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岸田ひろ実さんについて

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岸田ひろ実さん(大阪府生まれ)に関する記事です。 以下は、まず読んで頂きたい記事です。 弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった https://note.kishida…
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記事一覧

今日は堂々と勇ましく、そして明日は墓の前

今日は堂々と勇ましく、そして明日は墓の前

実は2年ほど、祖父母の遺骨がどこにあるか知らなかった。

父、父の兄、父の母、父の父という順番で亡くなったので、父方の家族はみんないなくなってしまった。

大工をやっていた祖父は、仕事中にノーヘルで屋根から落ちて大怪我をしてから入院を繰り返し、最期の10年は病院でほぼ寝たきりだったから、

「やっと四人そろって、チャーハンでも囲めてるんやろか」

火葬場からのぼる煙を見て、呑気に思った。

甲子園

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家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

私が住んでいる東京という大都会に、母と弟が来た。
ひろ実と良太が来たとも言う。

母からのリークによると、新幹線の中で、弟は何度も「奈美ちゃんは?奈美ちゃんは?」と、母に聞いていたそうだ。

なるほど、なるほど。
それはそれは猛烈な歓迎を受けるに違いないと、相応の準備をしていたら。

弟に真顔で「よう」と言われた。
ちょっとちょっと。話が違うじゃないか。

弟心は、秋の空ほど移り変わる。

さて、

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国道沿いで、だいじょうぶ100回

国道沿いで、だいじょうぶ100回

子どものころ、大人気のお歌があった。

「奈美ちゃん、奈美ちゃん、どっこですか〜♪」

先生が歌えば、

「ここでっす、ここでっす、ここにいます〜っ♪」

子どもらは大喜びで、返事をする。

母が歌う。

「良太くん、良太くん、どっこですか〜♪」

弟はいつもどこかにいたけど、それは絶対に、ここではなかった。

ジッとしてられない弟だった。
だまってられない弟だった。

保育園でも、小学校でも、歩

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誕生日の願いごとは全部、君にあげるよ

誕生日の願いごとは全部、君にあげるよ

弟はかつて、ガラスを割った罪をなすりつけられたことがある。

弟が14歳のときだった。

中学校が終わっても、弟がちっとも帰ってこない。

「ちょっと見てきたって」

母に言われ、わたしはしぶしぶ靴を履いた。マンションのエレベーターに乗って、一階エントランスで降りたら。

制服を着た弟の背中が見えた。

おるんかい!

でも、なにやら様子がおかしい。

弟が立っているのは、ちょうどエントランスのイ

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空堀商店街の軒先を借りるから、知恵を貸しとくれ

空堀商店街の軒先を借りるから、知恵を貸しとくれ

いろいろトンチキかつスケールがでかいことが、三件、同時並行してまして。

「100万円お渡ししたら、商店街の軒先を借りることになった」

「大阪の谷町にある、ばあちゃんの土地と家を売ろうとしてる」

「遺産と印税ぜんぶ使って、じいちゃんが愛した阪神タイガース戦の冠協賛をしたい」

これだけお金の出入りが重なってくるとね、わたしをよく知っているみなさんの脳裏に浮かぶ言葉は「うっかり脱税でテレビ報道」

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長いこと入院すると、母は知らない人になる

長いこと入院すると、母は知らない人になる

入院というのは、人をここまで豹変させるのかと、恐れ慄いたことがある。

15年前、母が大学病院で入院していた。

重たい心臓病をいきなり発症し、手術で一命をとりとめたものの、下半身に麻痺が麻痺し、さらには病院のベッドで床ずれを患ったため、1年半も入院が長引いてしまった。

明るくて温和な母も、さすがにこたえて溜め息をついていた。

「奈美ちゃん、ごめんなァ……。もうすぐ誕生日やのに、ご飯もなんも作

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9月の振り返り〜絶賛、本つくり中〜

9月の振り返り〜絶賛、本つくり中〜

こんにちは!吹けば飛ぶような、岸田奈美です。

9月にやったこと、書いたことをまとめました。

姉のはなむけ日記が完結、本づくり進行中およそ5ヶ月にわたってnoteに書き続けていた、“ダウン症の弟がグループホームに入居するまでの話”が終わりました。

無事に送迎車も買え、弟もグループホームに入居できたということです。

更新期間中にキナリ★マガジンを購読してくださった人のうち、希望する人にはお名前

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ばあちゃんの再来と蜃気楼

ばあちゃんの再来と蜃気楼

ばあちゃんと、会うことになった。

怖い。
なんせ、ばあちゃんと会うのは4ヶ月ぶりである。

それまでは、毎日朝から晩までリビングを陣取り、クリストファー・ノーラン『ダンケルク』IMAX上映とタメ張れるほどの迫力轟音でテレビをつけ、手をたたいてヒャーッヒャッヒャッと笑うばあちゃんと、毎日、顔をあわせていたのに。

隣の部屋にいても、山田くんが座布団持っていく足音が聞こえた。客席がウケるたびに爆撃の

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ぐちゃぐちゃのお子様ランチ(姉のはなむけ日記/第9話)

ぐちゃぐちゃのお子様ランチ(姉のはなむけ日記/第9話)

近隣住民の人に、管理責任者である中谷のとっつぁんが早速、話を聞きに行ってくれた。

「車、いつ乗れるんかなあ」

そんな緊迫した状況はつゆ知らず、弟は別府の温泉でホクホクになっていたのだった。

ポペンッ。

スマホの通知が鳴る。中谷のとっつぁんからだった。障害者は気持ち悪い、という言葉が蘇ってボディーブローをくらったような心地になったわたしは、スマホを触るまで一度えずいた。グエェ。

「事情を聞

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自分を信じることができれば、怖いものはなくなる〜岸田ひろ実のコーチングな日々〜

自分を信じることができれば、怖いものはなくなる〜岸田ひろ実のコーチングな日々〜

新しことを始める時、環境を変える時、何かを手放す時。
不安や怖さを感じて行動することができない。そんなネガティブ思考になることはありませんか?

それって実は、ごく自然なことなのです。
なぜならネガティブ思考は人類の進化に必要なものだから。

原始人が危険から身を守り、安全に生き残るための必要なツールが、不安、恐怖心というネガティブ思考だったのです。もし原始人がポジティブ思考だったら、人類は生き残

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家族より他人の方が話は早い

家族より他人の方が話は早い

朝日新聞社さんが2022年5月5日の子どもの日に発行する『未来空想新聞』で「家族の未来」をテーマに、エッセイを書かせてもらいました。

紙面には「家族を愛する、距離を愛する」と題して1,000文字で載っていますが、みなさんすでにお察しのとおり、性懲りもなく3,000文字近く書いてしまったため、ノーカット版を公開します。

ユニークな機会に感謝するとともに、新聞をきっかけにみんなで話してみようね〜と

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姉弟関係はいつもギリギリで森田一義アワー(姉のはなむけ日記/第4話)

姉弟関係はいつもギリギリで森田一義アワー(姉のはなむけ日記/第4話)

その晩、実家から弟がわたしに電話をかけてきた。

「どうしてん」

「あのな、車、ないねん」

「え?」

「車、ないねん」

「なんて?」
このときわたしは、実家のボルボがパクられたのかと思った。

大事件やないか。いや、でもそれやったら、弟じゃなくて、オカンから連絡くるよな。なんで弟なんやろ。

まさか、オカンが乗ったままパクられた……?
警察の二文字が頭をよぎった。弟が続ける。

「グル、む

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全財産を使って外車買ったら、えらいことになった

全財産を使って外車買ったら、えらいことになった

12月19日 追記
こちらの記事が、とんでもねえ経緯と熱量で、英語ほか10言語に翻訳されました!
英語翻訳された奇跡の舞台裏note
英語翻訳版の記事

全財産の内訳は、大学生の時からベンチャー企業で10年間働いて、したたり落ちるスズメの涙を貯め込んだお金と。

こんなもん、もう一生書けへんわと思うくらいの熱量を打ち込んで書いた本の印税だ。

それらが一瞬にして、なくなった。

外車を買ったからだ

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子どもの言動の全ては、注目されたい、愛されたいから〜岸田ひろ実のコーチングな日々〜

子どもの言動の全ては、注目されたい、愛されたいから〜岸田ひろ実のコーチングな日々〜

わたしは一人っ子です。

「きょうだいがいなくて寂しいね」と、何度となく言われてきたけれど、寂しいと思ったことは一度もありません。

いたはずのきょうだいが、いなくなったとなれば話は別だけれど、最初からいないので、何がどう寂しいのか比べようもなく。

私の感覚では、寂しいどころか、親の愛情は独り占めできるし、欲しいものを取り合うことも我慢することもなく。どちらかというと良いことしかありませんでした

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