山雀ぐり
30代前半以降 詩作から離れていましたが、 49歳の 2019年から再開しました。 その詩を掲載していきます。
私がまだ二十歳の頃の 1990年頃の詩と、30歳過ぎの 2001~2003年頃の作品を掲載しています。
うちに坂本龍馬がいます はい あの坂本龍馬です 袴にブーツ 右手にピストル 懐手して 遠くを見つめて立っています 何を見つめているのでしょう 日本の夜明け? いや …
うちにペンギンがいます 亜熱帯の部屋に しかも三羽も その名も シャンプー コンディショナー ボディソープ くちばしの向きをそろえて いや そうでもないですね 自由…
季節の変わり目ですのでご自愛ください というけれど 季節の変わり目っていつだろう 毎日なのではなかろうか 同じ春でも 今日の春は昨日と違う 明日の春もきっと違う …
くるくる回す 地球儀 回す 目をつむって 指でストップ さてどこだ? 海だった 海のもくずか… また回す また止める おっ 陸だ ハロー アメリカ! もう一回 また海…
シカバネちゃんが歩いてく ゆらゆらと 柳のように シカバネちゃんが歩いてく まるで生きてるかのように いや もちろん生きてるんだけどね れっきとしたニンゲンなんだ…
ある春の夜 つきあいで遅くなり タクシーで家に向かった ふと見ると みごとな桜 「すみません 止めてください」 タクシーが路肩に止まる 「ここで待っていてください…
うさぎは鳴く 知らなかった 鳴かないと思っていた でもグリが教えてくれた うさぎは鳴きます うれしいとき なでられたとき 心が弾んでとまらないとき グッ グッ グ…
つまずいた 今日もまた 街なかで わずかな段差で 世界は段差で満ちている すきあらば私を転ばせようと 果たせるかな 私はこけた 右手のスマホ 左手のかばん 財布にカ…
影がのびる 東へのびる ということは 背後から照るあれは 夕陽だろうか 燃える赤 炎の城だ 影があるく 東へあるく ということは僕はまだ 生きているということか こん…
ぼくは美男子 ではないけれど でもたまにある 図々しくも自分の顔を いい顔だなと思う日が 逆もある 何だ このヘンな顔 鏡の前で落ちこむ日 そう 顔は違う 同じようで…
きづく きずつく きずつく きづく 似ている 気づくと傷つくは 音だけじゃない 意味も似ている そう 気づくとは 傷つくことだ 何かにふと気づくとき 人はどこかに傷…
美しいはこわれやすい たとえばきれいなお花畑に たとえばジュースの空き缶が もしひとつでも落ちてたら こわれる 美がこわれる そもそもお花畑が微妙 きれいでも人工の…
木はおばけ みんな気づいてないけれど 木はおばけ 夜の公園 夜の歩道で ざらざらの肌 ごつごつの節 百本の腕を伸ばして 一本足で立っている 怖いことにたまに動くよ ざ…
宇宙は 宇宙だけにあるんじゃない 地球にもある 何ならこの部屋 このベッドにも 今日のわざをなし終えて 毛布の中に深くもぐれば ほら 闇 完全な闇 月もない 星もない…
ゴミ袋がなくなって 帰り道コンビニで買う ゴミ袋はビニール袋に 束になって入れられていた 袋が袋に入ってる 僕は笑った まるで親子みたいだね 考える じゃあ…
カルガモくん みいつけた セキレイくん みいつけた ジョウビタキ みいつけた 晩秋の朝 川沿いの道 ぼくはみんなとかくれんぼ みんな今日も生きている 薄暗い夜の中…
2024年5月30日 06:14
うちに坂本龍馬がいますはい あの坂本龍馬です袴にブーツ右手にピストル懐手して遠くを見つめて立っています何を見つめているのでしょう日本の夜明け?いや 布団袋です何しろここは ぼろアパートのウォーキングクローゼットの中前の住人が剥がし忘れた?いや こんな巨大ポスターどう考えたってわざとでしょう大家さんも見て見ぬふりしたかおかげでここに住んでから毎日 龍馬と こ
うちにペンギンがいます亜熱帯の部屋に しかも三羽もその名もシャンプーコンディショナーボディソープくちばしの向きをそろえていや そうでもないですね自由な向きで立っていますくちばしからは普段は液体でもときどき空砲が出ますすると私も空砲を出すああ また〝儀式〟の日が来たかため息という名の空砲をよかったら想像してみてください夜浴室でいい歳をした男がひとり裸で
2024年5月2日 22:15
季節の変わり目ですのでご自愛くださいというけれど季節の変わり目っていつだろう毎日なのではなかろうか同じ春でも今日の春は昨日と違う明日の春もきっと違う明日はもう春の絵の具に夏が混ざっているかもしれない地面の中でセミの子がもうそろそろかなと目をあけてけだるく伸びをするかもしれない空の上では入道雲がごしごしと頭をみがいて組立体操の練習を始めるかもしれない四つじ
くるくる回す地球儀 回す目をつむって指でストップさてどこだ?海だった海のもくずか…また回すまた止めるおっ 陸だハロー アメリカ!もう一回また海か ぶくぶくぶく…よし 今度こそおっ ここは?你好 チャイナ!しかしあれだねやっぱレアだね日本の上に止まるのは大陸でさえ困難なのにいわんやこんな島国じゃ確率はほぼほぼゼロかいや そうでもないよ足
2024年4月5日 05:44
シカバネちゃんが歩いてくゆらゆらと 柳のようにシカバネちゃんが歩いてくまるで生きてるかのようにいや もちろん生きてるんだけどねれっきとしたニンゲンなんだけどねでも彼女はシカバネちゃんまるで生きてる気がしないだって音がしないものそう 彼女は音をたてないドアを閉めるときも階段を降りるときもそういえば話し声もまだ聞いてないかも世界は音であふれてるでも美しい音は
ある春の夜つきあいで遅くなりタクシーで家に向かったふと見ると みごとな桜「すみません 止めてください」タクシーが路肩に止まる「ここで待っていてください すぐ戻ります かばんを置いていきます」スマホを持って車を降りた数枚撮って戻るつもりが間近で見るとつい見とれた花びらが淡く光ってまるで浮かんでいるようだ桜に限らず およそ花びらというものは実はかすかに発光し
2024年3月9日 10:49
うさぎは鳴く知らなかった鳴かないと思っていたでもグリが教えてくれたうさぎは鳴きますうれしいときなでられたとき心が弾んでとまらないときグッ グッ グッ小さな声でごくごくまれになんてかわいい声だろう詩かもしれない心ある者ずっと黙してきた者がついに放つ至上の言葉無垢な歌そんな詩をぼくも書けたらグリちゃんぼくも ぐりになったよペンネーム ぐり
2024年3月9日 10:46
つまずいた今日もまた街なかで わずかな段差で世界は段差で満ちているすきあらば私を転ばせようと果たせるかな 私はこけた右手のスマホ 左手のかばん財布にカギに社員証一切合切投げだして腹ばった 大地のうえに転がった まるで五体投地のようにそうか これは巡礼なんだとするとここはチベットかビルはヒマラヤ喧騒は祈りの声か ころびつつ まろびつつ すすみゆく わが旅路
2024年2月10日 12:57
影がのびる東へのびるということは背後から照るあれは夕陽だろうか燃える赤 炎の城だ影があるく東へあるくということは僕はまだ生きているということかこんなにも満〝心〟創痍というにしぶとい奴だ心は弱いでも体は案外強い今日もちゃっかり生きている交差点影がずんずん車道へのびるその上をバスが走った今度こそ万事休すか 再起不能かけれども影は慣れたもの忍者のよう
2024年2月10日 12:54
ぼくは美男子ではないけれどでもたまにある図々しくも自分の顔をいい顔だなと思う日が逆もある何だ このヘンな顔鏡の前で落ちこむ日そう 顔は違う同じようで毎日違うたぶん動いてるんだろう大陸みたいにじわじわと顔プレートがじりじりと心というマグマを抱いて鉄面皮という〝顔〟盤がそうか 顔は地球なんだ目は湖鼻は山口は巨大な海溝かときどきニヤッと裂けて今日も生
2024年1月10日 22:27
きづく きずつくきずつく きづく似ている気づくと傷つくは音だけじゃない意味も似ているそう 気づくとは傷つくことだ何かにふと気づくとき人はどこかに傷を負ううれしい気づきもあるが多くの場合気づきは傷だ優しさの裏にあるもの愛という利己的なもの自分を外から見る自分をまた外から見る自分きっと心は森なんだ鬱蒼として昼でも夜のそしてそこにはキツツキがいて真ッ
2024年1月10日 22:23
美しいはこわれやすいたとえばきれいなお花畑にたとえばジュースの空き缶がもしひとつでも落ちてたらこわれる美がこわれるそもそもお花畑が微妙きれいでも人工のもの所詮は人が植えたものその時点で美にもとるそれならと森へ行く鳥が歌う 木が歌うああ美しいこれぞ自然 天然の美だと思ったら誰か来た人がいたその瞬間またこわれるこうなったら山へ行こう誰もいない山空の近
2023年12月17日 22:17
木はおばけみんな気づいてないけれど木はおばけ夜の公園 夜の歩道でざらざらの肌ごつごつの節百本の腕を伸ばして一本足で立っている怖いことにたまに動くよざわざわざわ ゆらゆらゆら風に吹かれて千の手がおいでおいでと僕を呼ぶ冬になるともっと怖い葉っぱの服を脱ぎ捨ててついに本性現すよこれぞガイコツ おばけの骨だ見上げれば ほら枝の中生け捕りに絡めとられてなす術もなく
2023年12月17日 22:14
宇宙は宇宙だけにあるんじゃない地球にもある何ならこの部屋このベッドにも今日のわざをなし終えて毛布の中に深くもぐればほら 闇完全な闇月もない星もないでも宇宙僕の宇宙目を開ける目を閉じるどっちも闇底知れぬ闇そりゃそうだ宇宙だものなら何か宇宙船かこのベッドはさびしいかなひとり乗りの…やがて僕が眠る頃宇宙船が離陸するふわふわと闇
2023年11月17日 05:39
ゴミ袋がなくなって帰り道コンビニで買うゴミ袋はビニール袋に束になって入れられていた 袋が袋に入ってる僕は笑った まるで親子みたいだね考える じゃあ親は父親か母親か暗い夜道を歩きつつ たかが袋だ 父も母もあるわけないか数か月後またなくなったビニール袋が空になり僕は入れた ゴミ袋へと あれあれ 最初と逆になったね僕がぷっと笑った瞬間 お袋!
2023年11月17日 05:32
カルガモくん みいつけたセキレイくん みいつけたジョウビタキ みいつけた晩秋の朝 川沿いの道ぼくはみんなとかくれんぼみんな今日も生きている薄暗い夜の中から明るい朝へ飛びだしてくる元気いっぱい 夢いっぱい鳥だけじゃない石 みいつけた草 みいつけた空 みいつけた風 みいつけたああ 朝はすべてが発見と出会いの旅だ何だろう この気持ち次は誰を見つけるだろ