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読書感想文

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#文豪

読書感想 芥川龍之介 歯車③

読書感想 芥川龍之介 歯車③

 歯車の感想の続きです。
 前回書いた通り、歯車はゾッとするエピソードばかりです。静かに、自然に、当たり前のことのように、怪奇現象が書かれています。その冷静さが一層恐怖感を引き立てている印象です。

 この作品は私小説というのでしょうか、やっぱりストーリーらしいストーリーもないのですね。相当な苦しみのなか書かれたものだと思います。そんな中でも、他人を貶めたり、侮蔑するようなことはほとんど書かれてい

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読書感想 芥川龍之介 歯車②

読書感想 芥川龍之介 歯車②

この作品は、事実と創作と芥川龍之介の幻覚(のようなもの)が混在している印象を受けます。全部創作だったならば、本当に素晴らしい作品だと思います。逆に全部芥川龍之介の中の真実だったとするならば……。
考えさせられますね。

 私が気になるのは、作品の中に出てくる様々な不気味なエピソードです。

芥川龍之介の姉の夫は、自宅の放火の容疑をかけられ執行猶予中のまま轢死(列車にひかれて自殺)しています。自宅に

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読書感想 芥川龍之介 歯車①

読書感想 芥川龍之介 歯車①

私が芥川龍之介にハマるきっかけとなった作品です。

この作品の半分は遺稿です。遺稿とは、故人が残した未発表の原稿です。
この作品がいまだご健在の作家さんのフィクションホラー小説だったならば、面白い!!と無責任に言えると思うのです。

ですが、こちらはおそらく芥川龍之介が自死する直前の精神的苦悩をそのまま書いたものなんじゃないかなと思います。そう考えて読むと、ただでさえゾクゾクする内容がより一層身近

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読書感想 芥川龍之介 点鬼簿

芥川龍之介晩期の自叙伝的小説です。
晩年、相当神経を病んでいるなか書かれたようですね。

 「点鬼簿」とは、死者の姓名を書き記した帳面のことをいうようです。
この作品には、芥川龍之介の実母、実父、姉のことが記されています。

断片的な記憶とその時に感じたことがありのまま書かれている印象です。
子供の頃の記憶で、前後のことは全然覚えていないのに、何故かその場面だけ妙にはっきり覚えていることってありま

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読書感想 菊池寛 恩讐の彼方に

読書感想 菊池寛 恩讐の彼方に

菊池寛の代表作ですね。

仕えていた主人の妾と密通していた主人公が、主人ともめた末に斬り殺してしまいます。
主人公は妾とともに逃亡し、生活のため、悪事を働くようになります。
二人は昼間は峠の茶屋を営むかたわら、旅人を殺して金品を奪って生活します。

主人公はある日、若い夫婦を殺したことをきっかけに、女(主人の妾)との荒んだ生活に激しい嫌悪感を抱きます。

主人公は女のもとから逃げ出し、
出家し、罪

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読書感想 谷崎潤一郎 蓼食う虫

読書感想 谷崎潤一郎 蓼食う虫

谷崎潤一郎の作品のなかで一番すきかもしれないです。
流れるように美しい文章です。
瞳に映るもの、心で感じたことをこんな風に流麗な文章で的確に表現されたら、そりぁーあ平伏するしかないですよ。
「あっぱれです!!」と。(?)

 
さて、こちらの作品ですが、
夜の営みがなくなった夫婦のお話です。
夫が妻に女性としての魅力を感じなくなってしまいます。
やがて夫は妻が他の男性のところに通う事を黙認するよう

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読書感想 芥川龍之介 庭

読書感想 芥川龍之介 庭

またしても芥川龍之介です。
いかんせん大好きなものでつい……。

こちらの作品、なんと言いますか……寂しさ漂うお話なのですが、寂しいだけのお話ではないんですね。
ストーリーとしては、なんでもない話なんです。それなのにとても胸を打つ「何か」があります。(それは芥川龍之介の作品の多くに言えることだと思うのですが)

その「何か」は一体なんなのだろう?

鋭く的確な心理描写、心情描写なのでしょうか……。

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読書感想 芥川龍之介 袈裟と盛遠

読書感想 芥川龍之介 袈裟と盛遠

こちらは、平家物語の異本のひとつである源平盛衰記を芥川龍之介がアレンジしたものらしいです。ちなみに私は古典文学は全く不案内です。全っ然わかりません!!
(堂々と書くな!笑)
間違ってたらごめんなさい!

もう少し、古典文学の知識があれば、文豪の作品をより深く理解出来るのだろうな、と思います。また違った角度からも考察できますしね。
機会があれば改めて勉強したいですね。

さて、こちらの「袈裟と盛遠」

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読書感想 芥川龍之介 六の宮の姫君

読書感想 芥川龍之介 六の宮の姫君

こちらは、今昔物語を題材としたお話のようです。

六の宮の姫君の、「悲しみも知らないと同時に、喜びも知らない生涯」が淡々と描かれています。

両親に寵愛され、何不自由なく育った美しい姫君。
両親の死後、家計が苦しくなり体を売るような思いで夫(正式な夫じゃないのかな?)を持つことになります。

しかしその夫も仕事で姫君のもとを離れることになります。五年経ったら戻ってくると言い残し…。

しかし六年経

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読書感想 芥川龍之介 奇怪な再開

この作品、好きなんですよね…。
ミステリーっぽい不気味な伏線が織り込まれていて、なおかつ主人公の寂しく冷たい感情がしっかりと描かれているというか。

舞台は日清戦争後の東京のようです。
軍人に妾宅で囲われている妾のお話です。
(ようは愛人さんです。)
もとは中国の妓館で客をとっていた女性なのですが、軍人に気に入られたことで祖国を捨てて日本で暮らすことになります。

この女性は、祖国に好いた男性がい

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読書感想 谷崎潤一郎 卍

読書感想 谷崎潤一郎 卍

この作品もなかなか壮絶です。 
ある程度大人になってから読むことをおすすめします!

夫婦の愛の形とはなんなのか、
っていうかそもそも愛ってなんだっけ??
と深く考えさせられる作品です。

この作品は、園子という未亡人が自身の体験を大阪弁で語る告白形式で物語が進みます。

結末としては、
園子は、夫と友人の光子と三人で心中をはかったのです。(ネタバレですみません…)

が、園子だけ助かり、夫と光子

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読書感想 江戸川乱歩 孤島の鬼

読書感想 江戸川乱歩 孤島の鬼

江戸川乱歩といったら、「明智小五郎と怪人二十面相シリーズ」「少年探偵団シリーズ」
ですよね。

しかし!
私は江戸川乱歩が好きなのですが、
実はそれらはほとんど読んだことがありません……

というのも、少年探偵団などのシリーズは子供向けに書かれた作品でして、私にはすこし物足りなく感じてしまうのです……

逆に、そのシリーズ以外は見事に変態小説ばかりなんです。

その変態っぷりが私にはたまらないので

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読書感想 谷崎潤一郎 痴人の愛

読書感想 谷崎潤一郎 痴人の愛

文豪谷崎潤一郎……大好きです。文章が美しすぎます。感服です。

ノーベル文学賞をとって欲しかったです…。
50年以上前の話だけど……

谷崎潤一郎はどうして教科書に載らないのか……そうすればもっと評価されるのに……

まあそれは、教科書に載せられるような子供向けの作品がひとっつもないからなんでしょうね。笑

いやもう、この作品ね、
書かれたのは昭和の初期だと思うのですが、令和の今読んでも
「うっわ

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読書感想 首が落ちた話 芥川龍之介

読書感想 首が落ちた話 芥川龍之介

タイトル通り首が落ちたお話です。
芥川龍之介の晩期の短編小説です。 

この作品、私は青空文庫で読んでとても感銘を受けたのですが、知ってる人ってあんまりいないですよね…?

私は芥川龍之介が大好きなのですが、
代表作のほかにも、隠れた名作がたくさんあります。

なんでこれが有名じゃないのー!?
と不思議に思ったりする作品もあります。

「首が落ちた話」は、そんな作品のひとつです。

日清戦争を背景

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