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この短篇集は現代の日本に読み替えると、問題点が見えてきます「聖なる酔っぱらいの伝説」

<文学(67歩目)>
わたしたちは「聖なる酔っぱらい」ではありません。(笑)

聖なる酔っぱらいの伝説 他四篇
ヨーゼフ・ロート (著), 池内 紀 (翻訳)
岩波書店

「67歩目」はヨーゼフ・ロートさんの短篇集です。

とてもシニカルに世界を眺めていた(ナチスドイツに迫害されるユダヤ人として)のか、ちょっとシニカルなのですが、ユーモアあふれる作品集です。

4作品ともに「いいね!」の作品ですが、特に「蜘蛛の巣」「皇帝の胸像」が秀逸で、現代の日本の読者を意識しているのではないか??と感じました。

「蜘蛛の巣」
アドルフ・ヒトラー
台頭前夜のドイツ。

この作品は、社会が変わる際にどんな感じで変わっていくのか。
この解が描かれています。ヨーゼフ・ロートさんのジャーナリストとしての視点がとても興味深い。

そして、弾圧される側としてのロートさんの心が病む原因は、この不穏は社会情勢だと感じました。経済が痛み、国民に余裕が失われた時。全体主義が急激に育っていくことを私たちは学ばないといけないと感じました。

「泥棒はコソコソしない。獲物をかかげてパレードをしていた。盗賊は山奥に住まない。市内に堂々とビルを建てている。一人が通りで倒れると、次の者が上衣を剥ぎとった」(この文章が心を突きました。)

「皇帝の胸像」
崩壊したオーストリア・ハンガリー帝国の皇帝の胸像を立てようとする帝国周辺部の村の物語。

私は、人間と言うものは「変化」を受け入れることがなかなか難しい生き物であると感じました。

帝国が没落し崩壊しても、人びとにとっての生活は何も変わらず、変化を望まず、時代に取り残された伯爵や村人たちの、変わらぬ忠義や信念が滑稽でした。

それぞれの作品は読みやすく、そして21世紀にもつながる色々な問題が切り取られています。

ロートさんの作品では、人間を見つめる視線がとても鋭利。それ故に、とても興味深いです。

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