マガジンのカバー画像

徒然日記

323
運営しているクリエイター

#小説

徒然読書日記~額賀澪『転職の魔王様』を読みながら

思い切って、額賀澪さんの『転職の魔王様』を、キンドルで購入。

通勤電車の中で読み始めたが、思った通りはまった。

読んでいると、身につまされる内容が多い。

例えば、

・「必要とされたい」という実感を求めることは、すなわち「他人の物差し」に自分を預けること。

・転職したい、と思っている人で、「自分が何を求めているのか」がはっきりしていない人は多い

どちらも、わが身に当てはまりすぎる。

もっとみる

徒然日記~朝井まかて『残り者』読書中

昨日22時代に、布団に潜り込んでそのまま朝を迎えてしまった。

 そして、カーテンをめくれば、外は雪。満開の桜の上に雪。

 めったにない取り合わせだというのに、あまり心は浮き立たない。

 「外出禁止令」に従い、気を取り直して本を、と思い、手に取ったのは朝井まかてさんの『残り者』。

https://www.amazon.co.jp/%E6%AE%8B%E3%82%8A%E8%80%85-%E6

もっとみる
徒然日記~大島真寿美さん、『渦』読書中

徒然日記~大島真寿美さん、『渦』読書中

 先日、迷いに迷った末、久しぶりに小説の単行本を買った。

 大島さんの直木賞受賞作『渦』を。

 もともと私は、作家モノ、というのか、「ものづくり」の話が好きだ。

 特にものづくりに携わる人の迷い、悩み、そして道を見出していくその過程を描いた作品が。

 それで言うなら、昨日見た映画『トールキン』も、今日仕事に行く電車の中で開いた『渦』も、関わるジャンルも舞台も違うが、そのタイプに入るだろう。

もっとみる
そろそろと小説を書き始める

そろそろと小説を書き始める

 小説を書きたい、とは漠然と思い続けてきた。

 小説家になりたい。今はあまり向いていると思えない仕事に就いていても、いつかは、小説を書く人になりたい。

 だが、一字も書けないまま、ここまで来てしまった。

 自分ならではの世界、自分にしか書けないものとは何なのだろう。ちゃんと構築できるのか。

 ごちゃごちゃと考えて、一歩も進めない。

 歴史・時代小説になると、特に実在の人物について書くとな

もっとみる
徒然日記~久しぶりに漱石を書き写してみた

徒然日記~久しぶりに漱石を書き写してみた

 昨日、久しぶりに書き写しをしてみた。

 題材は、夏目漱石の『夢十夜』第一夜。

 死にゆく女に、「百年後に会いにくるから、待っていて欲しい」「自分を埋めたところに星の破片を目印においておいて」と頼まれ、主人公は聞き入れる。

 このやり取り、女の描写、そして「再会」の時…描写の一つ一つが硬質で美しい。

 ああ、こういう話だったっけか、と思った。

 

 小説の書き写しは、ライターとして活動

もっとみる
直木賞が決まった!~~日本文化について触れられる本求む

直木賞が決まった!~~日本文化について触れられる本求む

 仕事からの帰り道、スマフォで芥川賞・直木賞のニュースを見た。

 

 候補作が発表になって以来、気になって仕方がなかった。

 澤田瞳子さん、そして原田マハさんと、最近読んでいる作家さんが入っているからだ。

 しかも、候補者は全て女性である。

 一体誰が選ばれるのか。

 じりじりと待つのは、正直苦手だ。

 白状すると、今回の候補作はどれも未だ手つかずだ。

 どれから読もうか、となかな

もっとみる
偏食家、今更ながら浅田次郎『天切り松 闇がたり』にはまる

偏食家、今更ながら浅田次郎『天切り松 闇がたり』にはまる

「世の中には美味しいものがいっぱいあるのに、人生を損している」

 とは、あまりにも偏食のすぎる私への、母の言葉だ。

 シイタケはじめ、キノコ類。

 海老、カニなど甲殻類。

 特に海老やシイタケは、あの食感や見た目を思い出しただけで、「うわあ…」と引いてしまう。

 それでも、小説などで、登場人物たちが美味しそうに食べている描写を読むのは、嫌いではない。

 それでも、「じゃあ現実で試してみ

もっとみる
原田マハさん「群青 The Color of Life」(『常設展示室』)覚え書き

原田マハさん「群青 The Color of Life」(『常設展示室』)覚え書き

「朝、目覚めると、世界が窮屈になっていた」

 原田マハさんの短編集『常設展示室』の冒頭におかれた『群青』は、このようなカフカの『変身』を思わせる文章で始まる。

 主人公は、メトロポリタン美術館(メット)で働く日本人キュレーター美青(みさお)。

 子供時代からの夢の場所だったメットで働く彼女を、突如襲った異変―――その正体は、緑内障だった。

 

 そんな美青が、病院で出会う少女パメラ。彼女

もっとみる
木下昌輝さん『絵金、闇を塗る』を読みながら

木下昌輝さん『絵金、闇を塗る』を読みながら

 木下昌輝さんの『絵金、闇を塗る』を土曜日から読み始めた。

 江戸時代末期、土佐の「剃」と呼ばれる髪結いの子供として生まれた少年絵金が、才能を見出されて狩野派に弟子入り、天才絵師としてもてはやされるも、独自の美を追求し続ける……

 絵金という人については、名前と血なまぐさい絵を描く人、ということしか知らない。(どうして、美術史を見渡していると、このようなグロテスクで血なまぐさい絵を描く人が、時

もっとみる
『沈黙の王』~宮城谷昌光さんの小説のこと

『沈黙の王』~宮城谷昌光さんの小説のこと

 短編を一日に一話は読みたい。

 そう思い、実行に移して一週間が過ぎた。

 目安としては3冊はコンプリートしたい。そう思っていたが、池井戸潤さんの『七つの会議』でとりあえず、それも達成できた。

 さて、次はどうしようか。

 なるべくなら、幅広く色々な人の作品を読みたい。

 一冊をガツガツと読み続けない、とルールを設けている以上、手元にはできれば複数冊用意しておきたいところ。

 そんな折

もっとみる
パンドラの箱~池井戸潤『七つの会議』

パンドラの箱~池井戸潤『七つの会議』

 始まりは、パワハラの告発だった。

 誰もが認める会社の稼ぎ頭であるエリート課長・坂戸を、「居眠り八角」と呼ばれる万年係長・八角が訴えて出た。

 役員会が、どちらの肩を持つか、は自明とも言えた。

 しかし、役員会が下した決定は、その予想を大きく裏切るものだった。

 一体なぜそんなことになった?

 坂戸の後任となった、原島が八角に問う。

 その答えは、大掛かりな会社の「闇」とも言うべき内

もっとみる
甘い毒~米沢穂信さん、『儚い羊たちの祝宴』読了(ネタバレなし)

甘い毒~米沢穂信さん、『儚い羊たちの祝宴』読了(ネタバレなし)

 果物を盛り付けた籠か。

 それとも、美しい石を連ねたネックレスかブレスレットか。

 米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』を、例えるならば後者の方が良いかもしれない。

 連作短編という形式を持つのが一つ。

 個々の話は独立して読むこともできるが、「バベルの会」という読書会が透明な糸(テグス)となって、緩やかに繋がっている。

 「バベルの会」とは、夢想家のお嬢様たちが集まる読書サークルだ。

もっとみる
時代小説を書きたい

時代小説を書きたい

 小説を書くとしたら、歴史・時代小説か、あるいは架空の歴史を題材にしたものか。

 少なくとも、現代という時代は、自分には向かない気がする。

 実際、最近読了したのも、澤田瞳子さん、梓澤要さん、と時代物が多い。読みたいなあ、と思う本をいくつか挙げてみると、宮城谷昌光さんがまず上がる。

 書きたいなあ、と漠然と思っている話はあるにはある。

 狩野永徳を題材にした話で、彼が仕事中に倒れて死ぬまで

もっとみる