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小説

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こちら時空管理局。何らかの影響によりこのアカウント内に小説が発生してしまった。パルス誘導システムを使用して、マガジンに閉じ込めておいた。もし興味があったら見ておいてくれ。以上
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#小説

マルチバース桃太郎

マルチバース桃太郎

昔々、ある所におじいさんとおばあさんが───
おじいさんは芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に───

おばあさんが鬼ババ

すると、川上の方から大きな桃が、どんぶらこ、どんぶらこ、と流れてきました。
おばあさんは桃を拾い上げると、おじいさんのために家に持ち帰りました。さっそく桃を割ると、なんと中から男の子の赤ちゃんが。
おじいさんとおばあさんは大喜びして、さっそく赤ちゃんを解体し始めました。

乱視

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恥ずかしいとき

恥ずかしいとき

おれのコンビニの向かいに、新しくコンビニが建った。おれの店と瓜二つだ。なのに挨拶の一つもない。腹が立ったおれは、向かいのコンビニに怒鳴り込んだ。
「おい、いい度胸しているじゃないか。店長を出せ」
しかし、店内には誰もいない。腹いせに店先に小便でも撒いてやろうと、下半身を露出させていると、向かいの店先ではすでに下半身を露出しているおれがいた。
おれがびっくりしてちびりそうになると、向かいのおれは大量

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変化あり

変化あり

 有名なSNSのアイコンが青い鳥からXに変わったらしい。一度もSNSをつかったことがないおれには全く関係がないのでその日はもう寝ることにした。
 翌朝は気持ちのいい朝だった。
 家の前にある電線にとまった鳥が、チュンチュンと鳴いている。もしやこの鳥がXになっているのでは、と思ったかもしれないがそんなことはない。鳥は気が済むまでチュンチュン鳴くとどこかに飛んでった。
 しかしあまりにも気持ちのいい朝

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不安定小説|ミシシッピアカミミガメ

不安定小説|ミシシッピアカミミガメ

地中から激しく飛び出した俺は、そのまま大気圏を突き抜けて宇宙空間へと出た。多少苦しいものの、なんとか窒息せずにすんでいる。

地球はこんなにも青いのか、と使い古された言葉が、酸素を奪って口から漏れた。大気圏を飛び出した際に、体中に帯びた熱が徐々に冷めていく。途端に、体がブルブルっと震えて俺は大気圏へと再突入を開始した。なんとなく後ろを向くと、東京ドーム3個分の、もしくは、ピンポン玉のような未確認飛

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短編小説|運べボール

短編小説|運べボール

 ナガモトがボールを左前方に蹴り出しすと、それに反応するように相手が右足を前に出した。ナガモトがボールの下をポンと蹴り上げると、相手は一瞬にしてボールを見失ってしまった。そして軽々と相手をかわし、何事も。するとすかさず二人の選手が立ちふさがり、示し合わせたようにスライディングでボールを奪いに来た。さすがのナガモトもこれはかわせず、急いで右サイドにいたダウアンにパスを出した。

 ダウアンは、体全体

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掌編小説|シャンプー

掌編小説|シャンプー

 ガラスケースの中には液体が並々と注がれている。その中心に、数十本のコードとセンサーらしき針が刺さっている脳が浮かんでいた。束ねたコードを辿っていくと大きなモニターがあり、そこには、脳が今考えているイメージと言葉がずらずらと映し出されている。こちらから話しかけることはできない。いったいどんなシャンプーなのか私は気になった。

大超短編小説|ファッションセンス

大超短編小説|ファッションセンス

 ふと、窓が気になった。
 手のひらでカーテンをどけると、暗闇に顔が浮かんでいる。随分と使い込まれたそれは、まぎれもない私の顔だった。その後ろにはガラスに反射した部屋が見える。時計は午前二時過ぎを指して、秒針が逆に動き続けていた。
 丑三つ時か、なんてことを考えていると死んだはずの母親が壁から現れた。さもそこに入り口があるかのように当たり前に入ってきた母親は、生前お気に入りだったヒョウ柄のセーター

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小説|ピンク・ポッド・ペアレント

小説|ピンク・ポッド・ペアレント

[オートログ 5532年15月4日 12:05 ククリリ ラボ棟第27号ラボ]

 ああ、やばい。やばいよな。絶対にやばいよな。確かここに置いたんだよ。置いた置いた。間違いなく置いた。それは覚えてる。確実に覚えてる。で、それを眺めてて……。さっき起きたら、無いんだよ。無いんだよここに。なんで? なんでだろ。テーブルの下には……無いんだよな。無いんだよ。さっき探したよここは。何回も探した。で、やっぱ

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小説|て

小説|て

 田舎は北関東の田園地帯が広がっている辺りになります。

 夏といえば、花火虫取り祭りプール海山川遊び。挙げればキリが無いほどあるものです。私もご多忙にもれず、そんな夏を毎年楽しむ子供でした。朝起きてラジオ体操に参加し、一度帰宅して朝食を食べる。いい頃合いになると宿題もそこそこに、友達と遊びに出かける。こんなことを毎年毎日繰り返しておりました。

 小学5年の夏になると、そこにオカルトが入ってきま

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小説|汗汗汗汗汗汗

小説|汗汗汗汗汗汗

うるさいほど聞こえるセミの鳴き声と、吹き出してくる汗に耐えながら冬樹はホットコーヒーを飲んでいた。イヤホンの音量をいじりながら思う、とにかく暑いし熱い。クーラーをつければいいじゃないか。クーラーは昨年の夏から故障中だった。扇風機はどうだ。扇風機は家族がどこかに持っていってしまったらしい。部屋には高温の空気がこれでもかと充満している。

そんな状況でホットコーヒーを飲む。中々体験できることではない。

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小説|独房|みかん

小説|独房|みかん

「こんにちわ」
パソコンのディスプレイに緊張した顔が浮かぶ。男はまだ新しそうなスーツを着て、シルバーグレイのネクタイをしていた。
「はいどうも、こんちにわ」
私は何百回も繰り返した返答をした。
男は、もう一度こんにちわと言いながら、画面に向かって頭を下げた。

「じゃあ、面接ということでちょっと緊張しているかもしれませんが、まあ、リラックスしていきましょう」
「はい! ヨロシクオネガイシマス!」

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