対話を届け、声を伝えるプロジェクト   つむぎ

ソーシャルワーカー|精神保健福祉士・社会福祉士・ジョブコーチ|単著「ひきこもりでいいみ…

対話を届け、声を伝えるプロジェクト   つむぎ

ソーシャルワーカー|精神保健福祉士・社会福祉士・ジョブコーチ|単著「ひきこもりでいいみたい」「ふすまのむこうがわ」共著「ソーシャルワーカーになりたい」|「ソーシャルワーカーのミカタ」(生活書院)発刊|環境と折り合うことに悩む人たちの話を聴いています

マガジン

  • ステイホームーコロナに揺れる、ひきこもごもな生活ー

    コロナ渦のひきこもりについて、支援の現場から見えてきたことについて報告します。

  • ソーシャルワークのまなびかたー原因と結果のあいだの話―(仮)

    原因と結果の話が溢れ、それを繋ぐ話が抜けている。そんな問題意識から、関わってきた事例のプロセスを紹介し、改めてソーシャルワークを考え、まなぶ機会になれたら良いなと思います。

記事一覧

固定された記事

ひきこもり女性(家族を含む)の声を集めています。

 声を集める。そんな想いから始めた取り組み「つむぎ」。 対話を届け、声を伝えるプロジェクト~つむぎ~|やまひぽ 山梨県ひきこもり情報ポータルサイト (yamahipo.net…

芦沢さんとぼく(仮名) 第7話 こんにちは。そしてお帰りなさい

 私が哲也さんの面接に同席するようになり、半年が過ぎた。過ぎたあとも私は哲也さんの面接に同席した。自分のために、これからどうなっていくのか見ていきたい。そう思い…

芦沢さんとぼく(仮) 第6話 僕の夢は世界平和

 哲也さんに面接の同席を許可されて以降も、哲也さんと芦沢さんの面接は変わらなかった。哲也さんがチャットでのトラブルを話し、それに芦沢さんが付き合う。何か結論が出…

芦沢さんとぼく(仮)第5話 気をつかうって何ですか?

 ハローワークの出来事があった夜、私が自分がしたことを振り返ってみた。哲也さんが約束なく、相談に来た。私は芦沢さんの不在を伝えた。哲也さんは困ったと言い、私でも…

芦沢さんとぼく(仮) 第4話 もう話したくないです

 県職員になり、私がしたことは、英語の勉強、100mダッシュ・・。一体、何をしているのだろう?就職した当初、私は困っている人の相談に応じ、答えている自分の姿を想…

芦沢さんとぼく(仮) 第3話 強い人になりたいです。

 評価をしない。計画を立てない。ただ、関係を築く。先輩の芦沢さんはそう言っていた。関係を築くことが大切なのは分かる。でも、それで私は何をするのだろう?評価もしな…

芦沢さんとぼく(仮)第2話 ぼくのどの辺が優しいですか?

 県職員になり、3週間が経過した。初めの頃は緊張していたが、徐々に人にも慣れた。ただ、一つだけ、先輩である芦沢さんの面接には慣れなかった。  私は相手の話を聞き…

芦沢さんとぼく(仮)第1話

(あらすじ)  福祉系大学を卒業し、相談員となった田中元気は、人助けをしたいと希望に燃えていた。半年間の研修期間中、先輩である芦沢の面接に同席することになった田…

高年齢の未婚の女性がひきこもりに至るプロセス 

ひきこもりは男性の問題とされてきた。これまで、国は3回の実態調査を実施している。2016年に実施された初めての調査では、15歳から39歳が対象とされ、37%が女性との結…

過去でも、未来でもなく、今

 ひきこもり支援を行い、これまでの支援を文章にまとめるに辺り、私の中で浮かんだキーワードは「今」でした。「今」という単語が浮かんだ理由は2つありました。  一つ…

何もしないことに頑張る日々

 「何もしない」、それが本当は難しい。支援者という職業を選ぶ人は、基本はおせっかい。世話を焼き、相手の状態が良くなることに喜びを感じる傾向があります。それが一方…

子どものミカタ~ 不登校 ~

 不登校、30万人。そんなニュースが今年、流れた。増え続ける不登校。少子化で子どもの数が減っているのに、不登校は増える。何が起こっているのだろう?  不登校が問題…

対話を届け、声を伝えるプロジェクト~つむぎ~ 親子って・・

 親子。親であること、子どもであることに私たちはどこか特別な価値を、意味を込めてしまう。込めたくなってしまう。「親だから・・」、「子どもだから・・」と話すことで…

支援しないことが支援になる

 11月25日、山梨県笛吹市で講演会を開催した。タイトルは「生きづらさの声でつむぐ ラジオとくるま」。事前に「生きづらさ」をテーマにメッセージを募集。講演会はNHKの…

「生きづらさの声でつむぐ ラジオとくるま」

 11月25日(土)、山梨県笛吹市で講演会「生きづらさの声でつむぐ ラジオとくるま」を開催しました。事前申込で130名ほど。当日はそれよりも多い方の参加がありました。…

「それでも、ソーシャルワーカーになりたくて(仮)」第3回

 毎朝、病院から貸与されたPHSの電源を入れると、すぐにアカネさんの病棟から電話が入る。表示される病棟名。「またか・・」と電話に出て、「B病棟の田中です。アカネさ…

ひきこもり女性(家族を含む)の声を集めています。

ひきこもり女性(家族を含む)の声を集めています。

 声を集める。そんな想いから始めた取り組み「つむぎ」。

対話を届け、声を伝えるプロジェクト~つむぎ~|やまひぽ 山梨県ひきこもり情報ポータルサイト (yamahipo.net)

 相談室でもなければ、自宅でもない、第三の選択肢。そんな考えで始めました。始めてみて、①連絡をしてくるのは家族、②家族は本人と話ができず、対話の場に本人を招くことができず、家族だけの話を希望、③本人からの連絡はあるも

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芦沢さんとぼく(仮名) 第7話 こんにちは。そしてお帰りなさい

 私が哲也さんの面接に同席するようになり、半年が過ぎた。過ぎたあとも私は哲也さんの面接に同席した。自分のために、これからどうなっていくのか見ていきたい。そう思い、お願いした。年をまたぎ、哲也さんの通信制高校の卒業も決まった。嬉しいはずが、1月に入ってからの相談は卒業後の不安を哲也さんが口にするようになった。
 卒業したら何をしたいですか?芦沢さんが聞くと、哲也さんは「警察官になりたい」、「ビルの管

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芦沢さんとぼく(仮) 第6話 僕の夢は世界平和

 哲也さんに面接の同席を許可されて以降も、哲也さんと芦沢さんの面接は変わらなかった。哲也さんがチャットでのトラブルを話し、それに芦沢さんが付き合う。何か結論が出ることはない。先日も同じ話をしていたように感じる。何回、同じ話を繰り返すのだろうと思う。でも、ループのように同じ話が繰り返しされた。
 前回、チャット内で知り合った人と会うと話していたが、チャットでの会話を通じて、哲也さんが行動することも増

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芦沢さんとぼく(仮)第5話 気をつかうって何ですか?

 ハローワークの出来事があった夜、私が自分がしたことを振り返ってみた。哲也さんが約束なく、相談に来た。私は芦沢さんの不在を伝えた。哲也さんは困ったと言い、私でも良いから相談したいと言った。芦沢さんが担当との認識はあった。芦沢さんに話をするようにと言うこともできた。でも、言わなかった。芦沢さんがこれまでしてきたことが相談だとは思えなかった。私の方が相談員ぼく振舞える。そんな気持ちもあった。哲也さんか

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芦沢さんとぼく(仮) 第4話 もう話したくないです

 県職員になり、私がしたことは、英語の勉強、100mダッシュ・・。一体、何をしているのだろう?就職した当初、私は困っている人の相談に応じ、答えている自分の姿を想像していた。でも1か月以上が経過し、私は想像とは違う毎日を過ごした。この先、どうしたら良いのだろう?どうなっていくのだろう?
 先輩の芦沢さんのところに相談に来ている飯塚哲也さん(仮名)は、強い人になりたいと話し、空手の道場に通った。基礎体

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芦沢さんとぼく(仮) 第3話 強い人になりたいです。

 評価をしない。計画を立てない。ただ、関係を築く。先輩の芦沢さんはそう言っていた。関係を築くことが大切なのは分かる。でも、それで私は何をするのだろう?評価もしない。計画も立てない。何のために私はいるのだろう?芦沢さんが言っていたことが繰り返し、私の頭の中を回るが、私にはよく分からなかった。芦沢さんは何をしたいのだろう?

 チャットでトラブルになっていた飯塚哲也さん(仮名)は変わらず、芦沢さんのと

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芦沢さんとぼく(仮)第2話 ぼくのどの辺が優しいですか?

 県職員になり、3週間が経過した。初めの頃は緊張していたが、徐々に人にも慣れた。ただ、一つだけ、先輩である芦沢さんの面接には慣れなかった。
 私は相手の話を聞き、課題を見つけ、それに対して解決策を提示するのが仕事だと学んできた。学生実習で指導を受けた精神科病院の相談員もそうしていた。だから、私はそれをする相談員になると思っていた。でも、芦沢さんは違っていた。
 相手の話は聞く。でも、課題についての

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芦沢さんとぼく(仮)第1話

(あらすじ)
 福祉系大学を卒業し、相談員となった田中元気は、人助けをしたいと希望に燃えていた。半年間の研修期間中、先輩である芦沢の面接に同席することになった田中は、発達障害の診断を受けた飯塚哲也に出会う。人との関係を上手く築けず、トラブルを繰り返す飯塚をどうにか助けたいと望む田中。でも、芦沢は何もしない。しているのは英語の勉強と100mダッシュ・・。人を助けるとは?芦沢さんと「ぼく」と話す飯塚、

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高年齢の未婚の女性がひきこもりに至るプロセス 

ひきこもりは男性の問題とされてきた。これまで、国は3回の実態調査を実施している。2016年に実施された初めての調査では、15歳から39歳が対象とされ、37%が女性との結果が示された。ただ、分析対象として「家事手伝い・専業主婦」を除外していたことから、ひきこもり女子会を運営する「ひきこもりUX会議」は、内閣府の調査結果を受け、2017年にひきこもり女性を対象にインターネット等を通じた調査を実施し

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過去でも、未来でもなく、今

 ひきこもり支援を行い、これまでの支援を文章にまとめるに辺り、私の中で浮かんだキーワードは「今」でした。「今」という単語が浮かんだ理由は2つありました。

 一つは、ひきこもり支援を通して私自身が感じたことに由来します。ひきこもりの相談に訪れるのは多くは家族。なかでも母親。これまで本人に関わってきたものの、上手くいかず。キッカケを受け、私のところに来ます。キッカケとは何かといえば、親の退職、失業、

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何もしないことに頑張る日々

 「何もしない」、それが本当は難しい。支援者という職業を選ぶ人は、基本はおせっかい。世話を焼き、相手の状態が良くなることに喜びを感じる傾向があります。それが一方的になり、大きなお世話になることもありますが、支援者は何かをすることに価値を求める。でも、私はひきこもり支援を本格的に行うようになり、何もしないことに価値を求めるようになりました。どういうことだろう?以下、一人の男性との関わりから見ていきた

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子どものミカタ~ 不登校 ~

 不登校、30万人。そんなニュースが今年、流れた。増え続ける不登校。少子化で子どもの数が減っているのに、不登校は増える。何が起こっているのだろう?
 不登校が問題が指摘されると、その原因がまず言われる。最初に言われるのは「いじめ」次は本人の問題。無気力など、精神的、心理的な問題が言われる。そして、家庭の問題。最近ではヤングケアラーが言われたりもする。
 原因が言われると、対策が言われ、登校を勧奨せ

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対話を届け、声を伝えるプロジェクト~つむぎ~ 親子って・・

 親子。親であること、子どもであることに私たちはどこか特別な価値を、意味を込めてしまう。込めたくなってしまう。「親だから・・」、「子どもだから・・」と話すことで、起きている出来事を正当化してしまう。責任をそこに求めてしまう。親子の絆という言葉に象徴されるように、それは素敵なところもあるのかもしれない。でも、それによって親、子どもの行動が制約されること、重圧になることもある。

 この1か月、50代

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支援しないことが支援になる

 11月25日、山梨県笛吹市で講演会を開催した。タイトルは「生きづらさの声でつむぐ ラジオとくるま」。事前に「生きづらさ」をテーマにメッセージを募集。講演会はNHKの栗原アナウンサーとともに、メッセージを紹介しながら、感じたことを話していくというもの。
 メッセージは、細かく指定せず、「生きづらさ」というテーマだけで募集しました。取り上げるメッセージも順番は決めず、ランダムに。メッセージを受け、話

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「生きづらさの声でつむぐ ラジオとくるま」

「生きづらさの声でつむぐ ラジオとくるま」

 11月25日(土)、山梨県笛吹市で講演会「生きづらさの声でつむぐ ラジオとくるま」を開催しました。事前申込で130名ほど。当日はそれよりも多い方の参加がありました。申込時に「生きづらさ」のメッセージを募集。27件のメッセージが寄せられました。開催前、募集しても集まらないのでは?との予想は良い意味で外れました。
 講演会は2時間。講師で招いた「みんなでひきこもりラジオ」のMCである栗原アナより、ひ

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「それでも、ソーシャルワーカーになりたくて(仮)」第3回

 毎朝、病院から貸与されたPHSの電源を入れると、すぐにアカネさんの病棟から電話が入る。表示される病棟名。「またか・・」と電話に出て、「B病棟の田中です。アカネさんから面接希望が出ています。午前中は作業療法が入っているので、午後が良いかもしれません」との話を聞き、「分かりました」と返事。それがルーティンのように続きました。アカネさんの話は、「家族と連絡が取れましたか?」から始まり、「まだ取れていま

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