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読書感想 芥川龍之介 歯車①

私が芥川龍之介にハマるきっかけとなった作品です。

この作品の半分は遺稿です。遺稿とは、故人が残した未発表の原稿です。
この作品がいまだご健在の作家さんのフィクションホラー小説だったならば、面白い!!と無責任に言えると思うのです。

ですが、こちらはおそらく芥川龍之介が自死する直前の精神的苦悩をそのまま書いたものなんじゃないかなと思います。そう考えて読むと、ただでさえゾクゾクする内容がより一層身近な恐怖として感じられます。疲弊しきっている人間の精神状態が生なましく描かれているのです。
 ところどころ、はて?どういうこと?という描写があるのですが、おそらくは「僕=芥川龍之介?」の幻覚や幻聴、妄想が入り混じっているのではないかと私は思いました。作中出てくるレインコート、もしくはレイコートを着た男性とか、結婚式の料理の蛆とかですね。

もしかすると、統合失調症の症状が出始めていたのでしょうか……。精神病院に入院しなくちゃと思ってはいたけれど、そうなると自分自身はもちろん家族まで差別されてしまう、という恐怖感があったのでしょう。同じく統合失調症だった実母の姿を見ているからこそ、相当な恐怖だったんでしょうね……。当時の精神病に対する差別は今とは比べものにならないくらい酷かったようですしね。

芥川龍之介に見えていた「歯車」は、閃輝暗点だったのではないかと言われていますね。

閃輝暗点とは、突然視界にキラキラ、ギザギザした歯車のようなものが見える症状です。脳血管の収縮や拡張に起因するもので、典型的な片頭痛の前駆症状のようですね。

作中、視界の片隅に半透明の歯車が見えて、それが視界を塞いでいき、それが見えなくなると頭痛が始まると書かれています。
当時は閃輝暗点なんて医者もわからなかったようですし、そんな得体の知れないもんが見えたら、そりゃーあ相当怖いですよねえ。


私がこの作品で一番興味をひかれるのが、これが実話ならば結構ゾッとするな……という数々のエピソードです。

長くなりそうなので続きは次回に。
読んでくださりありがとうございます。


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