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2020年4月の記事一覧
僕らは歩いていく #原稿用紙二枚分の感覚
ザジャリザジャリと僕らは歩く。
淡紅色の砂浜に、2つの影が、長ぁく伸びる。
ザジャリザジャリと影を追い、僕らはゆっくり身を寄せる。
2つの影が1つになって、離れるときには手で繋がっていた。
会話の無いまま、僕らは歩く。
ザザァザザァと打ち寄せる波。
右掌を握り直し、指を君の左手に絡ませた。君の肌の柔らかさと、薬指にはめられた指輪のツルツルした硬さを感じる。
半歩先を行く君がそれを握り
そのあぎとが見えるか
はじめに骨組みが歪んだ。
赤いさび止め塗料がぼろぼろと剥がれ落ち、クレーンの骨組みが歪んでいく。曇り空がまた一段、薄暗さを増した気がした。僕も、周りの連中も、強風に煽られて立っていることができず床に這いつくばる。
錆び付いたドアを開くような音が鼓膜に殴り掛かってきた。クレーンの金属があげるその悲鳴が辺りを打ち据え、誰もが耳をふさぐ。
クレーンは泣き、暴れ、歪められていく。いつだかテレ
【掌編小説】カレーの日
病院の窓。外。ショッピングセンターの駐車場。数少ない車。ぴかぴか輝く、屋根や鼻っ面。
独り者のドアが開いた。運ばれてきた食器には、いつも通りに蓋がされている。お皿の数は少ないのに、何だかいつもより豪華に見えるワンプレート。
「お食事ですよ。今日はアレですよ」
「えへへ」
看護師さんが含み笑いで退室する。蓋を開ける。食欲をそそる、あの匂い。有名店のとっておきのスパイスが入っている訳でも
観覧車が見える。#原稿用紙二枚分の感覚
夏のある晴れた日、私たちは、丘の上の観覧車に乗った。木立の中から、空中自転車がこちらに向かってくる。ジェットコースターがゆっくりと昇っていく。木々に覆われた遊園地が、地図のように見えた。
「まぶしいね。」
と、娘が言う。
「まぶしいね。」
と、妻が返す。
私は、太陽と反対側の窓に目を向けた。
そこには、昭和の時代に建てれられた白い4階建てのアパートが、何列も規則正しく並んでいて、夏の日
人々の祈りを、力に変えて
侍女に先導され、「神事」の場に姿を表した少女を待ち受けていたのは、千を降らぬ人々の熱狂であった。剣の乙女、救い主、銀髪の君、戦巫女。数多なる二つ名の連呼は怒涛となって、立ちすくむ少女を包み込む。
少女は、大剣を抱え込む両手にほんの少し力を込め、再び歩みだす。人々の海を割り、広場の中央へ。そこに穿たれた星型の孔の前に立つ。
大衆の熱狂と怒号に背を押されるように、大剣を振りかざす。あとは、これを