マガジンのカバー画像

つらつらと語るフィクション

41
頭の中で出来上がったフィクションを形にしていきます。 明るみの布団の中、電車の座席でどうぞレベルの小説です。
運営しているクリエイター

#恋愛小説

あの色の空は綺麗だった【9】

あの色の空は綺麗だった【9】

あの発言のあと、あそこにいた全員が工場に連れていかれた。
ただ、ひたすらに工場で細かいパーツを組み立てる仕事をさせられている。

大人も子供も関係ない。
ちゃんと仕事をしなかったら大人に叩かれる日々だ。

働き始めて1ヶ月経ったが、先も何も見えない。

数ヶ月前まで学校に行き、遊んで帰る日々だったのに。
今はよく知らない大人に叩かれて、
必死によくわからないものを作られている。

この期間で、ケリ

もっとみる
プレーン味 part12

プレーン味 part12

Day35

「行ってきます」

ようやくこの道にも慣れた。

ゴミゴミしていた満員電車とはお別れして、
今は自転車通勤だ。

仕事場は相変わらず無音でパソコンを打ち込む場所だが、
同僚は恵まれているみたいだ。

可愛い子もいて、眼福だ。

新しい職場に来てから他の社員に
ランチに誘われることが圧倒的に多い。

ゆえに昼のお弁当は休憩中だ。

仕事を終えてまだティッ

もっとみる
プレーン味 Part11

プレーン味 Part11

Day17

「スタート!」

次の日から空き時間を使った荷造りが始まった。
汗と彼女の機嫌との勝負だ。

引越しというのは、やけにめんどくさい。

僕はギリギリにバタバタするのは嫌なので、
かなり早い段階で進めておく。

彼女も同じ性格だが、家でバタバタするのが苦手なタイプだ。
”家はくつろぐ場所”らしい。

こんなの業者に任せたいという人間だが、今回はなんとか説得した。
近くのケーキ屋さんの期

もっとみる
プレーン味 Part10

プレーン味 Part10

Day16

メンタルがしっかりと消耗したあの日から
1週間が経過していた。

今日は2人で彼の地の引越し先の内見に行く。

お互いの論争の結果、引越し先に上がった条件は
「キッチンは大きめ」
「お風呂もできれば広め」
「それぞれの部屋は確保すること」
の3つだ。

2人で集めてきた経験と英知を出し合った結果、
この環境がお互いストレスなく過ごすことができると確信した。

ここ数週間かなり緊張した

もっとみる
プレーン味 Part9

プレーン味 Part9

憂鬱だ。もう仕事なんてやめてしまいたい。
昨日の夜、彼女の顔見ると心臓がぞうきんのように絞られる。

思った通りの顔だった。いや、思った以上の顔だった。
あまり感情を出さない彼女の顔が一気に不安全開になった。

「ちょっと考えさせて」の一言だった。
食卓も珍しく冷め切っていた。

そもそも「異動」って自分で選択できないのか。
というか優秀なら選択権を得られないのだろうか。

会社では周りにたくさん

もっとみる
プレーン味 Day8

プレーン味 Day8

Day8

今日も魔術師のようにみんな指を動かしている。
満員電車は魔物のように僕の生命力を奪っていく。

朝の時間で旅行の予約をした。

指先で一つで何でもできる世の中ってちょっと退屈だ。
もう少し苦労したい。

パソコンをカタカタ。ピアノを演奏するかの如く
鼻高に音を鳴らしていく。

会社の中は静かなのでカタカタというありきたりな音だけが存在する。

今日の昼ごはんはオムライスだ。

彼女のオ

もっとみる
プレーン味 Day7

プレーン味 Day7

Day7

柄にもなくテンションが上がった次の日。

同居人は友達と遊びに行くらしいので、
掃除をしながらお留守番だ。

家でゆっくりと洋画を観た。
ちょっと前話題になったラブストーリーだ。

観たかったわけではないけど、
なんとなく目に止まったので借りてみた。

だいたいストーリーは読んでいた通りだ。

男と女が出会って良い感じになって、間男が現れて
最初の男に戻ってきて「はい、ハッピーエンド。

もっとみる
プレーン味 Day6

プレーン味 Day6

Day6

今日は朝からサンドイッチを頬張る。
同居人とお気に入りのカフェでゆっくりと過ごしていた。

もう少し寝ていたかったなんて言うと、
不機嫌になるので黙って付いてきた。

他人に合わせた生活を送っていると、
自分の意見を押し込めがちになる。

それにストレスを感じない自分はかなりの重症だ。
だからこそこの関係が続いていることもある。

隣の席のカップルは
タピオカを求めているらしい。彼女だ

もっとみる
プレーン味 Day5

プレーン味 Day5

Day5

「シリコンバレーに行きたい。」
行きの電車でそんなことを考えていた。

何がきっかけだったかは忘れてしまったが、
後にも先にもこんなことを考えるのは最後だろう。

今日は”華金”と呼ばれる定期イベントで社内も活気付いてる。
同期に誘われたので、今日は焼き鳥で決まりになった。

華金という魔法のせいなのか1日にがとても早く感じてしまった。
時間がモッタイナイ。何をしていたんだろう。

もっとみる
プレーン味 Day4

プレーン味 Day4

Day4

珍しく朝に満足していた。
毎朝の機械音で起こされなくて良いなんて。

オフィスを往復する人にとっては朝の余分な睡眠が
最高の幸せだ。

隣の同居人はすでに出かけていたようだが、
どのタイミングで出て行ったのかは定かではない。

布団から半身だけを出してスマートフォンで
今日の待ち合わせ時間を確認する

昼前に起きた自分にあまり時間が残されていないことを
確認して、ゆっくり準備を始めた。

もっとみる
プレーン味 Day3

プレーン味 Day3

朝の日差しがいつもよりもうっとおしかった。

昨日の夜にタイトルをつけるなら
「愚痴と晩酌」だ。

同居人の仕事の愚痴と手料理をツマミに
良い感じにお酒が進んだ。

素晴らしい手料理を生み出している同居人が、
必死に愚痴を吐き出していることに無情さも感じた夜だった。

いつもよりも酒が進んだ夜は身体が重たい。
今日も何も考えずに電車に乗る。

相変わらずスマートフォンと指で前戯している人ばかりだ。

もっとみる
プレーン味 Day2

プレーン味 Day2

Day2

あまり聞こえもしない目覚ましで起きた。
昨日は微熱で休んだけど今日は行かなくては。

重たい体で脇に体温計を入れる。
「37.3なら行けるか」通勤の準備をする。

体調の悪さを加速させるような満員電車に揺られて、
今日もいつもループワールドに向かう。

「おはようございます」の声をあげて
返ってくる「おはようございます」もいつも通りだ。
不気味なくらい揃っている。

同期から体調を心配

もっとみる
プレーン味 Day1

プレーン味 Day1

Day1

「薬そこに置いておくね。温かくして寝てるんだよ。」
うやむやだけど聞こえた声がなんとなく好きだった。

脇から出てきた数字には38.7の文字が刻まれていた。
気だるさに耐えきれずもう一度布団にこもった。

きっと寝たら治る。盲信でしかないが、
今までの経験上これが正解な気がした。

起きて同居人が作ってくれたチャーハンを食べる。
いつもとなんら変わりがない味だが好きだった。

思考停止

もっとみる