記事一覧
【つれづれ】物語を手放した
目標にしている作品づくり。
「書き続ける」
呪文のように唱えているこの言葉。
なんとか、かんとか、書いて、手放すことができた。
今年は二作品を書いてみた。
おんなじような話になるんじゃないかなあと思ったけど、結果、そうなったと思うけど、まあそれも勉強のうちと思うことにしよう。
あー、やり遂げた解放感でいっぱい。
深みに到達はしたかどうかはわからない。
まあ、とにかく、やり遂げた。
それだけ。
【読書メモ】「魯肉飯のさえずり」
kindleを始めてから最初に購入した本である。
いつだったか、新聞の書評欄で読んでからずっと気になっていた。
というのもルーロー飯が美味しいから。
確か、二度目に台湾に行った時、友達が連れていってくれた食堂で初めて食べたと記憶している。
地元の人しか入れない、入りづらい、丸椅子の置かれていた食堂だった。
大きめのご飯茶碗にたっぷりとかかった甘辛い豚肉の独特の香辛料が後を引く美味しさ
【読書日記】路(ルゥ)
初めて行った海外はイギリスだけれど、リピートした国は台湾だ。友達が住んでいるのもあるけれど、この「路」のヒロインと同じく、私も金城武ファンということもある。彼のポスターが貼ってあるという理由だけでわざわざ友達にその店に連れて行ってもらい、呆れられたものだ。
このストーリーは、台湾新幹線にまつわるドラマである。海外でのプロジェクトチームの苦労、異国で暮らす時間、家族、恋人、さまざまに折り重なる
【読書日記】「私の世界文学案内」
「ライ麦畑でつかまえて」「車輪の下」「にんじん」「朗読者」……。
多分読んだとおもう世界文学を並べてみた。
私の読書体験は小学生の頃、ルパンシリーズから始まっている。次はホームズにいって、世界文学全集のようなセットをかってもらって、小公女、トムソーヤ、ガリバー、海底2万マイル、ああ、確かに子供の頃は世界文学をよく読んでいたなと思いだした。
大人になってからも、ポアロは読んだ。「モモ」は読
【ショートストーリー】忘れ物はしていいの
パッキングは1週間前から始めると決めている。
前日でいいんじゃない、とは同居人のセオリーらしいが、どちらかといえば猫派、ラーメンは絶対に豚骨、時計はデジタル表示と趣味嗜好がマッチする私でも、こればかりは賛同しかねる。
パッキングは早すぎても、ぎりぎりでも「うまくいかない」のだ。
たとえば二年前の観劇の旅は、チケットの抽選にやっと当選して何ヶ月も前から楽しみにしていたので、一ヶ月前には小さ
【読書日記】「深い河」
「インドに行ったら人生が変わる」
今のところそのチャンスは残念ながら巡ってきていないが、この川はガンジス川のことだという。
パンデミックになって、ニュース映像で遺体を焼いているのをみたので、想像しながら読み進めることができた。
行き着くところまで行きつかず、ちょうど良いところでやめて、壁があったら引き返す。そんなふうに暮らしてきているなあと思うことがある。
もしも、私も大津のような人
【ショートストーリー】こんなはずじゃなかったの
ご祝儀袋は引き出しに常備している。といっても、先月、部長のお母様のお葬式で香典返しに入っていたのを引きだしに放り込んでいただけだ。
三つ折り財布の中には、不格好に折れ曲がった一万円札が一枚。
今日はこれだけしかない。
反対に折り曲げてしわをのばしながらキーボードを叩き、社内チャットで同僚にメッセージを送信する。
《私は一枚にしたよー》
《総務の子たちも一枚だそうです!》
仕方ない
【つれづれ】The reason why •••
英語の学びなおしを始めてから3年が経過した。
きっかけは職場の福利厚生を利用することが出来るようになったから。
何人かの同僚が仕事終わりにオンラインで英会話を楽しそうにやっているのを見て、やってみたいなあと思ったのだ。
第一回目のレッスンを思い出す。英語で会話するのが怖くて、聞かれることがわからなくて、とりあえず知っている単語をつないで身振り手振りで、「なんていうかなー」「あれあれ」「えーっ
【短編小説】ここできめたい
まっすぐに見られていた。
タオルで汗をぬぐっているけれど、視線は外さない。
私を見ている。
後ろを振り返ったり、左右に首を振ったりして 他に誰か居るのではないかと まわりを探してみる。
誰もいなかった。
——私を見ているんだ。
私は2階の観客席にいる。10列ほどある席の前から5列目の真ん中あたりに座って、体育館のアリーナにいるあいつと、側からみれば、見つめあっていたのだと思う。
全国
【ショートストーリー】Early Autumn
鈴虫が鳴いている。
チリチリ、チリチリ。
一瞬できた電車の音の隙間に入り込んだ。
カーテンを少し開けた外は、街灯のぼんやりとした明かりが月のない夜を照らす。
虫の声にチリリリリ、チリリリという音が重なった。
静けさが深まってゆく。
私はカーテンをきっちりと閉めてベッドの端に腰掛ける。
ビョン。
マットのスプリングが縮む。
視線の先には、クローゼットから出したマロン色のシャツが掛かっている。