LBOについて③ | 簡易LBOモデル作成Step
今回はLBO(Leveraged Buyout)モデルの作成ステップについて簡単に解説していく。Stepごとの詳しい解説やエクセルの操作ではなく、あくまで流れを理解・イメージすることが目的である。
LBOモデルはPEファンドや投資銀行のスポンサーカバレッジチーム、PE関連のアドバイザリー業務でなければ普段作成することのない財務モデルの一つであるが、基本的にはMerger modelの応用版と捉えてもらえばOKである。米国の研修資料だとEquity waterfall, dividend recapなどの応用的な論点含めてモデルに組み込まれていることもあるが、通常業務ではそこまでテクニカルな論点を扱うことは稀であるから、今回はオーソドックスなスタイルでの説明である
必要な知識については、一般的な財務3表モデルを回せる方であれば、下記に記載するような個別論点とStepを押さえておけばそこまで苦労せずに作成できると思う。
①:Projectionの作成
LBOモデル作成の際には、LBOローンの前提条件等を組み込む際に、過去の財務数値の整理と将来期間のプロジェクションを作成する必要があるので、この点は一般的な財務3表モデルと同様に行うことになる。
過去のPLおよびBSをみて利益率や売上高の成長率、運転資本、固定資産のスケジュール等に関する基礎的な変数を設定しケースごとにChoose関数ないしはOffset関数を用いてケースをインプットすると数値がそれに応じて変更されるようにする。
②:買収時の前提条件、Sources/Usesの設定
次に並行して行うのが、買収時の前提条件と、Source/usesの設定である。
PEファンドが行う買収は一般的に非公開会社を対象とすることが多いので、エントリー時のEBITDAとエントリー時のマルチプル(EV/EBITDA)を決めて、EVを計算、買収時のネットデットを計算して買収時株式価値(Offer value)を計算する。
一方で、上場会社の非公開化案件では現状の株価に対する株価プレミアムを株式数に乗じて、直接Offer valueを求めることになる。
以下のようなイメージである。
EBITDAから計算する場合
直接Offer vallueを求める場合(Premium=10%としている)
EVから株式価値までのブリッジは以下のようになる。
(今回は上場会社の例であるため、株価ベースにoffer valueを計算、その後ネットデットを調整してEVを求め、entry EV/EBITDA multipleを計算している)
また、Uses/Sourcesのテーブル作成前の重要な前提条件として、買収時におけるLBOローンをEBITDAの何倍まで許容するかという点がある。シニアローンであるタームローンA/タームローンB(TLA,TLBと表記することが多い)と、劣後債(Subordinated debt: Sub debtと表記)に分けて水準を決めることになるが、今回は簡単化のためにタームローンのみで考える。
タームローンには定期弁済のタームローンA(TLA)と、満期弁済のタームローンBがある(TLB)点に留意したい。買収時に設定したエントリー時EBITDA(一般的にはLTM EBITDAになる)のX倍というように設定する。
上記を行いUses/Sourcesのシートを作成する。
③:Uses
Offer valueはLBOモデルにおける資金使途であるUsesのシートにおいて記載される。
次に対象会社が有している既存の有利子負債(Debt=借入金等)をリファイナンスするために「リファイナンス:Refinancing of existing debt」という項目を追加する。
加えて買収に際して必要な手数料(FA FeeやDD feeなど)を加算しUsesの総額が計算される。
イメージは下記の通りである。
④:Sources
Sourcesは一般的にはブリッジローンとLBOローン(シニアローンおよび劣後債)、および買収主体のPEファンドが出資するSponsor equity(ファンド出資額)から構成される。
ブリッジローンは買収時の対象会社BSにあるキャッシュ残高からミニマムキャッシュ(=Day1 cash)を控除して計算する。ミニマムキャッシュの残高はDDの結果によるものの初期的な検討段階では過去の運転資本の増減額の推移等から仮数値を試算しインプットすることが多い。
LBOローンは先ほど説明したシニアローンを中心に埋めていき、ファンド出資額は、Uses総額=Sources総額として、この数値からブリッジローンとLBOローンを控除して差額で試算することになる。
完成イメージは以下の通りである。
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