マルチバース桃太郎
昔々、ある所におじいさんとおばあさんが───
おじいさんは芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に───
おばあさんが鬼ババ
すると、川上の方から大きな桃が、どんぶらこ、どんぶらこ、と流れてきました。
おばあさんは桃を拾い上げると、おじいさんのために家に持ち帰りました。さっそく桃を割ると、なんと中から男の子の赤ちゃんが。
おじいさんとおばあさんは大喜びして、さっそく赤ちゃんを解体し始めました。
乱視
おばあさんが洗濯をしていると、川上の方からなにやら巨大なものが流れてきました。おばあさんは一生懸命目を細めて見てみましたが、激しい乱視のためにそれが一体何なのか分かりません。
巨大な何かはそのまま、どこかへ行ってしまいました。
整備不良
おばあさんが洗濯をしていると、川上から半分ほど沈んだ状態の大桃が流れてきました。それはおばあさんの前まで来ると、ブクブクと音を立てて完全に沈んでしまいました。
一口サイズ
川上からプリッとした桃が流れてきました。それを拾い上げてみると、よく冷えたみずみずしい美味しそうな桃です。喉が乾いていたおばあさんは、それを一口で食べると再び洗濯に精を出しました。
干ばつ
おばあさんは川に向かいましたが、ここ最近の雨不足により干上がっていることを思い出しました。仕方なく向かう先を、近所の池にしました。
あの池の水は魚臭くてたまらんのだがねぇ。おばあさんは、不満そうにそう言いました。
罠
おばあさんが洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてきました。
「おお、これはこれは、なんと大きな桃じゃ」
おばあさんは桃を拾い上げようとしましたが、触れる直前で手を止め、とっさに後ろの草むらに飛び込みました。その瞬間、桃は大爆発しました。
視覚効果
どんぶらこ、と流れてきた大桃をおばあさんが拾い上げようとすると、するりと手を通り抜けてしまいました。
そこでやっと、これがホログラムなのだとおばあさんは気づきました。なあーんだ、わっはっは。と、おばあさんは大笑いをして、その晩おじいさんに聞かせました。
ホラー
おばあさんが川で洗濯をしていると、真ん中からぱっくりと割れた大桃が流れてきました。どういうわけか桃の中は血まみれのように、真っ赤でした。おばあさんは、気味が悪いね、といって棒であっちに押しやりました。
プライド
川上から大きな桃が流れてきました。もちろん、おばあさんはそれに気づいています。しかし、貧しくとも必ず自分たちの力で生きてやると誓ったおばあさんは、決して桃に手を出すことはありませんでした。
激昂
川上から大きな桃が流れてきました。すると、おばあさんはこめかみに青筋を立てて、突如桃に飛びかかりました。持っていた洗濯板で滅多打ちにすると、桃は崩れ、そのまま川底に沈んでいってしまいました。川から上がったおばあさんは、洗濯板を振り上げたまま近くの村に走っていきました。
Twitter(X)
おばあさんの近くに大きな桃が流れてきました。しかし、おばあさんはちょうど、有名人のアカウントにクソリプを送るので忙しく、桃など全く目に入っていませんでした。
無視
大きな桃が流れてきましたが、とても不機嫌なおばあさんは無視しました。おじいさんにも言いませんでした。
視線
川で洗濯をしているおばあさんは、こちらの視線になんとなく気づいている。余計なことはするなよ、そうやって目だけで訴えてくるのでした。
中止
おばあさんは、今日から川で洗濯をするのを辞めました。
メタ太郎
川上から大きな桃が、どんぶらこどんぶらこと流れてきましたが、もう何も思いつかないおばあさんは、とりあえずおじいさんに意見を聞こうと山へ向かいました。それに気づいた桃は、もう一度川上までどんぶらこと戻っていきました。
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