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読書感想 芥川龍之介 歯車③

 歯車の感想の続きです。
 前回書いた通り、歯車はゾッとするエピソードばかりです。静かに、自然に、当たり前のことのように、怪奇現象が書かれています。その冷静さが一層恐怖感を引き立てている印象です。

 この作品は私小説というのでしょうか、やっぱりストーリーらしいストーリーもないのですね。相当な苦しみのなか書かれたものだと思います。そんな中でも、他人を貶めたり、侮蔑するようなことはほとんど書かれていないのが救いです。

 あくまで彼の攻撃は、他人ではなくて自分自身の内面に向かっていくのですね。自身で放った攻撃の毒矢は、心を貫くと同時に魂の底まで食い入りじわじわと侵食していったのでしょうか。
それでも文章は全然乱れてなくて、「小説」として充分読むに値する作品だと思います。
最後の最後まで、彼の心には知性の源が宿っていたのだと私は思います。

 感受性が鋭いと、1の出来事に対して10くらい考えちゃうと思うのです。普通の人だったら0.5くらいしか考えないことを、ふかーくふかーく考えてしまうのだと思います。感受性の豊かさは創作する人間(クリエイティブな仕事をする方とか)にとっては有利に働くとは思うのですが、普通に生活していたとしても疲れてしまうと思うのです。

私自身もわりと子供の頃から「感受性が強い」と言われていて、物事を深く考えちゃうタイプなので、芥川龍之介のエゴを追求する文章に共鳴しちゃうのかなあと思います。

 私ははじめて歯車を読んだ時に衝撃が走り、以後芥川龍之介の作品を読みあさるようになりました。それだけ読者に強烈なインパクトを与える作品なのだと思います。(私がもともとホラーやミステリーが好きなせいもあると思いますが)

何回も読んでいるのですが、今回読み直して心に決めたことがあります。

それは、なるべく黄色のものを身につけることです。笑

なんで私がそんな意味のわからんことを書いてるか、「歯車」を読んでいただければうっすらおわかりになるのではないでしょうか。笑
長い文章を読んでいただきありがとうございました。






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