高年齢の未婚の女性がひきこもりに至るプロセス 

  ひきこもりは男性の問題とされてきた。これまで、国は3回の実態調査を実施している。2016年に実施された初めての調査では、15歳から39歳が対象とされ、37%が女性との結果が示された。ただ、分析対象として「家事手伝い・専業主婦」を除外していたことから、ひきこもり女子会を運営する「ひきこもりUX会議」は、内閣府の調査結果を受け、2017年にひきこもり女性を対象にインターネット等を通じた調査を実施し、回答者369名のうち、4分の1が既婚者だったとの結果を報告した。
 また、ひきこもりの家族会からも調査結果が女性のひきこもりの実態を反映していないとの指摘が挙がり、内閣府は2019年、「家事手伝い・専業主婦」を分析対象に含めた形で2回目の調査を実施した。ただ、2回目の調査は40歳以上の高年齢のひきこもりが話題となり、1回目とは異なり、40歳から64歳を対象とするものであった。調査結果は女性が23.4%という結果を示した。「家事手伝い・専業主婦」を分析対象に入れたものの、女性が低い割合を示したが、ひきこもりUX会議が同じ2019年に実施した調査結果では、女性が61.3%を示した。
 表面化するひきこもりの女性が少ない理由として、斎藤環氏は未だに女性が家庭にとどまり続けていることを多くの人が受け入れている実態があることを指摘している。コロナ禍を経て、2022年、対象を15歳から64歳までに広げ、「家事手伝い・専業主婦」も分析対象に含め実施された内閣府の3回目の調査では、15歳から39歳で45.1%、40歳から64歳で52.3%が女性との結果を示した。調査結果を受け、NHKを中心にしたマスコミがこれまで表に出てこなかった問題として、女性のひきこもりを取り上げ、なかでも専業主婦や若年層に焦点を当てた報道がなされた。
 ひきこもりについては、家族関係が大きく影響するが、男性と女性では違いが見られる。男性では、家族、なかでも父親が男性に就労し、自立すること求めるものの、男性が動かず、状態が固定化する状況に多く遭遇する。男性は父親を避けるようになり、母親との関係が強くなる。
 一方、女性は女性活躍社会などの言葉に代表されるように、20~30代の女性に対しては男性と同様の内容を家族が求める状況は見られる。ただ、男性に比べ、就労に向けた叱咤激励は強くなく、父親が出てくることは稀である。また、女性は就労に代わり、結婚や家事について母親からの叱咤激励が行われるが、男性が父親を避けるように女性が母親を避けることはなく、「毒親」という言葉に代表されるように、母親からは離れたいけど、離れられない関係になる場合も多い。
 そして、親子の関係は40歳を境に変わってくる。これまであまり指摘されていないが、家族の「イエ」意識が影響を与える。私の活動する農業従事者が多い地域では、高齢者を中心に「イエ」意識が強く残っている。「息子は家に残り、娘は嫁に行く」という意識を持っている親は多く、親が亡くなったあと、息子は家に残ることから、40歳以上の高年齢の息子には自立を求めない親が多い。一方、高年齢の未婚の娘に対しては、親が亡くなったあと、家に残すことは考えておらず、親が家から出ていくことを求め、娘との間が険悪になっている事例に多く出会う。ただ、そのような状況は表になかなか出てこない。
 声を集めたい。そう思いました。声を集め、その声から実態を把握したい。実態が見えることで、ひきこもり全体の状況がこれまでとは異なるものになる。そうなることでこれまで光が当てられなかったことに光が当たるようになると思いました。
 今年、夏頃までには文章をまとめたいと思います。

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