めると、「えーっ!」「何と!」「ここまできたか!」と、思わずうなってしまいました。
 記事の内容をかいつまんで。
 今、話題の、「ロマンス詐欺」は、ご存知ですよね。SNSなどを通じ、恋愛感情を利用して金をだまし取る、という犯罪です。
 警察庁によると、「ロマンス詐欺」は昨年(令和5年)1575件、被害額177億円だそうです。これに、最近話題の著名人を語るなどの「SNS型投資詐欺」をあわせると、3846件、455億円。すごい額です。
 でも、これに驚いてはいけません。
 今年(令和6年)の1~3月までの、ロマンス詐欺は603件、60億円で、昨年の1~3月に比べると約2倍だそうです。SNS型投資詐欺をあわせると昨年同期比、件数で6倍、被害額で7.5倍だそうです。
 すごい、増え方です。でも、これって、警察に被害を届けた被害者の数字ですよね。泣き寝入りの人、つまり潜在被害者もずいぶんいるでしょうね。
 で、記事に戻ります。
 この、ロマンス詐欺の被害者を、さらにだまそうとする人たちの話です。
「私たちは国際詐欺対応弁護士事務所です」「返金実績と経験に基づいた自信あります!」などという誘い言葉で、詐欺被害者の救済を手助けするウェブサイトが開かれていたそうです。そこには、Kという弁護士の笑顔が添えられていました。Kは、ホンモノの弁護士です。
 で、何とか損害を取り戻したい被害者のAさんが、K弁護士事務所に連絡すると、その日のうちに電話がかかってきたといいます。電話口の男性と、あれこれのやりとりがあって、Aさんは着手金130万円を振り込みます。
その後、何度かやりとりがあったそうですが、結局、この着手金は返ってこないままでした。
 で、結論からいうと、返信の電話はK事務所からではなかったのです。
 詐欺被害者の心理を利用し、さらにだましとろうという組織だったのです。首謀者は広告会社の役員など4人。電話口でAさんに対応した男性は「オペレーター」というだまし組織の事務員だったというわけです。
 K弁護士は、その団体と業務委託契約を結び、1800人超から約9億円の着手金を受け取り、その8割程度を組織に支払っていたそうです。
 大阪地検特捜部は、K弁護士と組織の首謀者4人を逮捕しました。

 詐欺に遭った人から、さらに詐欺で奪い取る。
 なんとも、やりきれない事件です。ぼくたち人間には、そんなにも悪の心が潜んでいるのか。ぼくには、思いつかない発想です。悪の天分ある者は、なめ尽くすように世間を見渡し、金儲けの匂いを嗅ぎ出しているのです。そして、そのためには、どういう手段がいいのか。多分、あれもこれもと思いつくのでしょうが、それを組み合わせ、修正しながら、「ホント」らしく作り上げ、人をだまし、金を得る。
 いろいろと考えさせる、こわい事件です。
 
 


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