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日記じゃないもの

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#日記

桜のトゲ

桜のトゲ

 なにぶん桜の季節である。日本に住んでいると、「生命は大なり小なり咲き誇っていずれ散る」という人生観を植え付けられる。美しいものにはトゲがあって、桜はその美しさと引き換えに、そんな儚い人生観を受け入れさせる。

 世の中、知らなくていいものばかり。くだらないものに目がくらむ。浦島太郎が竜宮城を知らなければ、なんと平穏に過ごしていただろう。余計な心配が、私の心をざわつかせる。そして美しいものは無責任

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「山のあなた」

「山のあなた」

 幸せって雲を掴むことに等しいのではないか。        

 「幸せ」を見たいとき、文字通りの「幸せ」なんてものはなくて、環境とか体験とかなにか一枚挟むことで、ようやくその片鱗を感じとる。

 ところが、その覆った布をひっぺがして、正体を見ようとするとたちまちどこかへ逃げてしまう。

 そうして、人々は涙さしぐみ帰ってくる。でも、それでいいのだと思う。きっとソレを「幸せ」と名付けた人も知らずに

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目を閉じて

 1890年、オディロン・ルドンは「目を閉じて」という題の絵を描いた。本当は画像を入れたかったが、フランスの著作権をよく知らないので文章だけの説明になります。すいません。 

 それでどんな絵かというと、男とも女ともつかない中性的な顔立ちをした長髪の人物が、半裸で水面から肩より上だけを出して、ただ目を閉じてるというもの。 

 色調は全体的にぼんやりと暗めで、そして水彩画のように淡い。しかし夜明け

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それがキレイに聞こえない

それがキレイに聞こえない

 例えば「努力は裏切らない」という言葉。一見すると素晴らしい言葉だが、言うだけなら俺でもできる。大事なのはそう思う根拠にある。なぜそうなるのかの証拠になる個人の体験が大事であるのに、肝心のそこが抜けてる状態で放り投げられるのをちらほら見る。そのキレイなラベルにふさわしい中身が伴わないことには、私の場合、知らないやつが頼んでもないのにやってきて、無責任なアドバイスをしてくるようで少し癪に障る。

 

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情報という支配-テレビについて

情報という支配-テレビについて

 情報というのは誰から教わるかで話が違ってくる。お酒の席で聞きたくもないお酒のうんちくをベラベラ語りだす先輩と、品のある人のさりげなく話すソレとでは、全く同じことでも私からすれば、事情が大きく異なる。 

 そんな「情報」を、先入観なくすんなり教わっていたのがテレビであった。私はこの四角いのから、流行だとか、何が面白いとか、世の中のことも色々と教えてもらった。私の世代はこういう人が多いと思う。テレ

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のびのび生きる悪役たち

のびのび生きる悪役たち

 映画なんかで、主人公よりも悪役の方が存在感を放っているものがある。有名なのだと、「ダークナイト」「ノーカントリー」、「レオン」も個人的にはスタンフィールドの方が印象的だ。これが海外ドラマにもこの手のがちらほらある。 

 それで、この前の三連休でドラマ版のファーゴ・シーズン4を全話観た。ファーゴは概略として、どのシーズンも登場人物たちのちょっとした選択ミスが重なって、どんどん話がおおごとになって

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【ルポ】変なお店?「某Tマート」でアルバイト

【ルポ】変なお店?「某Tマート」でアルバイト

〈はじめに〉24時間営業の格安店

 見慣れないお菓子、飲み物、ゼリー。冷蔵庫もなく常温でそのまま並んでいる。誰もが知るあの会社の全く知らない不人気商品やダイエットボールまで、そこには脈略なく商品が並んでいる。

 ここはN県N市のN駅前に一週間ほど前にオープンした24時間営業の格安ストア「某Tマート(伏字)」。先月頃から全国へ出店を進める勢いのあるお店だ。あなたの住む県にもおそらく出店している。

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目の手術体験記

 昨年の9月から12月にかけて網膜剥離で両目を手術しました。その経験をずっと書こうと思っていたのですが、だいぶ遅れてしまいました。治していただいたお医者さん、本当にありがとうございました。それで手術される方や全く縁のない方にもこれを読んで手術がどんなものかイメージすることの助けにでもなれば幸いです。私はこれがはじめての手術で、それをいきなり2連チャンしてきました。素人ではありますが、2回も経験した

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「あきたびじょん」とやら

「あきたびじょん」とやら

 ちょうど1年前のこの時期に、用があって秋田へ行った。散策ついでにぶらぶら歩いていたら秋田県庁の前を通る。大抵どこの県庁も横断幕で、その県のスローガンなんか掲げていたりするが、秋田の場合は「あきたびじょん」。厳密に言うと「ょ」がすごく小さくて、遠目に見ると「あきたびじん」と読めるようになっている(写真参照)。これを見たとき私は正直なところ「秋田美人は色々背負わされて大変だな」と思ってしまった。秋田

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「ヤバイ」からの自立

「ヤバイ」からの自立

 「ヤバイ」という言葉はとにかくヤバい。 

 「それヤバい」だけ言ってればほとんど会話になるからヤバイ。海外の人に日本語を教えるなら「もったいない」とか「ありがとう」なんかより、「ヤバイ」のヤバさをヤバいほど教えたい。かくいう私は海外の人と一度たりともまともに話したことがないので、マジでヤバイ。 

 こんな調子で「ヤバイ」を使えばなんとなく文章にはなるのだが、これは頭のなかにある「喜び」とか「

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自由に溺れたブルックス

自由に溺れたブルックス

 果たして自由ってそんなに素晴らしいものなんだろうかと思ったりする。 

 言わずと知れた名作「ショーシャンクの空に」のなかに、ブルックスというおじいちゃんが登場する(名前が分からなくて調べた)。彼はずいぶん長いこと刑務所で暮らしていたのだが、劇中ようやく仮釈放までこぎつける。刑務所を出るとそこは待ちに待った自由の世界。ところがこの人、全くシャバに馴染めず、しまいには自ら命を絶ってしまう。 

 

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作家ってスゴイ

作家ってスゴイ

 ブログをはじめてから改めて本を読んでみると本職の凄さが一段と感じられる。
 いま読んでるコラムなんかでも、入り口は「ん?」となるような少し馴染みのない話題で入って、最後は核心をついたところにズバッと収まる。
 この軌道、見てて惚れ惚れする。思えば文章を書くという行為は、より本を好きになるための手段でもあるわけだ。図らずもそれをやっていた。
 これを読んだ後に見るとアラ不思議。自分の文章がゴミクズ

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