gentle_daphne389

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【ぶうわ入院する】

ぶうわが小学生の頃、生死の境を彷徨ったことは【ぶうわの悲恋】で少し触れたが、 入院したぶうわには当時、牛頭町のおばあちゃんが付き添い、病院に泊まり込んだ。 私は、…

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14時間前

【ぶうわの悲恋】

私の大好きなぶうわは私の叔母で、母の姉にあたる。私が生まれた頃、母は産後暫くを牛頭町で過ごしたのだが、ぶうわは結婚前で牛頭町にいたので、母が病院から戻ってからと…

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こでまりさん

こでまりさんは、いつも土曜の夜8時に牛頭町の家へとやってくる。丁度、いかりや長介が「8時だよ、全員集合!』と元気に叫ぶ顔がTV画面にズーム アップされる頃だ。 ガラガ…

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1か月前
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【おはぎのおばちゃん】

ガラガラッと、牛頭町の玄関の引き戸を勢いよく開けて、「こんにちは~~」と言うが早いか、靴をバタバタと脱いで台所への暖簾をくぐる。 と、目の前のテーブルにある立派…

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1か月前

【おおばあちゃんの憂い】

牛頭町のおじいちゃんの母は「くに」さん(以下おくにさんと云う)と言い、私は残念ながら直接あったことは無いのだが、仏壇の遺影の丸顔がおじいちゃんとあまりにそっくり…

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2か月前
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【岡谷さんとおじいちゃん】

牛頭町の家のはす向かいには、『岡谷さんのおばちゃん』が住んでいた。 Mrs.Okayaさんである。岡谷さんだけで良いのだが、私たち子供の間では『岡谷さんのおばちゃん』が…

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2か月前

【おじいちゃんと蟹】

例年、みきた市の秋祭りは宵宮と本宮があり9月に開催される。 秋祭り翌日が敬老の日となり、毎年、町の老人会総出で後片付けに追われるため、お じいちゃんはお祭りが終わ…

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3か月前
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【母】

私の母たつ子は、牛頭町の私にとってのおじいちゃんおばあちゃんの末娘として生まれた。 御飯の支度や洗濯等の家事はおばあちゃんがいつもしていたし、上に姉であるぶうわ…

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3か月前
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【おじいちゃんの優先順位】

お昼時のいつもの牛頭町。食卓には切子皿に黒蕎麦が盛られている。今日はざる蕎麦だ。 「おじいちゃ~ん、お蕎麦できたよ」とおじいちゃんを呼ぶと、「よっしゃ行くわ」 …

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4か月前

【石切神社の神様】

ある時、牛頭町で母とおばあちゃんがいて、台所で集まって何かしら話しをしていた私は、 ちょうどおばあちゃんが出してくれたマスカットを房からとってはポンッと口に放り…

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4か月前

【おじいちゃん女優さんと出会う】

いつものように牛頭町のおじいちゃんの家に行く。 いつものように玄関を入り、リビングの座椅子の定位置に座っているおじいちゃんの横に腰を下ろす。 おじいちゃんは 「…

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4か月前
3

【スーパーダイニチ】

「はい、あんたら、何にするんや?」とおばあちゃんは私と弟、従姉弟のふーちゃんに声をかける。カウンターの下の方で「僕チョコ」「私バニラ」「私ミックス」と皆口々に言…

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4か月前

【おじいちゃんと布袋さん】

物心ついたときから牛頭町のおじいちゃんの家の飾り棚には布袋さんがいた。 約40㎝程の高さのその布袋さんは、瀬戸物の茶色の布袋さんで、大きな袋を後ろ手に、小顔で、口…

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4か月前

【氷屋さん】

「はな子ちゃーん」 「は~い おばあちゃん、何ぃー」と、おばあちゃんの呼ぶ台所にいくと、「ちょっと黒蕎麦買うてきてくれるか?」と、おばあちゃんはお財布から小銭を…

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4か月前

【ぺぺ】

おじいちゃんがいつも座っている座椅子の横にはサイドボードとキャビネットが一緒になった棚が置いてあり、そこには、お菓子の缶や記念切手、布袋さんの貯金箱等色々置かれ…

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4か月前
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【ぶうわ入院する】

【ぶうわ入院する】

ぶうわが小学生の頃、生死の境を彷徨ったことは【ぶうわの悲恋】で少し触れたが、
入院したぶうわには当時、牛頭町のおばあちゃんが付き添い、病院に泊まり込んだ。
私は、おばあちゃんのことだから、娘の容態を心配し過ぎて、悲愴感を漂わせていたのではないかと想像した。が、

「有難いわぁ~ホテルに来てるみたいやな。家のこと何もせんでいいんやから、あ~~~ありがたいわ~」と言って、終始ご機嫌だったそうだ。

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【ぶうわの悲恋】

【ぶうわの悲恋】

私の大好きなぶうわは私の叔母で、母の姉にあたる。私が生まれた頃、母は産後暫くを牛頭町で過ごしたのだが、ぶうわは結婚前で牛頭町にいたので、母が病院から戻ってからというもの、生まれた私を大層可愛がってくれた。

「はな子がいるから、仕事に行きたくない。」と言って、私のために会社をずる休みしたこともあるらしい。

私をあやし、ミルクを飲ませ、お風呂に入れ、色んなところに遊びに連れていってくれた。牛頭町の

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こでまりさん

こでまりさん

こでまりさんは、いつも土曜の夜8時に牛頭町の家へとやってくる。丁度、いかりや長介が「8時だよ、全員集合!』と元気に叫ぶ顔がTV画面にズーム
アップされる頃だ。
ガラガラガラと玄関の戸が開く音がして、
「こんばんは~」というこでまりさんの声に「どうぞあがってちょうだい~」とおばあちゃんが受け玄関へと向かう。

夕飯を終え、TVを囲んでいる牛頭町のメンバー(おじいちゃんや私や弟、時にはぶうわやこうたろ

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【おはぎのおばちゃん】

【おはぎのおばちゃん】

ガラガラッと、牛頭町の玄関の引き戸を勢いよく開けて、「こんにちは~~」と言うが早いか、靴をバタバタと脱いで台所への暖簾をくぐる。

と、目の前のテーブルにある立派な黒い塗りのお重が目に入った。『あ、これはもしや!』と私はすぐにピンときて「おはぎ?!」と言うと
ケタケタケタッとおばあちゃんは嬉しそうに笑い「はなこちゃん、ようお越し。そうやし、よう

わかったな、吉本の姉さんにおはぎ沢山いただいたんや

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【おおばあちゃんの憂い】

【おおばあちゃんの憂い】

牛頭町のおじいちゃんの母は「くに」さん(以下おくにさんと云う)と言い、私は残念ながら直接あったことは無いのだが、仏壇の遺影の丸顔がおじいちゃんとあまりにそっくりなので、私は見る度に可笑しくてニヤニヤした。

おくにさんが、大工の棟梁だったおおじいちゃん(牛頭町のおじいちゃんの父)の元に嫁いで来た頃の牛頭町の家は、玄関を開けると土間があり、そこには沢山の人工さんが居て、食事をしたり休憩を取ったりと、

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【岡谷さんとおじいちゃん】

【岡谷さんとおじいちゃん】

牛頭町の家のはす向かいには、『岡谷さんのおばちゃん』が住んでいた。

Mrs.Okayaさんである。岡谷さんだけで良いのだが、私たち子供の間では『岡谷さんのおばちゃん』が通称になっていた。

岡谷さんのおばちゃんはとても細い小柄な人で、白髪混じりの細い毛質の髪を、瓶付け油で撫で後ろで小さくひっつめて、お団子にしていた。

普段から着物や浴衣を着ていることも多く、よく、紺やグレー地に黒の細かいな格子

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【おじいちゃんと蟹】

【おじいちゃんと蟹】

例年、みきた市の秋祭りは宵宮と本宮があり9月に開催される。

秋祭り翌日が敬老の日となり、毎年、町の老人会総出で後片付けに追われるため、お
じいちゃんはお祭りが終わった翌日はいつも「敬老の日や言うのに、一番老人が働か
されるんやから、世話ないで」と言って目をまわしていた。

そんなお祭りが始まったのは、江戸時代。みきた城主の殿様が五穀豊穣を祈願したことが始まりとされている。
お盆を過ぎると、子供達

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【母】

【母】

私の母たつ子は、牛頭町の私にとってのおじいちゃんおばあちゃんの末娘として生まれた。

御飯の支度や洗濯等の家事はおばあちゃんがいつもしていたし、上に姉であるぶうわもいたので、あまり家のことをする必要はなく育ったようだが、お手伝いもする良い子だった。

牛頭町では、子供部屋はなかったので、母は学校の宿題や試験勉強はもっぱら、皆が居るリビングでしていた。皆がTVを見ている中にいても気にならずに出来る人

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【おじいちゃんの優先順位】

【おじいちゃんの優先順位】

お昼時のいつもの牛頭町。食卓には切子皿に黒蕎麦が盛られている。今日はざる蕎麦だ。

「おじいちゃ~ん、お蕎麦できたよ」とおじいちゃんを呼ぶと、「よっしゃ行くわ」
とおじいちゃんがリビングの座椅子から腰を上げる。

私は冷蔵庫から麦茶とおばあちゃんの作った常備菜を取り出し、食卓に並べ、リビングからきたおじいちゃんと先に席についた。

おばあちゃんは、台所の棚から、刻みのりが入っている大きな瓶を取り出

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【石切神社の神様】

【石切神社の神様】

ある時、牛頭町で母とおばあちゃんがいて、台所で集まって何かしら話しをしていた私は、
ちょうどおばあちゃんが出してくれたマスカットを房からとってはポンッと口に放り込み、
モグモグモグモグ食べていた。

おばあちゃんはその様子に目を細め
「やぁ、はなこちゃん、まぁ~~よう食べるよう

になってなぁ~えぇ~まぁ~~。美味しいか?」と聞くので「うん、美味しい!」と答え、ポンッポンッと続けざまにマスカットを

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【おじいちゃん女優さんと出会う】

【おじいちゃん女優さんと出会う】

いつものように牛頭町のおじいちゃんの家に行く。

いつものように玄関を入り、リビングの座椅子の定位置に座っているおじいちゃんの横に腰を下ろす。

おじいちゃんは
「はなこちゃん、ようお越し、これ食べ」と

いつものように、おじいちゃんのお菓子ボックスを出してくれる。

おじいちゃんのお菓子ボックスとは、時に大きな円柱や直方体の大きな缶に、色々なおじいちゃん好みのお菓子が入っていた。

私は「ありが

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【スーパーダイニチ】

【スーパーダイニチ】

「はい、あんたら、何にするんや?」とおばあちゃんは私と弟、従姉弟のふーちゃんに声をかける。カウンターの下の方で「僕チョコ」「私バニラ」「私ミックス」と皆口々に言うと、

「はいはい、ほな、黒1つ、白1つ、ミックス1つ、お願いします」とおばあちゃんはオーダーした。

ソフトクリームを、黒、白でオーダーするおばあちゃんにも、フードコートのお姉さんは顔色一つ変えず、慣れた手つきでクリームをコーンに絞りい

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【おじいちゃんと布袋さん】

【おじいちゃんと布袋さん】

物心ついたときから牛頭町のおじいちゃんの家の飾り棚には布袋さんがいた。

約40㎝程の高さのその布袋さんは、瀬戸物の茶色の布袋さんで、大きな袋を後ろ手に、小顔で、口を少し開けて微笑み、ふくよかなお腹とおっぱいが、打ち合わせた衣の間から見えていた。

布袋さんの膨らんだお腹とおっぱいの様子が牛頭町のおじいちゃんとそっくりだったので、私は小さい頃、これはおじいちゃんだ(おじいちゃんを模して造られたもの

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【氷屋さん】

【氷屋さん】

「はな子ちゃーん」

「は~い おばあちゃん、何ぃー」と、おばあちゃんの呼ぶ台所にいくと、「ちょっと黒蕎麦買うてきてくれるか?」と、おばあちゃんはお財布から小銭を取り出していた。「うん。わかった、行ってくる!」預かった小銭を握りしめ、私は玄関へと向か

う。

玄関には、おじいちゃんの大きな平たい黒革のつっかけと、おばあちゃんの小さなつっかけがあり、私は自分の靴には目もくれず、おばあちゃんのつっか

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【ぺぺ】

【ぺぺ】

おじいちゃんがいつも座っている座椅子の横にはサイドボードとキャビネットが一緒になった棚が置いてあり、そこには、お菓子の缶や記念切手、布袋さんの貯金箱等色々置かれているのだが、
ちょうど取り出しやすい高さのところには、分厚いアルバムが何冊も置かれていた。

おじいちゃんがきちんと整理して、●●年 家族旅行 □□ 等撮影日と撮影場所がきちんと貼られていた。

何冊もあり、おじいちゃんの職場での慰安旅行

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