見出し画像

「幸せ」の正体とは何か? 改めて考える幸福感のメカニズムとは

「ウソでしょ…そんなに低いの!?」

今週ニュースを見て驚かれた人も多かったのではないでしょうか。ユニセフが発表した子供の幸福度調査の結果に驚きました。38か国中「精神的な幸福度」で日本は37位と最低レベルだったそうです。

今回の結果は子供に関する調査結果ですが、未来の日本を担う子供たちが幸福感を感じられていないのは我々大人世代としても他人事ではないどころか、責任を感じざるを得ません。

そもそも幸せとは何なのでしょうか。そこで改めて「幸せ」の正体について考えます。

日本の子供の幸福度は最低レベル

国連児童基金(ユニセフ)は先進・新興国38カ国に住む子どもの幸福度を調査した報告書を公表しました。結果は1位がオランダ、2位はデンマーク、3位はノルウェー、そしてスイス、フィンランドと上位をヨーロッパの国が占め、日本は20位という結果。

この子どもの幸福度調査は2013年にも実施されたそうで、調査手法は異なる前提ですが当時日本は6位だったそうです。そう考えると相対的に見て日本の子供の幸福度は確実に下がっていると言えます。

この調査は「身体的健康」、「精神的な幸福度」、「学問などの能力」の3分野でそれぞれ順位を発表しています。子どもの肥満の割合や死亡率などから算出した「身体的健康」の分野では日本は1位でした。

一方で「学問などの能力」においては、学問的な習熟度は高いものの社会的な適応力で上位の国におとり、27位という結果だそうです。

そして問題は「精神的な幸福度」。15歳時点での生活の満足度の調査結果や若者の自殺率などから算出した結果だそうで、38カ国中37位という結果…。

経済的にも比較的恵まれ、食事は十分に摂れている反面、学校でのいじめや家庭における居心地の悪さなどが、この結果の背景にあると考えられます。

精神的な幸福度を支える大きな要素としては「自己肯定感」を感じられているかどうか。つまり、「自分は存在するだけで価値がある」と認識できているかが大きいと考えられます。これは子供を取り巻く家族が真っ先にケアしなければならない領域です。物質的にも食の面でも豊かな日本において、改めて子供のココロを育むという点においては今一度大人世代は態度を見直す必要があります。

「幸せ」の正体とは

そもそも「幸せ」とは何なのでしょうか。その正体を探る上で参考になる書籍に出会いました。ダニエル・ネトル氏の著書「幸福の意外な正体」です。幸福に関する意外な事実がたくさん載っているので、たくさんの学びを得られます。

この本は心理学者が説く、幸福学の本です。本の帯には「答えのキーワードは『錯覚』にあった!」とあります。錯覚とは感覚が実際とは異なる事柄を知覚してしまうということ。つまり、「思い込み」が幸福に関係していそうです。

この本でなるほどと思った箇所をいくつかピックアップします。

1.人は「幸福」をどう測っているか?

「あなたはどれくらい幸せですか?」

この質問を問われた時に何を想像するでしょうか。この問いは漠然とし過ぎていて、人は同僚の生活や自分の理想像と比較することでこの問いの解を見極めようとします。誰かと比較した場合、自分の状況や、目標に向けて達成できる見通しが立っている場合は当然ながら自分のことを幸せだと推論します。

つまり、人は幸福を考える時、誰かや何かとの比較をして自分の幸福度を測っているということです。幸せは「比較」によって左右されるということ。これは本書の重要な論点となります。

ちなみにお金について、この本の解説の中で同様の記載があり、「人はお金持ちになりたいのではなく、他人よりもお金持ちでいたいだけだ」と説明されています。どきっとしてしまいますが、おそらく正しいようにも思います。

2.常に不満の余地は残されている

幸福に関する自己評価はその評価を下す状況に左右されやすいことが分かっています。例えば、幸福度に関するアンケートを取る際、その部屋に車椅子の人がいるのとそうでないのとで、結果が変わるそうです。これも幸福感は比較である、ということの一側面と言えます。

そして、本書では人はより良い状態を常に求め続ける生き物であると説明します。私たちの体内には幸福追求プログラムがあり、今より良さそうな別の選択肢を発見すべく、考えて行動します。

例えば高い地位や名声、安らぎ、美貌など、それを手に入れるともっと幸せになれるというものを追い求めます。人はそれらを欲しますが、一旦手に入れてしまうと、今度は別のものへの欲求に心を奪われます。

このサイクルが続くとすれば、「完璧な幸せ」が訪れることはない、と言えます。

一方で、人間にはいかに悲惨な状況に置かれても、何かしら喜びを見つける能力も備わっています。悲劇的な体験を経てもなお喜びの種を見出す存在と言えます。

「人には常に不満の余地が残されている」という前提に立てば、そんな中でも人生に幸せを見出す工夫としては「何と比較するか」が大切となります。本書には人生が灰色にしか見えない時の問いとして以下が紹介されています。

「比較の対象が間違っていないだろうか」
「むやみに過去や未来にとらわれていないだろうか」
この世に完璧な人生などあるわけがなく、無上の幸福など人生の設計図に載っていません。いかなる時代であれ場所であれ集団であれ、完璧な幸福を標榜するものはいっさい信用してはならないし、ユートピア的な発想はまず疑ってかかるべきです。

幸せの感じ方は自分次第であるということと、完璧な人生などない、という前提で自分の幸せを見つけ出すことが大切だということですね。

3.どんな幸せも「あたりまえ」になっていく

仕事で給料が上がれば嬉しいものです。しかし、長い目で見ると昇給したからと言って幸せかというとそうではありません。それは「適応」という現象が起こるためです。最初は嬉しくても、その状態に慣れてしまい、やがて幸福度は元に戻ってしまいます。

本書にはこんな一説があります。

少なくとも一握りの心理学者たちが、環境と幸福をめぐるデータから導いた結論は、「何が起きても実はあまり変わらない」というものでした。人にはあらかじめ幸福のレベルが決まっていて、何をやろうと、何を得ようと、結局はまたそこにへ戻るというのです。

一旦感じた幸せは続かないということですね。その前提に立てば、一度感じた幸せを感じられなくなったとしても、おかしなことではないと思えます。「完璧な幸福など到達不可能で、かつ、唯一の大切な目標でもない」。幸福の性質とはそういうものであると理解しておくことが大切ですね。

4.幸福度と健康

本書では、「よりポジティブな感情を表現していた、上から25パーセントのグループのうち9割が、85歳になっても健在。逆にポジティブな感情表現に乏しかった25パーセントは、85歳まで生きた人が34パーセントしかいなかった」という記載があります。

個人差が大きいのでは?と疑ってしまうところですが、上記の内容は、同じような食生活、行動様式、結婚・出産歴を持つ修道女を対象にした調査結果とのことです。

つまり、自分で幸福度が高いと感じている人の方が、長生きできるというということです。ポジティブでないだけでなく、ネガティブだとさらに悪いことに不幸を生み出すことにもなるとのこと。「恐れ、心配、悲しみ、怒り、罪悪感、羞恥心といったネガティブ感情は、度を越すと、不幸をつくり出す原因にる」と説きます。

本書では、意図的ににポジティブな感情を増やすようにする「快行動トレーニング」が紹介されています。直観にしたがって自分が好きなこと(快行動)をリストアップし、その行動を頻繁に行うように決意するという手法です。自分の気持ちと行動次第で、ポジティブマインドは醸成され、それによって幸福感は感じやすくなるということ。ひいては健康なカラダに近づけるということですね。

まとめ

子供が感じている精神的な幸福度の低さは未来の日本を考えると大きな問題です。一方で、「そもそも幸福とは何か?」という幸福の正体に対する理解をしておくことも大切です。

人が感じる幸福は絶対的なものではなく相対的な比較によって感じるものです。つまり比較するモノサシが変われば感じ方も変わる。それほど曖昧なものであるとも言えます。

そして人間には常に幸せな状態を追い求めるプログラムが備わっていて、どんな幸せもいずれ慣れてしまいます。未来永劫続く完璧な幸せ、というものは存在しないということです。ご紹介した書籍にはこんな強烈な一文があります。

近づけば近づくほど逃げていってしまうもの

努力すればいつか幸せになれる、と思っていたとすればなかなかショッキングな一文です。努力の先に仮に幸せを掴んだとして、でもその嬉しい気持ちは一時的です。やがてその幸福感にも慣れしまい、また別の幸せを求めて行動を強いられるようにプログラムされているのが人間です。

一方で、幸せとはそれほど不完全で、曖昧で、考え方次第でより感じられるものであると理解することもできます。つまり、自分の考え方次第で何とでもなるとも取れます。「錯覚」、つまり思い込みによって感じるのが幸福だとすれば、それを逆手にとって上手に幸福を感じながら生きて行くこともできるということです。

幸せの正体を理解して、上手に付き合っていきたいものですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この記事が参加している募集

最後までお読みいただき、ありがとうございました!ヒントにしていただければと思います。スキ、フォローもとても励みになります。 サークルをオープンしましたのでお気軽にご参加ください😌https://note.com/yawarakamegane/n/n3f4c11beb4c0