マガジンのカバー画像

宇宙文学

10
宇宙の詩、小説まとめ。
運営しているクリエイター

記事一覧

イオ

イオ

都市を渡る星空間シャトル
始祖鳥の尾羽
僕はけふ十三に成りました
[nl057便をご利用の皆さま…]

海はとうに干上がり、人々はかなしみの余りステーション建設に勤しんだ。ひとつの球体と燻鼠色の長方形の胴体を持ったステーションは、他の星々に遜色ない出来映えで、TVショウでその様子が映されると皆毎日のようにそれを喜んだ。

(スムーズな乗降にご協力ください)
音を発さないアナウンスが響き渡ってーーー

もっとみる
僕達は何処迄も行ける

僕達は何処迄も行ける

九月の残暑に氷菓を頬張る僕達は小さな窓の内から不意に何処迄も行けることを知る、この足が縺れてもこの手が震えてもいつだって僕等は信じ切ることが出来る、美しい世界の陰と絶え間ないひかりにうたをうたう、手を叩いて先頭を行く僕で居よう、君も巻き込むよ、屹度ブラックホールを丁度抜けたところ、光の速度でこの道をゆかふよ

宇宙に浮かんでいると 割れた鈴の音が聞こえて いつかの波の行き来を思い出し 空気も水もない幾万光年を 僕は目を開けて揺蕩う

お祈りひとつ手と手で潰して宇宙の端まで一緒に行こうよ

嘆きの海

嘆きの海

 此処は月。
 幾光年を越へて、やはり僕は戻ってきた。そう思って居たよ。
 独り乗りのグリーンライト製宇宙船は故障している。月に暫くは暮らす定めだ。
 僕はカプセルスイツのジップをしっかり口許迄上げ、立ち尽くした。方々を見る。
「美しひところには、いつも海があるナア。」
呟く。
 凹凸が成した沢山の海。月の海達。
 今僕は、そのうちの一つの砂浜に立っている。嘆きの海。昔の人は幾分も詩的だったのだな

もっとみる
本当の星の話

本当の星の話



 モン氏は帰路についていた。月は細く、不安になる。三億光年の旅がやっと終わったというのに。
 モン氏の帽子はボロボロになって、足は痛いが、家に帰るのだ!三億光年と二歳になった鼠が待っていてくれる筈だ。モン氏はそれを考えると目を細めた。
 この長い間、ずっと本当の星を探していた。
 それはモン氏がかつて生活をしていた、この青い月が上る惑星でもなく、どんな美しい星々でもなく、流星群でも、小惑星群で

もっとみる
宇宙

宇宙

スクエアホールから宇宙の果て
死んだ身体レッドライト点滅
あいはゴミ溜めの中
花咲く春の夢を見る

生活は儘ならない
一日さえも耐えられない
届かない手

たましいは浮遊している
捜している
人体模型、怪獣、芋虫

シリアルキラー
ペンギンの隣
8+1+2

スクエアホールから宇宙の果て
死んだ身体レッドライト点滅
あいはゴミ溜めの中
花咲く春はとうに過ぎて

待たない季節
嫌いな音楽
無駄な感情

もっとみる
同じ色の星を見ていた

同じ色の星を見ていた

同じ色の星を見ていた かつても今も 名前のない色 終わりのような色をした 幾百億光年先の もう無いかもしれない星 それはもしかしたなら互いに見間違いで 宇宙には見知った星しかもう存在しないのかもしれない けれど僕達は探している いつだって 同じ色の星を見ていた人 この銀河の淵にいる 何処にもいないかも知れない人を 星座を踏み違えて 落っこちていって その先でも 探す 君を 君だけを ひかり だって

もっとみる
第三宇宙ターミナル

第三宇宙ターミナル

 月と木星間を往復するシャトル便137号に乗っている。渦巻状に配置された座席の内側の方、N54が僕の座席だ。
 中央部に立った円柱型ロボットが機械音を発した。
「リーーー…通信中。この便は行き先を変更し、第三宇宙ターミナルへ向かいます。」
 真空睡眠状態にあった乗客が目覚め始める。N55、僕の隣で眠っていた君も。
「睡眠が切れないわ。どうしたの?」
「アクシデントみたいだ。今日は月へは戻れそうもな

もっとみる
3,2,1

3,2,1

宇宙交信局、応答セヨ
[ツー…ガジン。]
僕等はクレーターの上歩き
学校へ行く
光の黒板、蟲の文字
交差する声、声、声…
(ねえねえ。)
(あの子が死んだって知っているかい?)
ペットのヤミヤミ連れて
花を摘んで宇宙遊泳
[ガウガウ!]
炭素になった花びら宙を舞いーーー。
ラヂオは放映する
君のこゝろの中迄も
マザーは総て知っていて
僕は空気の吸い方を知らない
(永遠の窒息。)
塔へ征くんだ!

もっとみる