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おりたらあかんの読書ログ

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年間100冊を15年間続けてきました。でも、本当に知らないことばかり!というかアウトプットがまだ少ないなあと感じています。過去に読んだ本は「読書ログ」としてまとめてきたので、それ…
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#生き方

シャルル・ドゥローネ「ジャンゴ・ラインハルト伝」河出書房新社

シャルル・ドゥローネ「ジャンゴ・ラインハルト伝」河出書房新社


彼のことは以前、姉からの誕生プレゼントでCDをもらったことから始まった。ジャンゴは奇跡のギタリストである。

3本指で見事なまでのギタテクを展開するジャズギタリストであり、しかも彼はジプシーだった。生粋のジプシー魂の持ち主だった。そのことが彼をして超一流までいたらしめたのだ。

ジプシー魂とは「逆境を乗り越えることを習慣とするような情熱的で冷徹な魂」のことをいうらしい。環境によって自分をかえるの

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鈴木大拙「一真実の世界」近藤書店

鈴木大拙「一真実の世界」近藤書店

昭和16年発行のセピア色の本。当時の科学万能主義に疑問を呈し、「自然の反逆児」としての人間の性を直視する姿に共感する。

大拙はこの人間社会の限界を超克するものとして「霊性」を掲げており、それに目覚める道として「禅」の心を説いている。

3次元の世界に凝り固まって自分の世界を狭くしている人間に「脱次元の発想」を提案している。

弱肉強食を良しとする西洋的思考法の限界を厳しく指摘し、彼は東洋思想との

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金子兜太「わたしの骨格『自由人』」NHK出版

金子兜太「わたしの骨格『自由人』」NHK出版

以前、この人から「産土」と「荒凡夫」を学んだ。

それは俺にも十分響くものだった。彼は実に無邪気な側面をもっている。所謂「正義感」だ。これを持つ人こそが「健全な精神の持ち主」なのだという。大いに同感だ。「いじめる奴」と「守る奴」がいるとしたら、絶対に「守る奴」になる。「誰かの役に立つ」とかいうきれいごとじゃなくて、「弱きものの側に立って守る」という「正義感」に立つ彼の思想は、俺のスタイルとかなり重

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寺山修司「‘70S 寺山修司」世界書院

寺山修司「‘70S 寺山修司」世界書院

渋谷のflying booksで見つけた一冊。寺山の「家出のすすめ」は20代の俺に途轍もない影響を与えたわけであるが、いまでも深いところで俺の心を揺さぶるモノがある。彼の一貫した主張は「イエ」からの解放である。赤軍による72年テルアビブ空港小銃乱射事件において、日本が即時に相手国に謝罪をすると同時に、「国内でやらず、なんでそんなところでやったのか」とのコメントを首相が出す流れを見ながら「他人に迷惑

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鈴木大拙「大拙つれづれ草」読売新聞社

鈴木大拙「大拙つれづれ草」読売新聞社

鈴木大拙は金沢が生んだ世界的な仏教哲学者。単なる国内研究者ではなく、英語で日本の仏教思想を広く翻訳し、広めたという点で他を圧倒している。キリスト教の素養もあり、仏教を客観的な視点から実に深く観察している。俺が一番面白かったのは「エデンの園」と「自由」に関する考察だった。キリスト教的な思想では必ず一神教の神が存在し、その対象あっての自由であり、幸福ということになるが、そうすると自然と人間の位置は確定

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荻耿介「イモータル」中公文庫

荻耿介「イモータル」中公文庫

もともとの題名は「不滅の書」であったらしい。「不滅の書」がさすものは「智慧の書」(=インドの古典「ウパニシャッド」)。インドに渡った兄はこの書だけを残して15年前に消息を絶った。どうやらこの書にいろいろな秘密が込められているらしい。主人公はこの「智慧の書」を手にとるようになってから兄の亡霊をみるようになる。兄は営業職で人間関係などに苦しむ主人公に「堂々としていろ」と語る。「急ぐにしても荘重に、手っ

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堀田善衛「路上の人」徳間書店

堀田善衛「路上の人」徳間書店

富山県伏木出身、「ゴヤ」という名作をもつ堀田氏による異色の作品。舞台は13世紀のヨーロッパ、イベリア半島とピレネー山脈あたり。主人公の浮浪人「路上のヨナ」は学はないが、多言語に通じ、必要な教養は耳学問で修めている。彼が観察する世界は堀田氏の視点であり、現代の私たちにも通じるものがある。ヨナが仕えたフランシスコ派の学僧セギリウスの真摯な姿勢に俺はいろいろと重ねるものがあった。ヨナは威張るだけで教養の

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E.フロム「自由からの逃走」創元社

E.フロム「自由からの逃走」創元社

昭和27年(1952年)に発行されたセピア色の版で読んだ古典は本当に素晴らしかった。久しぶりに言葉に力と深さがあってゾクッとくる本に出会った。表題の「自由からの逃走」は今に通じるものである。この本が出た1941年はナチスドイツの熱狂がヨーロッパを震撼させていた時期であり、ユダヤ系ドイツ人のフロムはその中で人々の「自由からの逃走」を目の当たりにし、歴史にメスを入れながら作業を展開していったようだ。彼

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