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読書感想 芥川龍之介 歯車②

この作品は、事実と創作と芥川龍之介の幻覚(のようなもの)が混在している印象を受けます。全部創作だったならば、本当に素晴らしい作品だと思います。逆に全部芥川龍之介の中の真実だったとするならば……。
考えさせられますね。

 私が気になるのは、作品の中に出てくる様々な不気味なエピソードです。

芥川龍之介の姉の夫は、自宅の放火の容疑をかけられ執行猶予中のまま轢死(列車にひかれて自殺)しています。自宅に相場の二倍の火災保険をかけていました。 
芥川龍之介は義兄が自殺する以前、東京へ帰るたびに火事を目撃していて、「今年はうちが火事になるかもしれない」という予感がありました。実際に燃えたのは芥川龍之介の家ではなくて姉の家だったのですが。
……地味に怖いですよね。

私も数年前、運転していて毎日のように交通事故を目撃した時がありました。(田舎なので車通勤なのです)
その時はさすがに「ひょっとして次は自分なのでは……」と思いました。で、やっぱり車をぶつけられたのですが、ほんっとーにかすっただけの軽い事故で、自分も相手も全く怪我はなく、車もさほど修理費用はかかりませんでした。私は日頃の行いがいいから、きっと守護霊様が危険を教えてくれたんだ……!と思いましたよ。はは。


義理兄の自殺後、芥川龍之介は姉と今後の生活について相談します。その際、タイプライターや兄の肖像画も売ってしまおうという話になります。芥川龍之介は、兄の肖像画は、口髭あたりが妙にぼんやりと描かれていることに気がつきます。それは錯覚ではなく、姉も同じように感じていました。義兄は轢死したため顔も肉塊となり、わずかに口髭だけが残っていたということでした。
これも地味に怖いです。

芥川龍之介は薬をもらうためにかかりつけの精神病院にタクシーで向かいます。しかし、精神病院へ曲がる横町が何故か見つからず、タクシーを何度も往復させます。しかしどうしても見つからず、結局タクシーを降りて歩いて病院に向かうことにします。すると今度は道を間違えて青山斎場に来てしまいます。十年前の夏目漱石の告別式以来、門の前を通ったこともなかったようです。
「僕は砂利の敷いた門のなかを眺め、漱石山房の芭蕉を思い出しながら、何か僕の一生も一段落ついたように感じないわけにはいかなかった。のみならずこの墓地の前に十年目に僕を連れて来た何ものかを感じないわけにはいかなかった」とあります。
 何かに導かれたと感じたのですね。こういうちょっとした不思議な体験て、ありますよね。

あと、どうも自分のドッペルゲンガーがいるらしい、とも書かれています。実際に芥川龍之介の「第二の僕」を目撃した人から声をかけられて当惑したと書かれています。
これも怖いですね。

芥川龍之介が二階で休んでいると、妻が突然ドタバタと梯子段を昇ってきて、「なんだかお父さんが死んでしまうような気がしたものですから」と言います。これは実話みたいですね。
「それは僕の一生の中でも最も恐ろしい経験だった」と書かれています。
……これも怖いですよね。


長くなってしまったので次回に続きます。
読んでくださりありがとうございます。







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