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創作物(詩)

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#ナンセンス詩

【詩】詩篇2023

 2023年に書いた詩群。
 音楽ジャンルで言えばグラインドコアか?

「入会」
「公園」
「人格排除センター長はずるい」
「足の裏に」
「愛妻家」
「橋が落ちた」
「時計」
「応じても仕方のないピンポン芸を許すのは一心同体」

  入会

ハイエナに食わせる虫たちを両手いっぱいかき集めている若い女の腕を洗っているのは
蛇口の横でいつも水筒に口をつけている
囚人かつ夫人である友人 受け答えだけはわ

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【詩】詩篇2022

 2022年に書いた詩群。

 「子らしき音」
 「出発」
 「月」
 「口裏」
 「残響炎」
 「田舎」
 「時間短縮」
 「洞穴」
 「人魚」
 「俺の分身が隣でむごく殺されるのを見せつけられるだけの人生を面白がって生きているだけの分身であるところの俺の隣でむごく殺されていくのを見せつけてくる分身の退屈そうな人生」
 「農舎」
 「事故詩」
 「恋」

  子らしき音


子の声を聞きつける

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【詩】鉢

  鉢

金魚を監禁していることが
人生の楽しみのすべてのような
顔を晒して路上を歩く
通りすがりの小人たちが
車椅子の上を飛び跳ねながら
面白おかしく蹂躙している、
老体を

小綺麗な広告産業からつまみ出されて食うに困って
やむを得ず金魚を貪っている
好きな数字が「1888」であるような顔を
晒して路上を歩いている
シワにまみれた小人たちが
三輪車を捨てて車椅子に
乗り換えながら蹂躙している、

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【詩】塩夏

  塩を揉み込んだ夏の日差しが
  勃起しながら遍在するのを
  黙って見過ごそう

干からびている湯船の底へと
次亜塩素酸ナトリウム
したたらせているチューブの先で
夏の気配が淀んでいる

 裸の背中をマッチで炙って
 太陽の下 さらし者にして
 火傷が日焼けに覆われ陵辱
 されるがままにまかせよう

見知らぬ誰かとサウナでおしゃべり
している気分を味わうつもりで
火事場で拾ったカセットテープを

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【詩】廃屋

  廃屋

盛大に発表されていく廃屋の数を水増しするための年月が
まるで歴史的な日々のように
生存圏を通過する

まるで
情緒であるかのような
廃れ具合の多数性

年月が
真新しい廃屋の奥の
ゴキブリ捕りを腐らせようと
ささやかな善意を振りまいている

新しい自由

新しい害虫

個性豊かな国民たちに
あてがうための廃屋以外
歴史の重みを語るものなど何一つない
新しい国

【詩】日向

  日向

灰色のカーテンの向こう側には窓などないと誰もが薄々気づいている密室で
通気口が
夕方の外気を
陽光がわりに差し入れる

風通しの良すぎる密室

自分のことを広大な空だと思い込んでいる天井

「歩行者」たちは
誰にも見せたことのない美しい靴底を
まるで大地であるかのような
床にへばりつけている

饒舌な外気

せめてもの夕方らしさ

まがい物の陽光は
灰色に染まることを
何もかもに強いて

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【詩】気候

  気候

よしんば人々を粉々にしていたからといって
俺が善良であることに変わりはない
わ行をうつむきながら復唱している釣り人から
せしめとった金で買ったゴム底の郵便船を
画鋲で穴だらけにしてから水に浮かべて客を呼んだからといって
少しも傷つかないことの最たるものこそが
この俺の善良さ
砂を弾いていく蜘蛛の踏みにじってきたむき出しのアスファルトを
思いながら踏みにじっていく俺の靴底の蜘蛛たちが

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【詩】死ね

 1
汗水たらして働いたかいがあって立派な棺桶を買えたらしく
隣人が
良い気分で死んでいる
私のような良い隣人に恵まれたことを
感謝しても良いでしょう、と
胡散臭い口を広げて
吐き出した日々を思い出す
まるで「生前」であるかのような「思い出」であるかのような
遺書のような詩情を漂わせている隣人の棺桶に
蹂躙されてきた何者かの覗き趣味を正当化してくれそうな
花のような穴を
あげるかのように
空けよう

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【詩】破水

  破水

知らない乞食が垂らした洟を
すくいあげまいと拒んでみろよ
少女の群れが巣に戻れずに
道にたむろする羽目になる

よお汚い涙を恥ずかしげもなく流しっぱなしで消えようとする厚化粧したガキみたいな真似をしてみろよ
もう他人じゃない乞食の良心次第でいつでも足止めさせて恩を着せてやろう

死なせたくなる
魅力をたたえた
顔をいくつでも
飲み込んでくれる
海のように深い
粘液を
すくいあげまいと拒

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【詩】牛

  牛

 おう 放火魔が漏らした小便 破水に似ている 液漏れした乾電池に降り注げば どこからどこまで体液なのか 分からなくなってくれそうな 段取りの悪い排泄者の 苦し紛れの殺虫ごっこに ライターの火を近づけるのが 善意
 放火 犯行予告が好きなラジオを 乳頭に押し当てている 牛のような女の脳漿 体液に似た味がしている 堕ろされて間もない 経血
 将来、兵士になるはずだった精子が、コンクリートの隙

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【詩】小便臭い救いの光が


小便臭い救いの光が
覚醒主義者を置き去りにして
夜の売女を打ちのめす


光の粒のふりをしている虫たちの通り道が俺の部屋で床を塞いでいる
発言権以外は何も行使できない虫たちのざわめきが
救われていくつもりでいる通り魔の
哀れみを誘っている

【詩】司書

  司書

表紙くらいしか汚れていない
誰も読まないビジネス書が
救うはずだった人生を
背負い込んでいる読書家たちが
増えていくのを目安に近づけ
図書館へ

人知れず焼かれ煙と化して
鼻腔をくすぐるはずだった
読む価値のない実用書に
挟まれ書棚に並んでいる
ノートをほんの何冊か
救い出すために
図書館へ

書庫であるという事実を除いて
知的な気配が少しもない
だだっ広い空間で
十年前のヒット曲を

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【詩】光線

  光線

俺の体から出る光の線が
壊してはいけない機械を
壊す

何本もの光の線が
傷つけてはいけない壁を
ひっかく

押してはいけないすべてのボタン
触れてはいけないあらゆるパネルはことごとく
見計らったかのように
光の線の先にある

俺の体から出る光の線が
残してはいけない跡を
束になって残しにかかる
読ませてはいけない跡を
束になって読ませにかかる
俺が生きてきた経緯すべてを
俺の代わりに

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【詩】怪人

  怪人

怪人たちが
悪巧みするついでに犬を殺していく

悪知恵を働かせる
ついでに犬を殺していく

悪事を重ねるついでに暇を
つぶすついでに刑吏に寝返り
人を助けて世を直す
ついでに犬を殺していく

怪人たちが
野放しにされるついでに押しかけ
飼い主たちを
火葬する