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原稿用紙二枚分の感覚

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「原稿用紙二枚分の感覚」の応募作や関連する記事をまとめています。
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記事一覧

「原稿用紙二枚分の感覚」 結果発表

 応募してくださったみなさん、そして応募作を読むという形で参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました。結果発表を行いたいと思いますが、その前にまず、応募作全体の総評を行いたいと思います。また、今回の記事を読む際は、以下の記事をそれぞれ参考にしてください。

全体の総評 今回、事前にお伝えした通り、五感と自然描写と動作のみで書かれた掌編を、みなさんには求めました。視覚や聴覚、あるいは登

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評46〜49

 評を読む際は、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

 

●46 ますこすこ 『夏の記憶』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
『夏の記憶』とある通り、回顧的な文章で、表現は基本的に過去形でした。その書かれ方は一貫しているように感じます。途中、「経緯はわからない。」という形で挿入されてある、必然性の不明な出来事はありましたが、アルコールなり何なり、いろい

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評41〜45

 評を読む際は、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

●41 優雨 『「K」の空間』 作者の方、並びに評をご覧になっている方へ。この作品は、投稿後に文章が修正されました。今回、どの作品も、投稿された直後の文章を元に評(感想)を書き、採点しています。そうでないと、評をお返しする順番の都合上、締切終盤に投稿された方が有利になってしまうからです。作品が修正されるたびにこちら

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評36〜40

 評を読む際は、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

●36 摩部甲介 『友情よ今いずこ』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
 淡々とした表現が最後まで連続していました。名詞群の多くは描写されず抽象的なままであり、とりわけ作中人物は曖昧なままです。行動も一つ一つがざっくりとしか描かれず、その紡がれ方は一定のように思います。起きている出来事は荒々しいですが

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評31〜35

 評を読む際は、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

●31 亀山真一 『この道を進む』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
 極めて平らな表現と台詞だけで、最後まで構成されています。およそ一切の名詞に形容がなく、何もかもが非常に抽象的で、こちらで多くを補完しなければならないというその書かれ方は、一貫しているように思います。

 2.五感や自然、動きの描写

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評26〜30

 評を読む際は、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

●26 しゅげんじゃ 『太郎の居る世界』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
 抽象性の高い物語でした。短文と少ない語彙を重ねていく、という形で文章が続いていきます。最初から最後まで、短く平らな文章が積み上げられていくという形なので、文章に統一性はありました。こういった、平易で短い表現の連なりは読みやす

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評21〜25

 評を読む際は、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

●21 海亀湾館長 『ルンナは夜明けまでに』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
 最後まで淡々と、それでいて生々しい、強烈な文章で紡がれてあるように感じます。物語を構成するためだけに置かれてあるようなものも感じられず、統一感のある文章に見えました。最初から最後まで、まさに人間が描かれてあるように思いま

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評16〜20

 評を読むときは、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略しています。

●16 南葦ミト 『僕らは歩いていく』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
 冒頭の音の響きに惹かれました。ですが「2つの影が1つになって、離れるときには手で繋がっていた。」の「離れるときには」からリズムが少し変わります。音読もしていたのですが、ここで音の感じが少し乱れ、そのあと戻りました。ですがまた、

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「原稿用紙二枚分の感覚」に関するご連絡

 参加してくださった方へ、取り急ぎお伝えしたいことがございます。

 すでにつぶやきという形でも述べましたが、参加はしたけれどやっぱり辞退したい、という方がおられましたら、何らかの形でご連絡ください。ご希望通りに致しますので、ご遠慮などはなさらないでください。

 また、すでに評を公開した場合でも、評を取り下げてほしい、あるいは採点しないでほしい、というご希望をお持ちの方がおられましたら、その場合

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評11〜15

 評を読むときは、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

●11 智春 『鳩サブレー缶』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
 全体を通して湿った文章が続いていく、といった印象を持ちました。日常的なことが描かれているということもあって、崩れも破綻も、受け入れがたい偶然性も、見当たらないように思います。この掌編の、文章という一本の糸をどれだけたぐり寄せても、手

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評06〜10

 評を読む際は、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

●06  参加者の方が作品を削除されましたので、評も取り下げています。

●07 優まさる 『観覧車が見える。』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
 文章全体からは、淡々とした印象を受けました。作中人物に関する容姿の描写はほぼなく、「妻」や「娘」という単語の抽象性が、全体を通して人間を淡く縁取っていま

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評01〜05

 評を読む際は、以下の記事を参考にしてください。
 また、敬称は略してあります。

●01 むつぎはじめ 『殺景。ふたり。』 1.全体の統一性や必然性。破綻や偶然性の濃さ。
 アクションが主体の小説。文章全体で統一感は損なわれていません。殺し合いが一貫して書かれています。「ミリ」や「ぱん」といった擬音も、要所要所で使われているので、統一感という点での違和感はありませんでした。大きな破綻もないように

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「原稿用紙二枚分の感覚」 評価や採点の基準について

「原稿用紙二枚分の感覚」に作品を送ってくださったみなさん、そしてその応募作に触れるという形で参加してくださったみなさん、本当にありがとうございます。全49作の応募となりました。

 今後のスケジュールと、評価項目の詳細および採点基準を、ここでお知らせします。また、今回の企画の意図、目的を、改めてお伝えしたいと思います。

今回の企画の意図、目的 今回の目的は、五感や動作、自然描写で編まれた小説に触

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祖父の想いで

祖父の想いで

それは夢だと解っていた。
家の中は橙色の裸電球でも暗く、まるで停電の蝋燭のような儚い灯りの中にいた。なのに、奥の襖を開けると途端に明るく、日が照っていて眩しいくらいの夏が覗いた。
一歩前に出ればそこは外で、さっきまでの陰鬱な屋敷内が嘘のようで、それが夢なのだと解った。壁を透かして見ているような、そんな映像が目の前に、とにかく眩しく、照明を間違えて調節したような、目を開けていられないくらいの光で、慣

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