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プレーン味 Part10

Day16

メンタルがしっかりと消耗したあの日から
1週間が経過していた。

今日は2人で彼の地の引越し先の内見に行く。

お互いの論争の結果、引越し先に上がった条件は
「キッチンは大きめ」
「お風呂もできれば広め」
「それぞれの部屋は確保すること」
の3つだ。

2人で集めてきた経験と英知を出し合った結果、
この環境がお互いストレスなく過ごすことができると確信した。


ここ数週間かなり緊張した毎日を過ごした。


”同居人が同居人のまま”でいてくれるということが決まり、
久しぶりに自分にムチを打った。

新居候補はいくつかあったが、2LDKの部屋に決まった。
ここが新しい僕らの家になる。

条件は全て満たしており、
同居人は鼻歌を歌うくらいには満足気だ。


帰りに巷で噂のイタリアンのお店に行ってみた。
”僕はバジルで彼女はカルボナーラ”。

ただ、ちょっとだけ味がしつこかった気もする。
「星3つです!」とは言いにくい。


同居人が「星をゆっくりみたい」と言い始めた。
こんなネオン街では星なんてなかなか見れない。

ただ今住んでいるマンションは屋上まで登ることができる。
小さい頃はいたずら心で登ったが、
今は確信的な罪悪感を抱えて登っている。


彼女が「天体観測」をかける。
外の風が少し寒い。長くはいられなさそうだ。

「ここともお別れだね」
「そうだね」

寂しさが舞い込んでくる夜でもあった。

「こういうの慣れないな」
「何が?」
「大きな動きがあるって分かってるのに、どうしても慣れない」
「慣れられたら困るよ。日常とは別物だもん。けど、あなたとの日常をもう少し楽しみたい」


肩の荷が降りたような気がした。
彼女は時に魔法を使える。

そうだ。同居人との日常を嚙みしめよう。

きっと大きくなくていい。
大富豪にも権力者にも描けない日常がここにはある。

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