マガジンのカバー画像

詩作品

40
運営しているクリエイター

#私の作品紹介

1?歳

1?歳

詩誌「潮流詩派」掲載作品       

その日の放課後 学校で あいつは「生徒指導係の人」に突然呼び出された

「いったい何があったんだ! なぜそういつまで黙ってる! お前なあ、この俺と話すの嫌なのか? あァ?」

(……何が起こったのかなんて いったいどうして話せるんだ? 誰一人そんなこと望んでやしないじゃないか! そんなことを俺が話すことなんか 誰も 要するに やつらの思う通りに「大したこ

もっとみる
顔の消失――****症の夜(タイトル改変)

顔の消失――****症の夜(タイトル改変)

詩誌「潮流詩派」掲載作品

夜 子どもが部屋にいる その部屋の窓に 見知らぬ顔が現れる 

見知らぬ顔? いや それはいつか別の日の 子どもの顔だ 知らぬ間に その傍らを通り過ぎてしまった 別の日の顔 

ちょうど独り部屋にいて ふと気づくと ついさっきまでそこにあったはずの何か 例えば机の上の 一枚のスナップ写真が どうしても見つからなくなってしまったような 

そしていつしかそこには 見知らぬ

もっとみる
あの街にもう一度出逢いたい(博多 唐人町)

あの街にもう一度出逢いたい(博多 唐人町)

*179号(1999.5/18-19作成) 詩誌:潮流詩派 掲載

あの街にもう一度出逢いたい  

もう三十年以上も前のこと
夕暮れ時になるといつも
角の駄菓子屋で僕は牛乳を一気飲みした
街で初めてのスーパーができた
駄菓子屋もスーパーも楽しかった
でもいつしか
駄菓子屋だけがどこかへいってしまった
怪獣のカードが
毎日毎日増え続けていった
TVもどんどん面白くなる
ウルトラマンやウルトラセブ

もっとみる
やがて回帰する少年Aの傍らで

やがて回帰する少年Aの傍らで

詩誌「潮流詩派」190号 [状況詩篇] 掲載
やがて回帰する少年Aの傍らで  

彼が一体誰なのか 私は何も知らない
ただ私は 彼に関わる言葉の断片から
彼の喉の奥底に刺さった 微かな時間を思う
母親は 「この子を生んで…」
楽しかっただろうか
この子といるだけで幸せだと
感じるときがあったのだろうか
母親は彼に聞いた
「これ本当にあったことなん?」
彼は答えた
「いいや。違うけど、こないして書い

もっとみる
「みずほ」でお買い物?

「みずほ」でお買い物?

詩誌「潮流詩派」191号掲載 [2000年頃作成]

休日
買い物に出かけようと思った

脳裏に最寄のキャッシュカードコーナーの
映像が浮かんだ

いつもの様にそこには
笑顔にみちた店員たちがいる

その点については
今でも疑い得ない

その明るい部屋には
いつもの様に多くの人々がいて
静かに金を出し入れしていく

そんな光景が
絶えることなく
繰り返されていたはずだった

今彼は
突然「責任」を

もっとみる
眼差しではなく

眼差しではなく

*詩誌「潮流詩派」掲載 (1999作成)

舗道の上に放置された 行き倒れの人々は
誰の眼差しも求めはしない 

ただ
黄昏の中で 誰も知らないバラックへと
運び込まれていくだけだ 

たとえ その場で
息絶えなかったとしても 
いずれ 消えていく 
我々の すべての 眼差しから

我々だって? そうじゃない 思い出せ 

バラックは いつの日か 廃墟となった
病院だった 

お前は覚えているのか

もっとみる
無題(2011/3/11の出来事に寄せて)

無題(2011/3/11の出来事に寄せて)

あの空にもう戻れない
あの土と草と砂に

あの浜辺で
君と出会うことはできない
そこで君と語り合うこともない

いつか君とそこにいたはずの世界は
もうここにはない

でも 
もうないというそのことを
君はなぜわかるのか?

僕にはまだわからないのだ
あの日以来
君と僕が
そこでなにを感じて
なにを失ったのか
まだ---

2012/05/30作成

Tokyo/New York/Palestina

Tokyo/New York/Palestina

詩誌「潮流詩派」189号掲載

もし 終わり無き記憶が
終わり無き悪夢だとしたら

いつもと変わらない
透明な午後の日差しのもと

人々を不可視の戦いへと駆り立てる
聖なる言葉が
一瞬の閃光とともに
繰り返し 果ても無く降り注いでくる

この閃光と言葉との
終わり無き絆
ああ もしそれを
この私が断ち切れるのなら…

いつもと変わらない
透明な午後の日差しのもと
やがて閃光に包み込まれる街角で

もっとみる
『エチカ』第四部定理五に寄せて

『エチカ』第四部定理五に寄せて

詩誌「潮流詩派」193号掲載作品

『エチカ』第四部定理五
私たちの感情Passioの力が増大すること
その感情があくまで自らに固執すること
それは私たち自身の力によってではなく
むしろ私たちの外にある何かの力よって決定される

その何かが他者だ

アジアの大地を旅するカップルがいた
一人旅の途中で男は女に出逢った
女の意識は遠い彼方のいつの日か
すでに「途切れ」ていて
家族は女を二度と帰れない旅

もっとみる
虚空(Cosmo)のマッピング

虚空(Cosmo)のマッピング

似顔絵作りの(偽)技法は 宇宙の居所など何にも
         

(Naa--nnimo)気にしてなーいうら若き 懐かしの裏路地の床屋の娘 

だけ

が 密やかに知っている と まだ実際「乳」臭いスーパーマーケッ

トの誕生

などには 本当の話たーいして小躍りすることもなかったこのうら若かった



は 心の奥底で 言い換えれば 「母=女神(ディーヴァ)」の背中で 赤き

否青白き?)乳

もっとみる
出来事のために

出来事のために

詩誌「潮流詩派」202号掲載作品(タイトル改変)

誰もいない街路で
半透明の貝殻を握りしめる
音も光もない部屋で
玩具を捨てる
テレビが点いて
消えた
夢の中で
子どもが叩かれている

砂浜から鳥が飛び立つ
これら言葉たちに
私は再び出会った
あたかもデ・キリコの描く 
予感に満ちた街角で
自転車に乗った物言わぬ少女に
偶然出会ったかの様に
これら言葉たちに
私は暫くぶりの挨拶を交わす
もしこ

もっとみる
今は無き下水の地平から

今は無き下水の地平から

今は無き下水の地平から 蚯蚓のふやけた腹が覗く

 隣の飼い犬に踝(くるぶし)を噛まれた裏路地 

 そのとき私は何一つやるべきことが無かった小一の遊び人で 

 だるいダリを尻目にフェルメールの水差しの女が

 路地裏の銭湯で水浴しているのを知ってはいたのだが 

 ベル研究所に勤務するその飼い犬は グラハム・ベルが鳴らす

 ベルに涎を垂らす代わりに あの日の午後この踝を噛むように

 条件付

もっとみる
私のことを言葉にできた

私のことを言葉にできた

詩誌「潮流詩派」196号掲載作品 

その少女は 実父とその遊び仲間から受け続けていた性的暴行から逃れるため保護された 当初は呼びかけにも応えなかったが 周囲の者たちの支援と 本人の努力により 自分自身のことを書き 話すことができるようになった 今は青果市場で働いている 
その市場での彼女の話だ
  
「ここにきて 毎日いろいろな人と話します私には初めてのことです 今までは一緒に話す人が全然いませ

もっとみる