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プレーン味 Day8

Day8

今日も魔術師のようにみんな指を動かしている。
満員電車は魔物のように僕の生命力を奪っていく。

朝の時間で旅行の予約をした。

指先で一つで何でもできる世の中ってちょっと退屈だ。
もう少し苦労したい。


パソコンをカタカタ。ピアノを演奏するかの如く
鼻高に音を鳴らしていく。

会社の中は静かなのでカタカタというありきたりな音だけが存在する。


今日の昼ごはんはオムライスだ。

彼女のオムライスはケチャップが多めだ。
僕のリクエストを覚えていてくれたらしい。

今日も昼ごはんの時間は幸せだ。

そんな最中、上司に肩を叩かれた。
正直、この注意の引き方は好きではない。
声をかけてくれれば不機嫌ながらに振り向くのに。

「あとで話あるから来て」

思い当たる節がない。

ということは極端に悪いことか、
極端に良いことだと思っている。


昼ごはんの時間が終わり、小会議室Bに向かう。
通称”魔の個室”だ。大抵の女の子が泣きながら帰ってくるところ。

緊張しながら座った。



細かな話は覚えていないが「ショウカク」と「イドウ」
という言葉だけは覚えている。

認められたことは嬉しいが、
認められるようなことはしていない。

こんな簡単なゲームをしていた訳でもないと感じてしまった。


帰路の中で、同居人とどうなるかを考えていた。
不安で仕方がない。あの子にとっての”家”が遠くに行くことになる。

まさに転居だ。

お腹が痛い状態で帰宅した。
いつもと変わらない「おかえり」も脅しのように感じた。

「ちょっと座って」
「珍しい。なんかあったの」
「別の地区の支社に異動することになった」

彼女の顔色の曇り具合で選択肢がいくつも出てきたことは理解した。
「何を考えている?」

彼女の口から出るであろう音をできればミュートしたかった。




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