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お花見note🌸🌻

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2021年。お花見企画【春】【夏】投稿作品をまとめています。次回の開催もお楽しみに!
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2021年4月の記事一覧

お花見企画*投稿記事まとめ③

お花見企画*投稿記事まとめ③

2021年3月15日から約1ヶ月半に渡り企画させてもらっていましたお花見企画『小説noteでお花見』。①・②に引き続き、これまで投稿頂きました素敵な作品たちを順に紹介させていただこうと思います。(マガジン追加順での紹介となります。)

■あこはるか 様 / 花の一枚28pickup▶︎▶︎ この季節になると、思い出すヤツがいる。

■もつにこみ 様 / めぐるpickup▶︎▶︎ 満開の桜よりも、

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【小説】noteでお花見

【小説】noteでお花見

風がひとひらの花びらを運んできた。私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。畑仕事の手を休め、風上へ顔をむけると訪ねてきたのは山のふもとに住むおばあだった。

(上記の続編になります)

無造作に新聞で包まれた桜はそのほとんどが姿を見せている。

「わぁ!綺麗。どうしたんですか?」
「お土産ぇ。うちの山に咲いてたんさ、こっちの桜はまだやろう?」

いつもなにくれと世話を焼き、それでいてほどよい距

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短編小説:月下の花見、私の彼氏

短編小説:月下の花見、私の彼氏

 羽のように軽い風が、ひとひらの花びらを運んできた。私は髪に付いた桃色のそれを、指でそっと摘む。ああ、今年もこの季節が来てしまったか。冬から春へのちょうど変わり目の時期は、それまでの気温がまるで嘘かのように体をポカポカと温めてくれる。たくさんの人たちが新しい気持ちで始まりに臨むことだろう。その中で、私の心だけがひとつ置いてけぼりにされてしまうのだ。

*

 私の家族は母と父と私、それから母の父に

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故郷の桜@小説noteでお花見

故郷の桜@小説noteでお花見

#お花見note

4月30日までのこちらの企画に
もう一度参加させて頂こうと思います

***

風がひとひらの花びらを運んできた。
私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。

河川沿いの桜並木と河の上を泳ぐ鯉のぼりが映し出される画面の下に流れる文字が、音楽に合わせ色を変えてゆくのを目で追いながら

「この歌、カラオケがあったんだ」とつぶやいていた

「はっ? 部長 何言ってんですか 自分で

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【noteでお花見】桜 ワンシーン小説

【noteでお花見】桜 ワンシーン小説

yuca.さんの『小説noteでお花見』に参加させて頂きます^^

指定の冒頭と最後
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風がひとひらの花びらを運んできた。私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。
《フリー》
満開の桜を眺めた。
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を使って小説のワンシーンを書く。ということで、
さっそくこちらを書いてみました!

風がひとひらの花びらを運んできた。私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっ

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桜が無い世界

桜が無い世界

風がひとひらの花びらを運んできた。私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。

これが、桜の花びらなのか。

2050年に生まれた私は、桜を知らない。

なんでも、2040年ごろに桜が枯れてしまう木の病気が流行ったのだという。

ソメイヨシノだけではなく、山桜も、寒緋桜も、河津桜も、“桜”とつく木は全て枯れてしまう奇病であったそうだ。

日本人にとって桜は、風物詩を超えて、象徴のような存在でもあ

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【小説】noteでお花見

【小説】noteでお花見

風がひとひらの花びらを運んできた。
私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。

桃、梅、桜、足元では水仙が咲いている。
長く厳しい冬を超え、雪深い寒冷地に訪れる春。

冬の間はまるで枯れたかのように見える枝先にほんのり、しかし確実に色がおびる。

一雨ごと、山は息をふきかえす。

植物たちもその訪れを待っていたかのように一斉に花が咲き誇る。

ああ、春だ。山にもやっと春が来た。
長らく待ち望ん

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お花見企画*投稿記事まとめ②

お花見企画*投稿記事まとめ②

2021年3月15日から企画させてもらっていますお花見企画、『小説noteでお花見』ですが、おかげさまで沢山の方にご参加いただいております。本当にありがとうございます。

①に引き続き、これまで投稿頂きました素敵な作品たちを順に紹介させていただこうと思います。(マガジン追加順での紹介となります。)尚、まとめ記事では10作品ずつの紹介とさせていただきます。

■たけひろ・しんじ 様pickup▶︎▶

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櫻の花は今が盛り(ショートストーリー)

櫻の花は今が盛り(ショートストーリー)

風がひとひらの花びらを運んできた。私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。

「…ん…」
私の指の気配に気付いた彼が、少し顔を歪ませた後、薄く目を開けた。
「あ、起こしちゃったね」
私はそう言い、自分の太ももの上にのった彼の頭をゆっくりと撫でる。
「桜の花びらがついてたからとったのよ」
「そっか…俺、ずっと寝てたんだね」
彼は呟いて、大きなあくびをした。うららかな春の日差しが、彼を優しく包んで

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【企画作品】ハナミチ

【企画作品】ハナミチ

風がひとひらの花びらを運んできた。私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。見上げれば、溢れんばかりに咲き誇る桜。一方で、足元には儚く散った花びらたちの姿があった。散り積もったそれさえも、景色を彩る大切な一部であるかように感じてしまうのは、私が春を待ち望んでいたからなのかもしれなかった。

大きなキャリーケースを引っ提げて、私は駅の方へと足を進める。憧れていたウエディングプランナー。長年描いてき

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寅吉とじいちゃんの約束【ある春の物語】

寅吉とじいちゃんの約束【ある春の物語】

風がひとひらの花びらを運んできた。

私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。

そして、寅吉の頭の上に置いてみた。

うん。よく似合う。

寅吉は、じいちゃんが飼っている柴犬だ。

正確に言えば、“飼っていた“柴犬だ。

今日はじいちゃんの葬儀で、朝から母さんと叔母さんが準備に追われている。
もうすぐばあちゃんも施設から一時帰宅するそうだ。

私はなんだか居場所がなくて、大きな桜の木が鎮座す

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さくらひとひら

さくらひとひら

風がひとひらの花びらを運んできた。

僕は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。

君は気づくことなく、全身で桜の季節を感じている。

僕は、君とキミのうしろ姿を、春の陽射しのように穏やかな気持ちで見ている。

「来年は、3人で見れると良いね」というと
「来年"も"だよ」と、お腹をやさしく撫でる。

「さくら、きれいだねぇ!」とキミが笑う。

右手はパパ、左手はママと繋いで、生まれてから3度目の

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めぐる

めぐる

風がひとひらの花びらを運んできた。

僕は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。

慣れない頃、何本かの髪の毛と一緒に摘んでしまって、引っ張ってしまったのが懐かしい。

そんな時、痛みはなくて、帽子がずれてしまうような感触にドキッとしたものだ。

いま僕は、抗ガン剤にはよくある副作用の影響で、カツラを被っている。元の髪と似せた、濃い黒のくせっ毛のカツラだ。

ただの風邪だと思ったら、ガンだった。

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花の一枚 28

花の一枚 28

風がひとひらの花びらを運んできた。

私は、髪に付いた桃色のそれを指でそっと摘む。そして、それを夜桜見物のために桜の木の下に置いてあるライトで照らしながら、じっと眺めた。
「儚いものだな・・・」

この季節になると、思い出すヤツがいる。
ヤツの名は、祐二。祐二の兄は祐一。奴は二番目に産まれたからそう名付けられたが、俺はそれが気にくわねぇといつも言っていた。

祐二は、小学生の時からの幼馴染みであり

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