靑生ふゆ

Fuyu Asou 画家 https://linktr.ee/asoufuyu

靑生ふゆ

Fuyu Asou 画家 https://linktr.ee/asoufuyu nordio.fuyu@gmail.com Instagram/Twitter @asoufuyu

マガジン

  • 短編小説集

    短編小説、増幅中。

  • 宇宙文学

    宇宙の詩、小説まとめ。

記事一覧

此れから

これからたれをも愛すことのない意識を堪えて水中からばっと顔を上げた 雨が降っていた 四箱目の煙草は味が変わっているように僕は変わっていく 蔦がなくなった家は夏から…

靑生ふゆ
17時間前

衛星イオ

私は木星の衛星、イオがなぜかずっと好きで、故郷はイオと定めています。 木星は大昔から憂鬱の惑星と言われています。また、イオ、はラテン語か何かで自我を意味します。 …

靑生ふゆ
1日前
3

流砂の街

流砂の街に住んでいる 何ひとつ残らない場処 僕はたいよう作りに勤しんでいる 本当のたいよう いつか皆んなを照らすもの 金属板、螺子、歯車 そんなものたちで作る 僕の…

靑生ふゆ
6日前
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遠い海の友達から届いた、シーグラス、貝殻、青色、こんなに美しく愛おしいものがあるでしょうか

靑生ふゆ
8日前
1

森で死んだ猫は、身体が朽ちてしまってもその背骨のひとつも失わなかった。僕は何よりその消え方に憧れていた。尖った骨のひとつひとつを僕は愛しんで触った。森に僕の骨も残ったならどんなに美しいだろうと考える。死んだ猫、僕の背骨。

靑生ふゆ
11日前
3

工場地帯

工場地帯を抜けてゆく猫は当たり前に錆色をしている、鉄錆の混じった水をいつも飲んでいるから、やけに大きな赤い月、佇む重機たちの姿、僕が好んでこんな処に住んでいるの…

靑生ふゆ
2週間前
4

ノルエイン舎

靑生ふゆです。 八年くらい前から、ノルエイン舎というウェブストアを開いています。 この世界の何処かにある不思議なお店。その品物は青で取り揃えられ… と書いていると…

靑生ふゆ
2週間前
2

美に憧れ続けて -個展に向けて-

靑生ふゆです。 何回か書いている、高円寺のアパートで死にかけて絵を描き始めた後の話です。 私が本格的に活動を始めたのは、2017年です。 最初は知り合いのつてで、とあ…

靑生ふゆ
2週間前
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伊勢丹立川店の催し、SUMMER VACATION ART 100に油彩一点で参加します。この絵はその一回しか展示予定はなく、またとても特別な絵なのでご機会あればぜひご覧ください。

8月21日(水) ~ 2024年9月3日(火)
伊勢丹立川店2階 ギャラリースクエア

靑生ふゆ
2週間前
1

長編詩 遺書

序 僕は惑星周期の途上で遺書を書いている。 蝶が一度吸って落とした蜜のようにいとしかった日々を。 この歌は僕の生きてきたかろい足取りであり、君に渡す重い鐵の塊であ…

靑生ふゆ
3週間前
6

あの頃の僕等が生きられたのはレトルトのご飯でも水道水のおかげでもなく本や音楽や絵のおかげだった、大人になってこの手を持った僕はそれを裏切ることは出来ないんだ

靑生ふゆ
3週間前
2

北の果て

此処はいつだって冬で、白と青色が総てを支配する、針葉樹だけが背高く茂って、その葉は凍ってきらきらと美しひ、私は一枝手折って花瓶に飾る、慰み、近くには高ひ崖が在る…

靑生ふゆ
3週間前
4

海辺に不法に住み着いた僕等は、流木とトタンや何かで仮の住処を作り、いつか花屋を開きたいねなどと話している、夢を見るのも終わりにしなければいけない、この世界はとう…

靑生ふゆ
3週間前
8

苦しみと生を行き来して

靑生ふゆです。 最近は右脚を壊して、全然歩けず、何処にも行けずにいます。 身体の不安が他の多くの不安を呼び、殆どの時間を苦しみのなかに居ます。 けれど絵は描いてい…

靑生ふゆ
1か月前
6

こゝろの特別な場処

何もいらない 誰かの、あなたの、その美しいこゝろのなかの特別な場処を少しだけ脈打つ鼓動で動かせたなら そういう絵が、詩が作れたら それだけで 靑生ふゆ

靑生ふゆ
1か月前
7

生きる為の絵

一日に一枚か二枚絵を描く以外は、体調不良で何もできずにいる。 とにかく身体が動かなくて、何処にも行けずにいる。 文章を考えられないくらい頭も働かなくて、殆ど何もし…

靑生ふゆ
1か月前
4
此れから

此れから

これからたれをも愛すことのない意識を堪えて水中からばっと顔を上げた
雨が降っていた
四箱目の煙草は味が変わっているように僕は変わっていく

蔦がなくなった家は夏から僕を守ることなく崩れていきざんざばらになった僕の肉体とやらは高円寺南の喫煙所に埋葬されたいから有線イヤホンをして憂鬱な僕の体温で熱を帯びたベッドに寝転がる

衛星イオ

衛星イオ

私は木星の衛星、イオがなぜかずっと好きで、故郷はイオと定めています。
木星は大昔から憂鬱の惑星と言われています。また、イオ、はラテン語か何かで自我を意味します。

イオをテーマにした詩もいくつかあります。
最初のものは、イオでのささやかで美しい暮らしを綴ったものでした。

きっとこの暮らしがある意味で私の理想なのだと思います。青い石、光の黒板、美しいこと。

あと最近は、Instagramでイオと

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流砂の街

流砂の街

流砂の街に住んでいる
何ひとつ残らない場処

僕はたいよう作りに勤しんでいる
本当のたいよう
いつか皆んなを照らすもの

金属板、螺子、歯車
そんなものたちで作る
僕の作りもののひかり

(たいよう、照らして、すべてを救うはずさ、だってそれは、とびきりのひかりの粒子、この街の砂沙になるんだからーーー。)

遊びにおいでよ
消えゆく流砂の街にさ
すべて流されてゆくんだ
それは終わりみたいで
美しくも

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遠い海の友達から届いた、シーグラス、貝殻、青色、こんなに美しく愛おしいものがあるでしょうか

森で死んだ猫は、身体が朽ちてしまってもその背骨のひとつも失わなかった。僕は何よりその消え方に憧れていた。尖った骨のひとつひとつを僕は愛しんで触った。森に僕の骨も残ったならどんなに美しいだろうと考える。死んだ猫、僕の背骨。

工場地帯

工場地帯

工場地帯を抜けてゆく猫は当たり前に錆色をしている、鉄錆の混じった水をいつも飲んでいるから、やけに大きな赤い月、佇む重機たちの姿、僕が好んでこんな処に住んでいるのは、夜がこんなにも綺麗だからだ、乱視のひとみに乱反射するライト、ライト、ジリリ、レーザー、レッド、グリーン、ガガ、ブルー、探し物をしていた、永遠に見つからない落とし物、錆猫がネジをひとつ吐いた、工場地帯は海に近く、機械音と汐風が重なって、僕

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ノルエイン舎

ノルエイン舎

靑生ふゆです。
八年くらい前から、ノルエイン舎というウェブストアを開いています。
この世界の何処かにある不思議なお店。その品物は青で取り揃えられ…
と書いているとワクワクします!
お店の名前の由来は、ドイツ語で北を表すnordeからの造語です。

私は子供の頃からお店ごっこ、販売ごっこが大好きで、手作りの小物を作って並べたりすることにものすごく惹かれます。
いまは原画の販売が中心ですが、手作りのも

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美に憧れ続けて -個展に向けて-

美に憧れ続けて -個展に向けて-

靑生ふゆです。
何回か書いている、高円寺のアパートで死にかけて絵を描き始めた後の話です。
私が本格的に活動を始めたのは、2017年です。
最初は知り合いのつてで、とあるカフェギャラリーに水彩の小作品を置いてもらい始めました。
次に、初めて描いたキャンバス作品、フィンガーペインティングの青い絵で賞に初めて応募し、入選しました。とてもびっくりして、自信もなく、渋谷駅に飾られるのが恐る恐るだったことを覚

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伊勢丹立川店の催し、SUMMER VACATION ART 100に油彩一点で参加します。この絵はその一回しか展示予定はなく、またとても特別な絵なのでご機会あればぜひご覧ください。

8月21日(水) ~ 2024年9月3日(火)
伊勢丹立川店2階 ギャラリースクエア

長編詩 遺書

長編詩 遺書



僕は惑星周期の途上で遺書を書いている。
蝶が一度吸って落とした蜜のようにいとしかった日々を。
この歌は僕の生きてきたかろい足取りであり、君に渡す重い鐵の塊である。

第一章
「ヴァニラ・アイスクリームの日々」

僕はたれよりも孤独だった
S駅へ向かういつもの電車に寄りかかり
肋骨の夢を見ていた

僕の骨骨は美しく浮き上がり
青い血管と白んだ脂肪らがそれを包む

(八センチのピンヒール。)

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あの頃の僕等が生きられたのはレトルトのご飯でも水道水のおかげでもなく本や音楽や絵のおかげだった、大人になってこの手を持った僕はそれを裏切ることは出来ないんだ

北の果て

北の果て

此処はいつだって冬で、白と青色が総てを支配する、針葉樹だけが背高く茂って、その葉は凍ってきらきらと美しひ、私は一枝手折って花瓶に飾る、慰み、近くには高ひ崖が在る、その下には氷河がゆらめいて居る、年に何人かが遠く此処までやって来て、飛び降りる、屍は漂ひ沈んでゆく、綺麗なお伽噺、海へ水を汲みに往く、それはたれかが死んだ水だ、私はそれをスウプにして朧げに弔ふ、こんな北の果てまで来るなんて、寂しひ事ね、狭

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海

海辺に不法に住み着いた僕等は、流木とトタンや何かで仮の住処を作り、いつか花屋を開きたいねなどと話している、夢を見るのも終わりにしなければいけない、この世界はとうにデッドラインを超えているのにね、君は朝パンを焼く、僕等の下らない日常は未だ此処に在る、けれどいつかは大きなおおきな波に飲み込まれてしまう、途方もない大きな力だ、世界は終わってゆく、そして、最期には海だけがしづかに残るーーー。

苦しみと生を行き来して

苦しみと生を行き来して

靑生ふゆです。
最近は右脚を壊して、全然歩けず、何処にも行けずにいます。
身体の不安が他の多くの不安を呼び、殆どの時間を苦しみのなかに居ます。
けれど絵は描いています。
そういった気持ちをぶつけているので、苦しい絵になっていると思います。
でも、そんななかでも一度封印した、太陽を描いたりもしています。

思えば、絵をちゃんと描き始めたのも何もかも失くしたときでした。
虚しい、虚しいけれど、死んでし

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こゝろの特別な場処

こゝろの特別な場処

何もいらない

誰かの、あなたの、その美しいこゝろのなかの特別な場処を少しだけ脈打つ鼓動で動かせたなら

そういう絵が、詩が作れたら

それだけで

靑生ふゆ

生きる為の絵

生きる為の絵

一日に一枚か二枚絵を描く以外は、体調不良で何もできずにいる。
とにかく身体が動かなくて、何処にも行けずにいる。
文章を考えられないくらい頭も働かなくて、殆ど何もしていない。
ずっと身体も精神も不調なままいつからか過ごしてきて、寝たきりの期間もかなりあった。
ときどき元気になると今度はハイになりすぎて問題を起こしてしまう。
びっくりするほど生きていくために必要なことが何ひとつまともにできない。
壊れ

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