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オリジナル小説「アスタラビスタ」

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人を殺めようとした紅羽を止めたのは、憑依者と呼ばれる特殊体質の男だった。キャラが憑依し合うヴィジュアル小説!
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アスタラビスタ 8話 part8

アスタラビスタ 8話 part8

「はじめまして。紅羽さん」
 一つに束ねた髪は片側に寄せ、耳にはシルバーと赤いピアスをしている。優しい目でこちらを見る姿は神々しく、何か大きな力を感じた。
 なんて美しい人なのだろう。私は彼から目を離すことができなかった。
「憑依能力者組織へようこそ。私はこの組織を統括している、憑依者No.1の岸浦です。よろしく」

 私は大きな勘違いをしていた。組織のトップというから、てっきり年配の人間か

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アスタラビスタ 8話 part7

アスタラビスタ 8話 part7

「ここだ」
 それまで番号の振ってあった扉とは明らかに違い、組織のトップの部屋にふさわしい高級感のある、重たそうな扉だった。
「本当にいいのか……?」
 扉に手をかけた雅臣が、最後の確認のように尋ねてきた。
 今まで納得していたはずだったのに、私は最後の最後で心が揺らいだ。この一歩が、私の人生を大きく変えてしまう一歩になりはしないか、と。
「大丈夫です」
 私は自分の服の裾を掴み、俯い

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アスタラビスタ 8話 part6

アスタラビスタ 8話 part6

 気を取り直したように、雅臣は私に説明し始めた。

「他の憑依者はここに住んでるんだよ。ここは組織の本部でもあり、憑依者の寮なんだ」

 彼らの姿を見送った雅臣が、私に教えてくれた。

「ここにいれば家賃はかからないんだが、なんせ住んでる人間たちが特殊な奴らばかりだ。だから俺と清水はここを出た。亜理や晃も」

 私は今の彼らを見て、雅臣と清水がここを出た理由が分かった。もし私がここに住めと言われて

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アスタラビスタ 8話 part5

アスタラビスタ 8話 part5

「佐々木、清水がよろしくって言ってたぞ」
 雅臣が清水の言葉を伝えると、彼は呆れたように笑った。
「直接言えって伝えろ。誰のお陰で身体提供者になれたと思ってるんだ」
 雅臣の近くに来た男は、雅臣よりも背が高かった。スリムな体型だったので、遠目ではそこまで大きく見えなかったが、近づいてきた男は思った以上に大きく、私は首が痛くなるほど見上げた。
「俺は伝書鳩か」
 雅臣は眉間に皺を寄せて、男に不満の表

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アスタラビスタ 8話 part4

アスタラビスタ 8話 part4

 雅臣の運転する車に乗り、彼らに連れて来られたのは、東京駅近くの大きなビルだった。
 私はこの近辺に訪れたことがある。夢と希望を持って上京したとき、私が初めて降り立った駅が東京駅だった。
 彼らの組織の本部だというビルは、人目を嫌うように外壁も窓も黒く、数社の企業が入っていてもおかしくないほど大きなものだった。
 私はビルを見上げ、雅臣に尋ねた。彼はこのビルには自分たちの組織しか入っていないと答え

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アスタラビスタ 8話 part3

アスタラビスタ 8話 part3

 頬が熱かった。熱い。暑い。恥ずかしい。彼に右手を引かれながら、私は左手で自分の頬を押さえていた。少しでも左手へと熱を放出したいのに、頬に当てている左手まで熱い。熱がこもる。 
 辿り着いたのは、彼らの家の近くにある公園だった。遊具は滑り台とブランコのみで、公園の周りには木がうっそうと茂っていた。それでも、団地が密集するこの住宅地では、大切な子供の遊び場になっているようだった。
「ごめんな、昨日出

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アスタラビスタ 8話 part2

アスタラビスタ 8話 part2

 翌朝、目が覚めると、昨夜の感情は嘘のように消えていた。カーテンの間から入り込む日の光が心地よいと感じるほど、私の心は穏やかさを取り戻していた。
 そして、昨夜、自分が寂しさから雅臣に電話をかけたことを思い出し、恥ずかしさで頭を抱えた。
 なんてことをしてしまったのだろう。愚かすぎる。私は雅臣の声を聞くことだけを目的に、電話をした。意味のない電話なんて、相手への好意を示しているようなものではないか

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アスタラビスタ 8話part1

アスタラビスタ 8話part1

 深夜、寝苦しさで目が覚めた。何か悪い夢を見たのだと思う。だが、その夢が何だったのか、思い出すことはできなかった。
 ただ涙が溢れてきた。なぜ自分がここにいるのか。生きているのか。全てを否定したくなった。
 同時に、言い表せないほどの恐怖が襲ってきた。今後、自分はどうなるのか。独りぼっちになってしまうのか。
雅臣や清水、圭がいるというのに、今の私には彼らも「何の保証もしてくれない人間」に見えていた

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アスタラビスタ 7話part9 7話完結

アスタラビスタ 7話part9 7話完結

 私と雅臣は、清水や亜理たちを道場へおいて、先に帰ることにした。

どうやったとしても、私はあの場にはいられなかったし、晃ともう一度顔を合わせる勇気なんてなかった。

 そんな私の気持ちを察したのか、「もう帰るか」と切り出したのは雅臣だった。

 助かった。私は逃げ出したくて仕方なかった。だが、自分から逃げ出す勇気もなかった。

こうして、引っ張ってもらわなければ、私は動くこともできなかった。

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アスタラビスタ 7話part8

アスタラビスタ 7話part8

 私が言ったことは間違っていただろうか。

 違う。私が言ったことは間違っていない。
ただ、私みたいな最低な人間が、あんなことを言ったことが、そもそも間違っていた。

私は間違ったことをしてきた人間だ。そんな人間が、他人をとやかく言う資格などない。

 道場の中央で楽しそうに会話している清水たちを眺め、私は道場の隅で、彼らからもらったスポーツ飲料を飲んでいた。

味なんて分からない。ただ、身体の中

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アスタラビスタ 7話part4

アスタラビスタ 7話part4

「速い」
 視界の隅で、圭が呟いた。
「憑依形態の速さは、実践でも必要だ。その速さは憑依者の技術。亜理より、断然雅臣の方が早い」

 私はもう一度道場へ目を向ける。憑依者たちの手合せなんて見たことがなかった。あんなに雅臣とも手合せをしていた。

清水とも話をしていた。

だが彼ら二人の戦う姿を、私は見たことがなかった。

 一体、どんな戦い方をするのか……。

 道場の中央で、彼らの刀

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アスタラビスタ 7話 part3

アスタラビスタ 7話 part3

「本気でやりたいんだろ? 晃」
 雅臣は真顔で晃に問いかけた。何を当然のことを言っているのかという表情で、晃は頷いた。

 すると雅臣は「なら、ナンバー戦をやろう」と答えた。
 先ほどまで彼を挑発していた晃だったが、突然の彼の提案に驚いた様子だった。

「そりゃ、俺、本気でやりたいって言いましたけど……いいんですか?」
「別にいいぞ。じゃないと、俺らも本気になれないからな。なぁ、清水」

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アスタラビスタ 7話part2

アスタラビスタ 7話part2

 道場の中央に集まった雅臣と清水、亜理と晃は、互いに向かい合い、手合せをする上でのルールを確認しているようだった。

 私と圭は道場の隅で体育座りをして、彼らの様子を眺めていた。私がこの手合せを傍観するのは分かる。だが、圭も私と同じように端で見ているだけというのは、あまりにも寂しすぎる。

「あの……圭さんは」
 思い切って、聞いてみることにした。

「その、つまらなくないですか? 見てるだけだな

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アスタラビスタ 7話part1

アスタラビスタ 7話part1

「遅かったじゃん! おみおみ~!」

 道場の真ん中で大きく手を振る赤毛の彼女は、先日と変わらず元気な様子だった。隣にいる晃は、申し訳なさそうにこちらへ頭を下げた。

 彼らへと歩みを早める雅臣は、明らかに不機嫌そうだった。

「俺たちよりも先に予約を取ったのは、お前らだったのか」
 雅臣の口調は、もはや怒りに近かった。

「そうよ。私たちが貸し切りで予約を取ったの。本当は晃と憑依時の確認をしよう

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