工場地帯
工場地帯を抜けてゆく猫は当たり前に錆色をしている、鉄錆の混じった水をいつも飲んでいるから、やけに大きな赤い月、佇む重機たちの姿、僕が好んでこんな処に住んでいるのは、夜がこんなにも綺麗だからだ、乱視のひとみに乱反射するライト、ライト、ジリリ、レーザー、レッド、グリーン、ガガ、ブルー、探し物をしていた、永遠に見つからない落とし物、錆猫がネジをひとつ吐いた、工場地帯は海に近く、機械音と汐風が重なって、僕は眩暈がした、あの大きなコンテナなんかに入り込んでしまって、誰にも見つからないうちに、何処だか何も知らない国に行きたい、錆猫を抱き上げた、よく知っている鉄の匂いがした。
おたすけくださひな。