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コメディの話|『となりのサインフェルド (Seinfeld)』配信終了の危機!|シーズン1あらすじ&感想

■はじめに

個人的に世界一面白いと思っているコメディがあって、その動画のネット配信が近々終了するらしい。配信の終了は30日以内と猶予も短く、突然の悲報に私はうろたえている。

その作品は『となりのサインフェルド (Seifeld)』といって、90年代にアメリカで一斉を風靡したそうだ。全部でシーズン9まである。そんなご長寿番組を日本で唯一ストリーミング配信しているのがAmazonで、これが打ち切りになるというのだ。焦らないはずがない。

この記事は、愛するコメディ瀕死の危機を受けての、いちファンとしての最後の悪あがきである。(以下、作品名は便宜上『サインフェルド』と呼ぶ)


■私とサインフェルド

私が初めてサインフェルドに出会ったのは2017年の3月頃だった。Amazon Prime見放題で『フレンズ』を見終わって(こちらも名作コメディだ)、関連動画に表示された本作がたまたま目に入った。何気なく再生してみたところ、なにやら不思議と面白い直感を得て、どんどん次のエピソードへと進んでいった。基本的に一話完結で、各エピソード1話20分程度。全部でシーズン9まである。来る日も来る日も数話ずつ見ては、あまりの面白さに頭がおかしくなりそうになり、爆笑に次ぐ爆笑を重ねた。そんな日々が2ヶ月ほど続いた。

約10年分にもわたる全てのエピソードを見終わった頃には、すっかり大ファンになっていた。『フレンズ』も面白かったけど、サインフェルドの面白さは頭五つくらい抜きん出ていた。面白さが常軌を逸しているのだ。一周見終わってからも、好きなエピソードや好きなフレーズを思い出しては、ちょこちょこ見返しては何度も笑わせてもらってきた。辛い日も泣ける日も、サインフェルドに助けてもらってきた恩がある。私はこのご恩を忘れるわけにはいかないのだ。


■日本での視聴環境

日本でサインフェルドを合法的に見る方法は二つ。一つ目はAmazon Primeの見放題動画。もう一つは日本盤のDVDとなる。しかし、日本盤のDVDはシーズン4までしかリリースされておらず、未完である。米国版のDVDを輸入することも不可能ではないが、日本とはDVDのリージョンコードが違うため、通常のプレイヤーては再生できない。それに日本語字幕が付いていないので、非ネイティブには少し厳しいものがある。

よって実質的に、本作は「Amazonでしか見ることが出来ない作品」と言っても過言ではないのだ。Amazonでの配信終了=日本でのサインフェルド終了、とも言えるだろう。Amazonの動画にはしっかり日本語字幕も付いている。せっかく翻訳した人の身になってみても切ないものがある。きっと配信終了には事情があるのだろう。全然再生されないとか、人気がないとか。

私はこの状況に震撼している。こんなにも面白いコメディが、気が狂いそうに面白いコメディが、日本にいるというだけで見られなくなってしまうだなんて。グローバル化がぐんぐん進む世の中で、世界的名作が埋もれていくだなんて、道理としておかしい。そして悔しい。

こうなればもう、すべてはAmazon Japan様のお気持ち次第だ。それにはAmazon Primeユーザーの方々、一人ひとりの行動が必要不可欠になってくる。動画の再生数が増えれば、配信終了も見直されるかもしれない。この危機を脱出するため、私に出来ることといえば、サインフェルドの面白さを広めること、ただそれだけだ。どうか一人でも多くの人に、この作品の魅力を知ってほしい。そして再生してみてほしい。声を出して笑ってほしい。


■記事の趣旨

記事を書くにあたり、どんなやり方が良いのか悩んだ。私はそんなに熟練のファンでもないし、知識もそうないから、偉そうなことは言いたくない。かといって、「サインフェルド最高!大好き!」とだけ書き連ねていたのでは記事として成立しないのだ。誰にも読まれなければ意味がない。だから精一杯、無い筆力を最大限に振り絞って、あらすじや感想、解説のようなものを書いてみることにした。

古くからのファンの方は、もしかするとイラッとされるかもしれない。だけどくれぐれも伝えておきたいのは、私は知識のひけらかしとか、単なるネタ作りとか、批評家気取りのためにこの記事を書いているわけではない。そもそも私はサインフェルドの面白さを正確に言語化できるほどの文才も、ユーモアも、教養も、英語力も、アメリカ文化への理解も持ち合わせていない。ただただ、サインフェルドが大好きなだけなのだ。

ですから、長年のファンの方や、アメリカ文化に造詣の深い方、その他なんらかの関係者の方々などなど、各方面の皆様には目を瞑っていただければと思います。


■アメリカと日本の人気格差

本国でのサインフェルド人気は今も根強い。そもそも作品としての評価は折り紙付きで、エミー賞及びゴールデングローブ賞のコメディー部門で作品賞を受賞したそうだ。全米で6年連続視聴率No.1を記録したとか、最終回の日にはテレビを見るために街から人が消えたとか、業界屈指の人気と受賞歴の多さを誇る長寿番組なのだ。10年も続いたからには相当な人気だったのだろう。Twitterには公式アカウント (@SeinfeldTV) が存在し、今も毎日のように情報発信を続けている。

一方、日本では全く知名度がないと言って良いだろう。事実、私も偶然Amazonで発見するまで名前も聞いたことがなかった。レンタルショップでも観たことがなかったし、周囲で観たことがある人にも出会ったことがない。ネットでこそ一定数のファンは存在しているけど、体感的には100人もいないくらいの勢いだ。この記事をきっかけに少しでもファンが増えることを願うばかりである。

■基本設定

(出典: Wikipedia)
『となりのサインフェルド』は1989年7月5日から1998年5月14日までアメリカのNBCで放送された、アメリカ人の4人に1人が見たという国民的コメディドラマで1990年代で一番の人気を誇ったニューヨークを舞台にしたシチュエーション・コメディ。

Wikipediaのなんと分かりやすいことか。要するに90年代のニューヨーク産コメディということである。物語のメインキャラクターは4人(男3、女1)。本作はこの四人の日常の些末な出来事をおもしろおかしく描いている。ちなみにサインフェルドとは主人公ジェリー・サインフェルドの苗字である。英語の原題は『Seinfeld』なので、彼本人の話といったところか。

本作の面白さは大きく二種類に分けられると私は考えている。一つ目は、話の設定や展開の巧妙さ、エピソードやシーズンを股にかけての伏線回収など、物語自体の面白さ。二つ目は、会話におけるウィットに富んだジョークや、軽妙な皮肉、役者の表情や語調、言葉遊び的なセリフ回し、キーフレーズの独自性など、言葉としての面白さである。

サインフェルドというドラマは"A show about nothing"=「なんにも起きない番組」というテーマを標榜している。普通テレビ番組というのは「なんらかの非日常」を見せるのが当たり前となっているが、そこの固定概念をぶち破ったのだ。実際、ドラマといえば「主人公がいて、なんらかの問題などが起きて、それを解決する」といった筋書きが普通はある。それがサインフェルドには「ない」のである。

ただ主人公がコーヒーショップに行って、仲間とダラダラ喋って、たまに買い物に行ったり、映画に行ったり、デートしたりとか、そんなどうでもいい日常が描かれている。なのに脚本の巧みさ、セリフや言葉遊びの面白さから、奇妙なほどにおかしいドラマが生まれるのだ。サインフェルドにとっては「ドラマ」という言葉すら不適なのかもしれない。なぜならなんのドラマ(ドラマティック)もそこにはないからだ。

この作品はいつどんなタイミングでも見やすいのも魅力である。ドラマというと話の繋がりがあったりして、何話もまとめて見なければならない負担感があるが、本作は一話完結なのでシリーズのどこからでも見られる。ハラハラもしないし、ドキドキもしないが、いつ見てもそこにはお馴染みの仲間たちがいて、おもしろ可笑しい日常を送っている。それだけでいいのだ。それだけで元気が出る。

■登場人物


■ジェリー・サインフェルド

主人公。職業はスタンドアップコメディアン。そこそこ売れていて、ショークラブで定期的に公演もやっている。日常生活をネタにしたスタンドアップが多い。ニューヨーク在住。一人暮らし。几帳面すぎる一面がある。普通程度にモテるがどの女性とも長く続かない。

■ジョージ・コスタンザ

ジェリーの高校時代からの友達。気が合うのでいつも一緒にいるが、ベタベタの親友という感じではなく、腐れ縁か悪友といった感じ。チビでハゲで短気。ケチで卑屈な性格で、女性にも奥手。シーズンの途中から無職になる。ダメなやつだけど憎めない。両親が強烈なので辟易している。


■エレイン・べネス

ジェリーの元カノ。付き合っていた頃は喧嘩ばかりだったが、友達になってからは上手くいっている。ジェリーの家に入り浸っている。ユーモラスでチャーミングな才女。一流大学卒の編集者。男性にはモテるが、こだわりが強い性格で、誰とも長く続かない。表情豊か。


■クレイマー

ジェリーのマンションの隣の部屋に住んでいる男。みんなよりだいぶ年上に見えるが、働いている様子はない。ジェリーの部屋に勝手に入っては冷蔵庫の食べ物を物色している。挙動不審なところがあり、身振り手振りが大きく、よく転ぶ。性格が良く、義理人情に厚いので誰とでもすぐ仲良くなる。女にモテる。


■シーズン1
 エピソード一覧(あらすじと感想)

1. Seinfeld

"Seinfeld"...主人公の苗字 (Jerry Seinfeld)

・注釈
記念すべき第1回放送。エピソード1はパイロット版(試作版)のため今後の物語とは舞台やセットがちょっと違ったりする。登場人物も一人少なく、面白さが100%じゃないので初めての方は飛ばす方が得策かもしれない。観るとしても、これは本領が発揮されてないと理解の上、見限らずにエピソード2に進んでいただきたい。

・あらすじ
パイロット版のためか筋書きはかなりシンプル。「ジェリーの女友達が旅行ついでに部屋に泊めてくれと頼んできた。果たしてこれはOKのサインか?」という些細なテーマを土台に、ジェリー、ジョージ、クレイマーの男3人でああでもないこうでもないと議論をする。

・感想
エピソード1では、紅一点のヒロイン、エレインが登場しない。エレインはそこにいるだけで場がぱっと明るくなるチャーミングな女性で、彼女不在の会話劇は少し華やかさに欠けているかもしれない。

サインフェルドのピーク時の面白さが150点だとすると、60点ぐらいの仕上がりだと思う。これからシーズンを追うごとにどんどん面白くなっていくのが楽しみだ。

2. The Stake Out

"stake out"...張り込み(刑事・探偵などの)

・あらすじ
ジェリーとエレインは元カップルの仲。破局後も友達として付き合っているが、恋愛関係の話題はタブーの空気。

二人はエレインの女友達の誕生日会に参加。会場でジェリーは気になる女性と会話するが、エレインの妨害があり名前も聞けぬまま解散する。唯一分かるのは職場の名前。

ジェリーとジョージは会社のあるビルで張り込みをする。待ち伏せの言い訳として、「この建物で働いている友達の"アート・バンデレー"に会いに来た。彼は輸入業者で、輸出業者」「ジョージは建築家をやっている」などなど、口からでまかせの嘘をつく。

ジェリーは無事に女性の名前を聞き出しデートの約束を取り付けるが、帰宅するとエレインから電話があったらしい。メモを見ると、張り込み作戦のすべては女性からエレインへと筒抜けだったことが発覚する。ジェリーとエレインは友達として関係を成立させるため、恋愛関係のタブ-をなくすことを約束する。

・感想
エレインが登場し、いよいよ面白くなってきた。あらすじを書き出していても楽しく、話の筋自体がしっかりとしている。会話の妙以外の見どころが増えたということだろうか。

張り込みの際のジェリーとジョージの会話は特に面白く、今後シーズン9まで何度も登場する「アート・バンデレー(架空の名前)」「ジョージは建築家」などのネタが早くも登場する。ジョージの建築家への憧れ、執着はどこから来るのだろう。

今回は作中でジェリーの両親が登場するが(部屋に泊まりに来る)、父親の役者さんが次回以降とは違う人になっている。この後でキャスト変更があったようだ。確かに変更後の新お父さんの方が顔が面白いので正しい選択だったと思う。

サインフェルドはやっぱりエレインなくして成り立たないなぁ。今回の面白さは75点といったところでしょうか。

3. The Robbery

"Robbery"...泥棒

・あらすじ
エレインは、一日中歌いっぱなしのルームメイトから逃げるため、週末にジェリーが仕事で街を離れている間、彼の部屋を借りることにした。

週明けジェリーが帰ってくると、家電一式が泥棒によって盗まれていた。理由を聞くと、クレイマーが部屋のドアを開けっぱなしにしていたからだという。その話を聞いたジョージはジェリーに引っ越しを勧める。働いている不動産屋で扱う物件で、いい部屋があるのだと言う。

ジェリー、ジョージ、エレインは内覧に行くと一目で部屋を気に入る。ジェリーは契約を決めた。エレインは、ジェリーが今の部屋から退去したらそこを引き継いで住みたいと言う。ジョージは自分もジェリーと同じ新しい物件に住みたいと言い出す。取り合いになり、コインなどで勝負してジェリーが勝つが、ジョージはその後も物件への思いを断ち切れない。

二人でカフェに行ったジェリーとジョージ。物件のことで揉めるのは嫌だからと、二人とも入居するのはやめようと結論を話す。それを聞いていた女性が物件について興味を持ち、成り行きで譲ることになってしまう。

ジェリー、ジョージ、エレインは女性主催の引っ越しパーティーに招待される。出席者は皆口々に新しい部屋のことを褒めちぎり、譲ってくれた親切に心からの感謝を伝える。それぞれに新居を逃すことになった三人は、後悔で素直に喜べないのであった。

・感想
安定の面白さ。サインフェルドはフレーズの面白さも特徴だけど、今回は特にキーフレーズ的な言葉は登場しなかったと思う。さりとてだからといって面白さが霞むわけではなく、いつもの四人の会話はすべて面白い。この面白さを言語化できるほどの学を持ち合わせていない自分が情けない。話の筋も悲哀に満ちてて良い。

当時のマンションや家電の話が登場するのが、アメリカ文化の学習の意味でも興味深い。あと私は間取り好き、物件好きなので、こういう話はたまらないです。

まだ四人の波長が仕上がっていない時期なので、面白さ的には70点くらいかな? 今後は身振り手振りやリアクションがどんどん大きくなっていくので楽しみ。それにしてもエレインが本当にかわいい(チャーミング)ので見ていて幸せです。

4. Male Unbonding

"Male bonding"...男同士の絆
/タイトルは"Un-"が付いた否定系なので「男同士の別れ話」的な造語

・あらすじ
野球観戦の約束をするジェリーとジョージ。二人がジェリーの部屋に帰ると、クレイマーが勝手に電話を取って誰かと楽しげに話している。ジェリーが代わると相手は苦手な幼なじみの男だった。幼なじみが子供の頃に卓球台を持っていたので仲良くしていただけで、今ではジェリーから連絡を取ることはなく、子供時代の代償を払い続けている関係だ。電話越しに彼に誘われ、断りきれず会う約束をしたジェリー。クレイマーは客が自分で作るピザ生地パイのチェーン店展開を思いついたと興奮している。

約束の日、カフェで食事が来るのを待つジェリーと幼馴染。幼馴染の、店員への横柄な態度や、話を全く聞いていないところについに耐えかねたジェリーは、「もう会わない方が良いと思う」と友情の別れ話を切り出す。幼馴染は号泣し、涙と鼻水まで流す有様。狼狽したジェリーは別れ話を撤回し、お詫びに野球観戦に誘う。幼馴染は機嫌を取り戻し、元の横柄な態度に戻る。

ジェリーは野球のチケットを譲ってしまったことをジョージに詫びる。しかし本来ジェリーも幼馴染とは行きたくない。話し合いの結果、二人分のチケットを幼馴染に譲ることにする。様々な言い訳を考えて、すっかり言い訳も出尽くした頃だ。エレインはジェリーの言い訳リストを発見して茶化す。

野球観戦の当日、ジェリーとエレインは部屋で暇を潰していた。するとクレイマーが帰ってきて、野球の試合を見てきたと言う。なんとジェリーの幼馴染と一緒に行ったというのだ。聞けば電話を代わった時にすっかり仲良くなったので誘われたのだと言う。ピザ生地パイの事業も二人で進めているそうだ。間もなく幼馴染がジェリーの部屋にやってくる。ジェリーとエレインの関係を知っている彼は二人を茶化し、今日のお礼にと野球観戦に誘う。二人は嘘くさい言い訳を捻り出して誘いを断る。

・感想
あらすじを書いていると改めてサインフェルドの面白さに気付かされる。ドラマ界隈ではよく「伏線回収が気持ちいい」と話題に上がるが、サインフェルドは何十もの伏線が張り巡らされてシーズン9まで駆け抜けていく。クレイマーの「ピザ生地パイ (pizza pie)」は今後何度も登場し、話の主題にもなったりするキーフレーズだ。

その他、あらすじには関係ない部分のジェリーとジョージの会話なども凄く面白かった。ジョージの「デート中にポケットから糸ようじが出てきた動揺で女の子に告白してしまった」というエピソードには、彼の情けなさや憎めなさが滲み出ていて、本当に面白い。

エピソードの副題は造語のため解釈に悩んだ。英語には"Male bonding"という言葉があるようで、これは「男同士の絆」を意味する。実際の副題では"Male Unbonding"という風に、"Un"を付けることで否定系にしていて、絆が失われる様子を表している。つまりこれは嫌いな幼馴染との別れ話のことである。

男二人の別れ話の会話では、まるで男女の別れ話の会話のようなセリフが使われている。「君のせいじゃない、僕のせいなんだ」とかの常套句を言うことで、男同士なのに何やってんだ、的な面白みがグッと増す。そういったディテールの部分も一つ一つが凝っていて、サインフェルド節という感じだった。面白さ的には75点くらい。

5. The Stock Tip

"stock"...株
"tip"...助言、秘訣、(サービスに支払う)チップ

・あらすじ
ジョージは儲かる株の投資話をジェリーに持ち出す。友達の友達が裏情報を知っているのだという。儲け話に乗っかり株を買うジェリーとジョージ。

数日後、株価が暴落する。ジョージは、話が違うと友達に事情を聞くが、友達の友達の消息が不明で何も分からないと言う。株を売ろうか悩むジェリー。ジョージは、友達の友達が入院していると知り、面識もないのに会いに行く。しかし話を出した途端、部屋を押し出されてしまう。状況は分からぬままで、ジェリーはこれ以上振り回されたくないと、ついに株を手放す。

ジェリーは付き合ったばかりの女の子とバーモントへ旅行に行く予定を立てる。二人の関係を第二段階へとステップアップさせようと意気込んでいたが、行ってみると宿はボロボロで、外は大雨。話題もなく雰囲気は最悪になる。新聞を開くと株価が上がっている。急な展開に驚くジェリー。

ニューヨークへ帰ってきたジェリーは、ジョージ、エレインと食事に行く。ジョージは株を手放さなかったため大儲け。二人にランチを振る舞い、富豪のような振る舞いをするが、ウェイトレスへの支払いではチップを渋る。

・感想
私は株に詳しくないのであまり分からないエピソードだったけど、株をやっている人だとあるあるがいっぱいで面白いんじゃないかと思う。

副題の"The Stock Tip"は、株の秘訣としての"Tip"と、最後にジョージが払い渋るチップ、二重の意味が掛かっているのかなと思う。ジョージはいくら大儲けしようとどこまでもケチな男であり、そういう意味でも株の「秘訣」を知らないのだなと思わされる掛詞的な小ネタだ。

旅行先での気まずい空気もおかしかった。面白さ的には65点ぐらいかな~。

■おわりに

サインフェルドの魅力を言語化するのは本当に難しく、記事を書いていて何度も悩んでは推敲を繰り返した。あらすじや感想など、上手くまとまっているか、魅力を描き出せているか心配だけど、少しでも伝われば嬉しいです。一話観ては内容を書き出すという作業は作品の構造的な面白さを見つめ直す良い機会になった。

何度も言うけど、サインフェルドはやっぱりキャラクターの会話が一言一句漏らさず面白いのが最大の魅力だと思う。物語自体は日常の些細な出来事を描いているのに、本当にセリフが考え抜かれている。ウィットに富んだユーモアとはまさにこのことで、常に100点の言葉や言い回しがポンポン飛び交うので、面白すぎて頭がおかしくなりそうになる。

ちょっと心配なのは、英語の言葉遊び的な要素も強いため、字幕や吹き替えではニュアンスが伝わりにくいかもしれないところだ。日本での人気が今ひとつな原因はここにもあるのかもしれない。とはいえ字幕の翻訳もとても上手くできてるし、日本語だけでも十分楽しめると思う(私の英語力は普通程度です)。英語の発音が明瞭で聞き取りやすいので、気軽な英語学習にも最適だと思う。

本作ではニューヨーカーの生活を描いているため、90年代アメリカの時代の変遷を追うことができたのも勉強になった。シーズン9まであるため、シリーズ終盤では開始から約10年の時が経っていて、世の中の様相も随分変わっていたりする。髪型やファッションが変化していったり(初期は特に凄い)、固定電話から携帯が登場したり。留守電文化における恋愛コミュニケーションの話とかは、私の世代からは想像しにくいことなので単純に興味深かった。

作中ではジェリーの本職であるスタンドアップコメディ(漫談)の様子も描かれている。日本ではスタンドアップは主流ではないので想像しにくいと思うので解説してみよう。日本のお笑いではエピソードトークなどの際、オチに向けてじわじわ盛り上げていって、最後にドッカンと落として爆笑を取るやり方が主流だと思う。一方、アメリカのスタンドアップは、ジェリーのそれを見る限り、小ネタでポンポン笑わせて積み重ねていく感じがする。最後にはオチというよりか、皮肉の効いたスタイリッシュな一言でウィットに締める。これはこれで凄く上手くできた「笑い」のフォーマットだと私は思う。

彼が日常生活で経験したことを題材として扱い(買い物の話とか車の話とか、本当に些細なこと)、その中のちょっとしたあるあるを、独自の着眼点から皮肉って笑いに昇華している。ジェリーのスタンドアップは題材が日常の些細なことすぎて、特に誰も傷付かないというのも、大衆に受けた理由もしれない。なんにせよ、薄暗いステージで真紅の垂れ幕をバックに、客前で笑いを取りまくる姿は大変かっこよくて憧れる。

「アメリカの笑いは単純で面白くない…」という意見をたまに耳にするけど、私はサインフェルドを通して、アメリカはアメリカでめちゃめちゃ面白い、ということを学んだ。もちろん日本のお笑いも大好きだ。やり方が違うだけで、その基盤を知っていればどちらもしっかり楽しむことができる。だって同じ人間なんだから。

百聞は一見にしかず。この記事を通して、少しでも『となりのサインフェルド (Seinfeld)』の魅力が広まれば嬉しいです。Amazon Prime会員のみんな!オラに力をわけてくれーー!!(再生してみて下さい!)

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!

■シーズン1を再生する

Seinfeld (字幕版)
エミー賞及びゴールデングローブ賞のコメディー部門で、作品賞を受賞したこともある「となりのサインフェルド」。業界屈指の人気と受賞歴の多さを誇る、長寿番組である。







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