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【読書感想文】村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」

こんばんは!
ダチュラ!小栗義樹です!

本日は、読書感想文を書かせて頂きます!
毎週読んだ本を題材にして感想文を書く試みです。この記事を読んで、題材となった本に興味を持ってもらえたらいいなぁと思っています。

本日の題材はコチラです!

村上龍「コインロッカー・ベイビーズ」

文豪:村上龍さんの長編デビュー作。コインロッカーに捨てられた赤ん坊「キク」と「ハシ」という2人の主人公が、積み上げた現状を破壊しながら生きていく物語です。

多くのフォロワーを生んだ作品と言われていて、又吉直樹さんや村上春樹さんなどが影響を受けたと公言しているみたいです。

僕は初めて読みました。初めて読んだ小説を題材に読書感想文を書くのも初です。小説は最低でも2回は読んだものを題材にするようにしてきました。1回目って、結構見落としますよね。ストーリーを追いかけるので精いっぱいだったりして、心情や心境、設定なんかを見る余裕がありません。

ちなみに小説以外は1回読めば書けます。得意なジャンルであれば、目次を読むだけでも余裕です。唸るような感想文を書く自信があります。

2回目になると「あらすじ」が頭に入っているので、その分フラットに読むことが出来ます。1回目では気づけなかった作者の「狙い」や「技」みたいなものまで汲み取れるようになります。読書感想文は経験上、そのくらいの理解度で書いた方がいい気がしています。書き終わった感想文を自分で読んだ場合に「納得感」があるのです。

では、なぜこの作品は1回の読了で感想文を書くのかというと、読み終わって「書きたい」と思ったからです。コインロッカーベイビーズは、勢いに任せて感想文を書いた方が良い作品だと思いました。それくらいの狂気と熱量を持ち合わせていると思います。

コインロッカーベイビーズは、抑圧と制限から解放されるために「すべてを破壊する」という選択をする話だと思います。書かれている言葉・描かれている描写は、とにかくバイオレンスで勢いがあります。お話の中には、様々な抑圧、それも無意識な抑圧が出てきます。それが人として当たり前でしょ?という普遍的な行動が、一方から見れば抑圧となってしまう事を理解していない人・集団が、主人公たちをとにかく苦しめます。彼らは普遍的な行動・当たり前のことだと思い込んでいるため、なんだったら善意だと思っている節さえある。

主人公たちは、様々な手段であらゆる抑圧を破壊します。コインロッカーに捨てられたというのは、普遍的な人間ではないという事を証明するための建前のように僕には見えました。そこが人格になんらかの欠損をもたらすだろうと判断した村上龍の切り取りセンスが凄いなと思います。

2人の主人公は性格が反対です。真逆・正反対とまでは言い切れないかなと思います。読んでいて、共通している部分も沢山あるなと思ったからです。主人公の、絶妙な性格の違いが良い味を出しています。各々が各々で様々な破壊・突破を演出してくれるのです。

僕はロックをやっているので、ハシが抱える悩みや葛藤はすごくよく分かります。同じ歌を歌い続ける辛さ・イメージコンサートと実際のコンサートのギャップ・論理だけではどうにもならないもどかしさなど、読んでいて共感の嵐でした。

この作品の面白いところは、そんな共感できる部分と共感できない部分がきっぱり分かれていて、とても判断しやすい点にあるなと思っています。

例えば僕は、ハシの音楽の葛藤には大変共感できますが、一方でハシほど弱くないと思います。正直、弱さを認められないハシには嫌悪感さえ抱きました。一方でキクの弟を想う気持ちはすごく理解できるのですが、だからといって行動の一部始終は全然理解できません。頭悪いのかなぁ?と思う場面がいくつも出てきます。ちなみに、アネモネ(キクの嫁)というヒロインに関してはずっと嫌いです。僕がもう少し若くて、今よりもロックにドップリだったら、もう少しこの子を好きになれたかもしれませんが、残念ながら今の僕にはまったく刺さりませんでした。

こんな風にキャラや話が立っているからこそ、好き/嫌い・共感できる/できないが明確に判断出来ます。この現象は結構珍しいと思っていて、普通は作品の全体像に流されて、ちょっとした不快な部分でさえ受け入れてしまいがちなのですが、このコインロッカーベイビーズは、それを許してくれません。不快な部分は、きちんと不快なまま刻み込まれます。この、臓物を食べたような感覚がクセになる作品だなと思いますし、そこにリアルがあるような気がするのです。

はっきり言えば、決して読みやすい作品ではありません。難しい言葉も沢山出てきますし、人間関係が複雑なので処理が大変です。でも、一文一文にエネルギーがあって、読む人をくぎ付けにする不思議な力が備わった作品でもあります。激情的かつ詩的な表現にひき込まれて、夢中になって読み漁る自分を何度も体験することになりました。1回ハマったら抜けられません。確実にトビます。

村上龍の文章ドラッグにハマりたいという方がいらっしゃれば、コインロッカーベイビーズのボリュームは最高に適量です。多分ですが、古本屋に沢山流通されていると思います。ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか?

というわけで、本日はこの辺で失礼いたします。
また明日の記事でお会いしましょう!
さようなら~


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