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1?歳

詩誌「潮流詩派」掲載作品       

その日の放課後 学校で あいつは「生徒指導係の人」に突然呼び出された

「いったい何があったんだ! なぜそういつまで黙ってる! お前なあ、この俺と話すの嫌なのか? あァ?」

(……何が起こったのかなんて いったいどうして話せるんだ? 誰一人そんなこと望んでやしないじゃないか! そんなことを俺が話すことなんか 誰も 要するに やつらの思う通りに「大したことなかった 何もなかった」って この俺がみんなに言えばいいんだろう! ……けれど もし何も話さなければ 誰の眼も届かない場所で ただ殺られるしかない……やつらに殺られるのか それとも その前に自分で自分を殺すのか さあ! 最後の選択はお前だけのものだ ……だが本当は 第三の道があることをこの俺も知っている 本当は誰もが知ってるんだ 誰一人 口には出さなくても そうだ! やつらを殺ることだ! そうさ そうだとも! 絶対にぐちゃぐちゃにしてやる! この俺が あの日 そして次の日も いつも世界の底で血の泡を吐き続けた様に…… 誰一人死にたいヤツなんかいやしない! 殺られるのも その前に死ぬのも どちらも御免だ! 今度この俺に近付いてみろ 俺は……やつらを みんなぶち殺してやる!)

黄昏の光を背にして ポケットに片手を突っ込んだ男たちがにじり寄って来る 俺には聞こえない口笛を 一見陽気に吹きながら……
(その時 俺はどうしても声が出なかった 窒息寸前だ 何も見えない 聞こえない この俺は……いったい……何をやろうっていうんだ? もう家には帰れない もう二度と さよなら母さん さよなら……)
 
今 私はTVを見ている もう随分と あいつには会っていなかった そして もう二度と会うことも無い もう二度と そこから戻れない場所へ あいつは行ってしまった

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