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私のことを言葉にできた

詩誌「潮流詩派」196号掲載作品 

その少女は 実父とその遊び仲間から受け続けていた性的暴行から逃れるため保護された 当初は呼びかけにも応えなかったが 周囲の者たちの支援と 本人の努力により 自分自身のことを書き 話すことができるようになった 今は青果市場で働いている 
その市場での彼女の話だ
  
「ここにきて 毎日いろいろな人と話します私には初めてのことです 今までは一緒に話す人が全然いませんでしたから それから日記も書いています 初めてのこと 忘れたくないこと 忘れたいけど書かなくちゃいけないことも それから ここにいない人でまだ私が話したことのない もっとたくさんの人たちと会って話したい 今話す人が全然いない人が きっとたくさんいるから そんな人と 会って話したい すぐには話せなくてもいいんです その人のそばにいるだけでも ほんの少しの間でいいから その人が 今は何も口には出せなくても いつかはきっと いつか どこかで 会えればいいね」


「きっと会えるよ いつも君が思っていれば
今日はもう行かなくちゃならないけど きっ
とまた来る 近いうちに 元気で」 


「はい きっとまた来て下さい 約束です」

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