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読書感想 首が落ちた話 芥川龍之介


タイトル通り首が落ちたお話です。
芥川龍之介の晩期の短編小説です。 


この作品、私は青空文庫で読んでとても感銘を受けたのですが、知ってる人ってあんまりいないですよね…?


私は芥川龍之介が大好きなのですが、
代表作のほかにも、隠れた名作がたくさんあります。

なんでこれが有名じゃないのー!?
と不思議に思ったりする作品もあります。

「首が落ちた話」は、そんな作品のひとつです。

日清戦争を背景としたお話です。

日本騎兵との戦闘中に首に怪我を負った中国人兵士、何小ニは、
落馬して意識を失うまでの間
走馬灯のようなものをみます。


母親の裙子、生まれた家の裏にあったごま畑、女の纏足された足…。
次々と懐かしい風景が青い空に浮かびあがります。

そして今までの生活を後悔し、やり直したいと心の底から願います。

何小ニは一命を取り留め、捕虜として収容されたのちに戦争は終わりますが……

結局、死にかけた時に誓ったことを忘れて、またもとの荒んだ生活に戻ってしまいます。

そして酒場での喧嘩で傷口が開き、亡くなってしまいます。



芥川龍之介の繊細で丁寧な文章に感嘆します。

特に走馬灯の描写と何小ニの心の動き。
魂の叫びをよくこんな風に文章で表現できるなあと思います。
素晴らしいです。



ひとは命が尽きる瞬間に何が見えるのでしょうか。

やっぱり走馬灯が見えるのでしょうか。

その時、「人生をやり直したい」
なんて思いたくないなあと思います。

私は、明日死ぬかもしれないと思って日々生きてます。

そう思うと、たいがいの事はどうでもよく思えるし、
毎日会う人でもきちんと挨拶して、親切にしよう、と自然に思えるのです。
そしてやりたいことは先延ばしにしないで、すぐに挑戦しようと思えます。

また、辛い時は、今日一日だけやり過ごそう、と思うと心が楽になります。

芥川龍之介は教科書に載っている羅生門のイメージが強く、そういう作風ばかりだと思われがちですが、意外に幅広いジャンルのものがあります。

良ければぜひ一度お手にとってみてはいかがでしょうか。




















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