ユマケン

2010年『カミナリラヴァー』(幻冬舎)の出版のデビュー作オンリー作家。noteでは短…

ユマケン

2010年『カミナリラヴァー』(幻冬舎)の出版のデビュー作オンリー作家。noteでは短編小説を上げつつ、いつのまにかベーシックインカム推進論の元で学術書の書評ばかり書くようになりました。お金のない世界を夢見る方もそうでない方も、どなたもお気軽にお立ち寄りください。

マガジン

  • アソシエーションにも必要なベーシックインカムの強烈な一撃

    斎藤幸平著『ゼロからの資本論』のレビューと合わせて、ベーシックインカムを軸にした改革論を書きました。BIの賛成派も反対派もどなたもどうぞお越しください。どんな意見も歓迎します。

  • お金と政治のない世界を想像すること『人新生の「資本論」』書評

    本書のレビューを3回に渡ってお届け。資本主義の大いなる弊害、どうやれば資本主義から抜け出せるのか、選挙参加だけの政治主義からアクションへの飛躍など、をテーマにしています。どなたもどうぞお越しください。

  • 人は悪人という思い込み『Humankind 希望の歴史』書評

    3回に渡る書評です。性善説としてバカにされがちな善良な人間観をリアルに持つことがいかに世界を根本的に変えるのか。目が覚めるようなブレグマンの人類の歴史観を私的な解釈と共にまとめました。どなたもどうぞお気軽にお越しください。

  • ベーシックインカムの大いなる可能性~『力と交換様式』書評

    柄谷行人著『力と交換様式』の書評を通じて、ベーシックインカムの可能性を探る3回シリーズになります。難しいことをできるだけ分かりやすく書いたつもりなので、学術本に慣れていない方でもお気軽にお越しください。

  • オーウェル『1984』書評~ビッグブラザーから導き出す希望

    オーウェルの名著『1984』の4回・12章に渡るブックレビュー。権威主義が永続化する未来を洞察した著者の読み切れなかった点、また私なりの希望を書きました。読んだ方も読んでいない方も、どなたもどうぞお立ち寄りください。

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Show must Never go on, 去るべきタレント、残される思い出~ジャニーズ性加害事件ジャーナル(後編)

Show must Never go on, 去るべきタレント、残される思い出~ジャニーズ性加害事件ジャーナル(後編)

前編(↓)

4:犯罪を知りながらその会社でボロ儲けジャニー喜多川の性加害事件の事務所会見から10日以上たつが、日本のマスコミはジャニーズ・タレントたちの擁護を一斉に始めた。前編の冒頭にも書いたが、その勢いは加速している。

タレントに非はないのでスポンサーは広告契約を切るべきではない。
タレントにも被害者がいるので事務所はそのケアにも当たらねばならない。社名変更はタレントたちの意見も聞いた上で決

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大谷スキャンダルに潜む最側近の殉教者とカルト日本史

大谷スキャンダルに潜む最側近の殉教者とカルト日本史

(前編)

4:裏切りで守ろうとした神聖な絆大谷翔平の元通訳・水原一平が起こした違法賭博スキャンダルについて2シリーズで論考している。

私はその根源に、カルト的な文化があると考えている。アメリカの違法ブックメーカー、日本のマスコミによる大谷現象、そして大谷に献身的な水原の姿にはすべてカルト的な色合いがある。

水原一平の立場で見ると、私はこのスキャンダルが次の6つの段階を踏んだと推測する。

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水原一平の違法賭博スキャンダルの根源にあるカルト的な大谷現象

水原一平の違法賭博スキャンダルの根源にあるカルト的な大谷現象


2024年のMLB開幕戦の翌日に報じられた大谷翔平と水原一平の違法賭博スキャンダルは日本と全米を大いに騒がせた。

私はその根源にカルト的な文化を見出した。

それは違法賭博が用いるカルト的な手法でもある。が、それ以上に日本のマスコミが扇動する大谷翔平のカルト的な熱狂と共に、水原が大谷をカルト的に崇拝していた可能性を意味している。

騒動から1週間後、大谷は会見を開き賭博との関わりを全否定。水原

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ジャニ―喜多川の性加害で最も悪質なのは所属人気タレントである~ジャニーズ性加害事件ジャーナル(前編)

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1:問題解決に必要な悪のランキングジャニーズ事務所がジャニ―喜多川前社長の性加害について謝罪会見をしてから1週間が過ぎる中、マスコミがまた異様な報道を始めた。

スポンサー企業がドミノ式にジャニーズ・タレントの広告起用を止める中、テレビメディアがタレントに罪はないと一斉に擁護し始めたのだ。
その波に乗ってか、ジャニーズ事務所は今後1年間、広告料はすべて所属タレントに直接渡すという声明を出し、タレ

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資本の深い眠りから人類を叩き起こすBIの強烈な一撃~『ゼロからの資本論』書評(後編)

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3:BI否定論者に共通する人間不信斎藤幸平は財政と政治の面で実現するのが困難だとしてベーシックインカム(BI)の可能性を否定している。

BIもピケティの再分配も富裕層への大増税が必要であり、そうなれば資本のストライキが起こり、お金が外国へ逃げて行ってしまうと見ている。

だが、BIは国債の大量発行、つまり大借金でも実現できる。つまり大増税抜きでも実現できるため、資本のストライキのリスクはない。

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脱資本主義に必要なベーシックインカムの強烈な一撃~『ゼロからの資本論』書評(前編)

脱資本主義に必要なベーシックインカムの強烈な一撃~『ゼロからの資本論』書評(前編)


斎藤幸平『ゼロからの資本論』(2022)を読んで得られた最大のものは、ベーシックインカム(BI)の大いなる可能性である。

しかし同様に感じた読者は少数だろう。
斎藤幸平は本書でベーシックインカムやピケティの再分配論やMMTをマルクスの言う法学幻想だとして軽視しているからだ。

これは前回ここで書評した柄谷行人『力と交換様式』(2022)の読後と全く同じ状況だと言える。BIが簡単に否定されたこの

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国家権力を長期的に弱体化させるベーシックインカム~『力と交換様式』書評③

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6:交換に伴う霊力に見るペシミズム柄谷行人は本書で初めて交換様式Dについて本格的に取り上げたというが、具体的な明言はない。例として、大昔の遊牧民族の生活様式やキリストなど世界宗教の原初のあり方に重ねているだけだ。

そして他の交換様式ABC同様、人と人との交換に伴う観念的な力がDにも働いて人を従わせると見ている。それが本書の題にもある『力』であり、本文では霊的な力・呪力・物神・フェティシズムなどと

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性善説に基づけばベーシックインカムは国家と資本を克服する~『力と交換様式』書評➁

性善説に基づけばベーシックインカムは国家と資本を克服する~『力と交換様式』書評➁

3:こどもの純粋交換に見る救い柄谷行人が言う資本=ネーション=国家を克服する交換様式Dについて、僕が考えるそれはこどもが行う純粋な交換になる。

それは友愛に基づく主観的な交換である。お互いの感性や感情や価値観などで成立する交換であり、無条件に相手に与えるだけの交換もふくむ。この点で半強制的な返礼をはさむAの贈与とは異なる。

違反は略奪と損得勘定だけだ。力で独占すること。そして貨幣のような客観基

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交換様式Dの入り口としてのベーシックインカム~『力と交換様式』書評➀

交換様式Dの入り口としてのベーシックインカム~『力と交換様式』書評➀

だが、そんな思いに至った読者はほとんどいないだろう。柄谷自身も本書で1度ベーシックインカムに触れているが、社会主義革命を掲げたロシア革命の失敗を例に出して取り合っていない。

『力と交換様式』のベースには柄谷哲学の中枢にある“資本=ネーション=国家”という世界観があり、柄谷は交換様式Dによってこの歴史的な悪循環を克服できると説く。

僕にとってそのDの入口はBIである。アメリカや北欧の社会実験の成

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30年目に見出した終盤の根本的な大転換~『セーラー服と機関銃(1981)』評

30年目に見出した終盤の根本的な大転換~『セーラー服と機関銃(1981)』評

 あまりに好きになると、それを深く理解できなくなる。多くの場合、その最大の理由はネガティブな面を見ようとしないからだ。そしてそこには否定的な一般論を浅はかなものと決めつけて軽視することも含まれる。

 私にとって映画「セーラー服と機関銃(1981)」は邦画・生涯NO1の傑作だが、一般的には薬師丸ひろ子のアイドル映画だとも言われる作品である。

 私はこの一般論をバカにしてきたため、この映画の真価に

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お金と政治のないリアルな未来ビジョン~『人新生の「資本論」書評③』

お金と政治のないリアルな未来ビジョン~『人新生の「資本論」書評③』

6: 三つの批判点私には本書に次の3つの点で不満がある。

資本主義をシステマチックに捉え、政治的な糾弾が足りない事。

まず精神的なレベルで資本主義を克服するという意識の薄さ。

資本だけでなく政治や国家を克服する未来のビジョンがない事。

著者・斎藤幸平は本書で資本主義の背後にある人間性を解き明かすことはしなかった。この欠如によって、まるで利潤を最大限に追求するシステムがどこからともなく降って

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政治主義からアクションへの飛躍~『人新生の「資本論」書評➁』

政治主義からアクションへの飛躍~『人新生の「資本論」書評➁』

3:政治は何も改革しない本書の1番のメインテーマは、気候危機の克服ではなく脱資本主義にあると言える。これによって最初にもたらされる一大成果として環境問題の解消があるに違いない。

斎藤幸平は脱資本主義を実現させるために労働と生産の民主的な制度改革を訴えている。政治経済改革でも消費行動の変容でもない。働き方と作り方という社会の始点を変えることが、変革の波を生み出すという事だ。

ここが本書の最もユニ

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貧困と欠乏の元にある資本主義~『人新生の「資本論」』レビュー➀

貧困と欠乏の元にある資本主義~『人新生の「資本論」』レビュー➀



序章: 世紀を超えて大量虐殺を生む資本主義
『人新生の「資本論」』を読めば、

世界中の人々がこの数百年間に渡って断トツ1位で忖度してきたものがよく分かる。

より精確に言えば、忖度せずにはいられなかったものだ。

学生時代以降は、その忖度なしで社会を生き抜くことはできない。就職や出世や結婚はもちろん、大きな夢を持つことや慎ましく生きることさえも許されはしない。

その正体は資本主義である。

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『Humankind』書評③大勢の偽悪者の中で善良な人間観を持つこと

『Humankind』書評③大勢の偽悪者の中で善良な人間観を持つこと


5:悪目立ちする性悪説はカネと地位をもたらす

 本書には、この2回に渡って書いてきたような歴史がベースにあり、利己的な人間観がいかにして広まったのかが説得力を持って語られる。

 そして、それがリアリズムとして拡散した理由は、権力者のごう慢さだけによるものではないことも指摘されている。

 イースター島の先住民はヨーロッパの侵略者たちによる強制労働や彼らが持ち込んだ感染症で激減することになった

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『Humankind』書評➁ソシオパスと権力構造が始めた恐怖政治

『Humankind』書評➁ソシオパスと権力構造が始めた恐怖政治


3:権力者はどのように生まれたのか

 初回に引き続き、今回も『Humankind』のベースにある人類の歴史観を私的な解釈も交えてひもときたい。

 農耕定住は最終的に人類の最悪の発明とも言えるものを生む。それは国家だ。本書を読み解くと、権力者の成り立ちには2つの見方がある。

 1つは、元々利己的な人間が成り上がったというもの。

 1つは、高い地位がその人をごう慢にしたというもの。

 本書

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『Humankind 希望の歴史』書評➀性善説は仮説ではなくリアリズムだ‼

『Humankind 希望の歴史』書評➀性善説は仮説ではなくリアリズムだ‼

序章

 本書の最後で著者はこんな号令をかけるが、この偉大な名著を締めくくるのにこれ以上ふさわしい言葉はないだろう。

 新しい現実主義とは、人類のほとんどが善良であるということ。しかも生まれながらにして生粋のいい人だということである。
 そんなバカなと思う人は多いだろう。日本でもこれは一般的に「性善説」として未だに仮説扱い、都市伝説とも言い換えられるものだからだ。

 逆に、利己的な人間観、つま

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