伊藤緑

小説、純文学、詩、散文詩、短歌。 X→https://twitter.com/C__…

伊藤緑

小説、純文学、詩、散文詩、短歌。 X→https://twitter.com/C__communis FANBOX→https://c-communis.fanbox.cc/ pixiv→https://www.pixiv.net/users/68119669

マガジン

  • 言葉綴り

    遠慮せずに載せたいものを。そう思ってこのマガジンをつくりました。 詩や短歌、小説などの創作作品を掲載していきたいと思っています。 月に4回以上の更新を予定しています。曜日は不定期です。

  • これまでに発表した詩をまとめています。

  • 短編集

    これまでに発表した短編小説をまとめています。

  • 言の葉

    これまでに投稿した作品のなかから、一部を抜粋してまとめています。ときどき更新するので、よかったらのぞいてみてください。

  • 反出生主義

    これまでに投稿した作品のなかで、反出生主義がテーマのものをまとめました。

最近の記事

  • 固定された記事

子どもを産んではいけない

一 出産というものに初めて違和感を覚えたのは、私が中学生の頃でした。あなたが産まれたときです。  風が吹けば田んぼに緑の波が立ち、昼間は蝉の声が、夜はクビキリギスの声がする、そんな夏のことです。当時二十代後半だった叔母が、元気な赤ちゃんを、あなたを産み、私の家にやってきたんです。  あなたを抱く叔母と、その隣に立つ旦那さん、叔母より一回り年上の私の父、そして母。大人たちはみんな破顔していました。赤ちゃん言葉で話しかけたり、小さな手を人差し指でツンツンしたりと、幼子である

  • 固定された記事

子どもを産んではいけない

マガジン

  • 言葉綴り
    ¥500 / 月
  • 133本
  • 言の葉
    116本
  • 短編集
    189本
  • 反出生主義
    25本
  • エッセイ
    6本

記事

    ビー玉が好きだと言ったら

    この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

    ビー玉が好きだと言ったら

    お姉ちゃんへ

    この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

    お姉ちゃんへ

    夏の日

    濃くて重たい影を 俯きながら引きずれば 夏を泳ぐ蝉や蜂に 命に近づかれて ひどく怯える

    お返し

    この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

    帽子のつば

    この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

    帽子のつば

    数字として

    今日も呼ばれる 存在としてではなく 数字として 明日も笑いかけられる 心身としてではなく 数の一つとして

    数字として

    滅びの色

    あぜ道を行けば揺れている草が 流れている雲が 響き渡る水音が目に留まって それらがどれも 滅びの色に見えてしまう

    滅びの色

    幻想の死

    この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

    吊るす

    長方形に願いを閉じ込めようとしましたが 願望もまた呪いだと思い 代わりに空っぽを こっそり奥に吊るしました

    映っていない夏

    夏だ夏だと言葉にしながら 夏に人格を与えている そんな自分に気付いたとき 私は夏を言葉にしているのではなく 夏という名の理想を言葉にしている そのことを改めて痛感しました 結局私の目に 夏は映ってなどいなかったのです

    映っていない夏

    乱れた夏

    畳の上に並べていく うちわにラムネ 蚊取り線香に風鈴 線香花火 夏っていう文字の刻まれた いろんなものを ぺたりと座り込んで見つめてみる でも辺りは乱れ狂ったまま 夏は整然としない 外では蝉が鳴いている 赤い空気がねばねば糸引いて ぽたぽた汗が垂れていく 私はますます乱れていく

    乱れた夏

    初めての友達は半世紀以上前からやってきた

     青春とはなんなのか、よく分かりませんでした。ずっと。 「甘いのどれ買う?」  昨日、学校のそばのコンビニの前の、交差点にある赤い目と見つめ合っていたら、後ろから高い声が二つ三つ聞こえてきました。うつむいて、足のすっかり隠れている制服の長いスカートを見つめながら、心のなかでつぶやきました。どらやきがいいなって。その声がひどく低く感じて、地面がゆれているような気さえして、私はリュックから一冊の本を取り出して、ぎゅっと抱くように胸に押し当てました。私が生まれる何十年も前の本で

    初めての友達は半世紀以上前からやってきた