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第十六話 つじつまとほころび
伊賀晃とは女子寮の門の前で別れた。お互いに簡単な挨拶だけを済ませすぐさま背を向け会った。伊賀晃も自分と同じように早くこの場を立ち去りたいと思っているように感じた。唯一違うのは私をよく知る人が顔を見たら私と気づかないくらいぐしゃぐしゃに顔が腫れた惨めな姿をこれ以上見られたくないと思っていることだ。
玄関でスリッパに履き替え、部屋に戻る間にも私の目からは自動的に涙が溢れ続けていた。私は厳重に隙間なく
【レビュー小説】10年前の君に捧ぐ『しょぼい起業で生きていく』
厳しい冬も過ぎ去ろうとする2月末。
私は卒業アルバムの個人写真の撮影とその下に載るメッセージを書くために大学に訪れていた。
「”卒業後は地球一周してカフェ開くからみんな来てね☆”っと。よし、今日はこれで終わり」
意気揚々と財布や鍵といった必要最低限のものしか入っていないバックを手に取り、書いた紙を職員に渡し教室を出た。特にやることもなかったので、近くのミスドでのんびり小説を読むことにした。
「あ