見出し画像

気仙沼市の夏、学びの夏〜とある4つの学び〜

宮城県気仙沼市は、学びの機会がとても多い。地方と都市の学習環境の格差は度々語られるし、格差が存在するのは一定の事実だと考える。

ただそれは、大学進学といった学力・学歴の獲得における学習環境の格差であり、たとえば生涯学習の点においては、格差はあまりないのでなかろうか。

気仙沼市は、まち大学構想を筆頭としてまち全体で学びの機会を創出し、その内容も多岐にわたる。詳細は以下に譲る。

また、市独自の取り組みだけでなく、市民や有志が生み出している学びの機会もある。たとえば読書会が開かれたり、街の歴史や街で行われている営みを学ぶ探究学習の機会が創られたり、本noteでも取り上げている英会話に触れる機会があったり、選択肢に富んでいる。

今回のnoteでは、8月後半から9月前半にかけて行われた、気仙沼市での学びに関するイベントについて紹介しようと思う。

気仙沼市と早稲田大学が包括連携協定を締結! 東日本大震災から続く関係に新展開

気仙沼市は今夏、早稲田大学と包括連携協定を締結した。

防災・減災、産業振興、地域の活性化・まちづくり、教育の振興発展、芸術文化・スポーツの振興発展を行うことを目的としている。

東日本大震災以降、ボランティア活動等を通じて紡がれた縁がより強固な形となって結実した連携だと思われる。

2024年8月25日。気仙沼市と早稲田大学の包括連携協定締結を記念して早稲田大学総長 田中愛治氏による講演が気仙沼中央公民館にて開催された。

気仙沼中央公民館①
気仙沼中央公民館②

気仙沼中央公民館を訪れたのはこれが初めてである。軽く道に迷った。落ち着いた佇まいの建物で、テラスや屋上など、景色や四季折々の気候に触れられる造りになっているのが印象的だった。

講演は、これまでの早稲田大学と気仙沼市のつながりや現在早稲田大学が行っている学内の取り組み、そして今後気仙沼市とどのような関係を築いていきたいかといった話が行われている。

過去、現在、そして未来の時間軸について凝縮した内容を伝えられており、未来への期待感が高まる講話だった。今後、現実にどのような形で両者の関わり方を目にできるようになるのか、今から気になって仕方ない。

市民が講師となり専門領域の講義を行う「おらいの学び」開催! 気仙沼のまちが大学になる一日

2024年9月1日。アジアカフェの最終回が開催されている中、気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザでは学びをテーマにした新たな取り組みが開催されていた。その名も「聞いてけらい 来てけらい おらいの学び '24」である。

簡潔に説明すれば、気仙沼を中心とした住民が講師となり、それぞれのテーマで授業を行う学びの機会である。まさにまち全体を学びの場とする構想が凝縮されたようなイベントと言える。

内湾では朝市が開催されていた
当日のチラシ

筆者はお金にまつわる授業とぬま大学の第10期生が講師として統計をテーマに行った授業に参加した。地域住民が提供しているとは思えない濃密な内容となっており、まるで本当に大学の授業を受講しているかのような時間で、深く感銘を受ける内容だった。

地域で生活していると、その人の人となりは分かるが、どのような仕事を行っていて、どういった知見を持っているのか分からない、といった場面に遭遇することがふとした瞬間にある。

しかし、おらいの学びのような機会があると、人となりだけでない新たな一面を知られる。そんな発見を得られる意味でも、訪れて良かったと思える魅力的なイベントだった。次回以降にも期待したい。

地方の抱える課題・空き家問題に語り合う! 気仙沼社会課題研究所(シャカケン!)の夜

9月2日。気仙沼社会課題研究所(シャカケン!)によるハイブリッドセミナーが開催された。本取り組みも新しい取り組みである。詳細は以下に譲る。


第一回目となる今回は、町の抱える空き家問題に焦点を当て、その解決策を模索する場であった。当事者として4名の実践者が登壇し、各々の活動の紹介を通じて、空き家問題に対するアプローチの知見を共有している。

最初に登壇したのは、亀谷洸平氏である。有限会社根口商店の専務取締役として、彼はプロパンガスや灯油といったエネルギー事業を営んでいる。人口減少の足音が日に日に高くなる中、亀谷氏は唐桑町で顧客が減り続ける未来を考え、不動産事業に進出した話を展開した。

不動産事業として空き家を管理し、移住者や利用希望者とのマッチングを試みる中でぶつかった壁の話は、多くの参加者の興味を惹いている。その壁とは、物件の立地やサイズ、法的障壁などであった。

様々な壁と対峙する話の中で語られた「地域そのものが魅力的にならなければ、この問題は根本から解決できない」の一言は、空き家問題のみならず地域が抱えるありとあらゆる課題に共通しちえるテーマのように感じられる。

実際に不動産事業に参入し、様々な活動をした結果にも触れられている。結果として、エネルギー事業の顧客基盤を支える成果に結びついており、課題は多いものの不動産事業の生んだ価値が見える話となっていた。

続いて登壇したのは、千葉可奈子氏である。気仙沼市移住・定住支援センター「MINATO」で働く彼女は、空き家バンクの運営に携わっている。気仙沼市の空き家バンクは登録された物件がすべて公開される特徴を持っている。

それにより、空き家バンクとしての役割だけでなく、利用者と所有者をつなぐ役割を果たしている。空き家バンクでは、賃貸物件の需要が高く、新築購入までの一時的な住居を求める人々の利用が目立つとされていた。

それ以外にも空き家バンクで動いている物件の特徴や気仙沼市の空き家バンクならではの取り組み、仕組みや日々の活動に込められている想いの話にも触れられていて、空き家バンク運営の難しさだけでなく、空き家バンクが地域にもたらしている確かな価値を感じられる話になっていた。

三番目に登壇したのは、渡邊享子氏。彼女は石巻市で株式会社巻組を経営している。巻組は、空き家などの一般的に資産価値が低いとされる不動産を活用した、地方創生の取り組みを続けている。

巻組の象徴ともいえる取り組みが「Roopt」というシェアハウスビジネスだ。「Roopt」は、NFTを発行された賃料支払者が賃貸運営に参加する新しい形の居住スタイルを獲得できるサービスである。

いわゆるDAOによる運営が構築されており、通常の賃貸とは異なり、賃貸物件を通じた自己実現を行える。空き家の活用に留まらず、新しいコミュニティの形を想像するビジネスモデルは、地方創生の一手としても大いに関心が寄せられる内容だった。

最後に登壇したのは、島田真吾氏だ。島田氏は香川県三豊市で「くらしの不動産」を経営している。三豊市は、観光客が多く訪れるものの宿泊施設の不足により、滞在客を獲得できない構造に悩まされていた。

そこで島田氏及び地元の事業者たちは、一棟貸しのゲストハウスやシェアハウス、ホテルを立ち上げ、その課題の解消に乗りだした。それだけではない。地域の交通インフラや空き家の大胆なリノベーション、カルチャースクルールなど多種多様な地域に欠けていた存在を整備した。

そうすることで、住む人々が心地よく暮らせる仕組みが次々に生み出されていった。面白いのは、多数の事業者の力を集めてリスクを分散する独自の金融モデルによって街の課題を解消していった点である。

島田氏の行ってきた街づくりは、地域の事業者が一つの意志の下に協力し合える街ならば再現できる素晴らしいモデルである。そのため、新しい取り組みを行いたい一方で原資に困っている街にとって、とても参考になる話に感じられた。

シャカケン!は来月以降も予定されている。次回は、多くの地域が問題意識を持ち、様々な取り組みを行っている移動(モビリティ)がテーマである。興味のある人はぜひ参加して欲しい。

ITベース・アスナロウ荘でぬま大学第10期の第4回目となる講義に参加する〜魚研での昼食を添えて〜

9月8日。ぬま大学第10期の第4回目講義が行われた。

およそ2ヶ月振りとなる講義である。今回は、ぬま大学のコーディネーターである志田淳氏、今野哲氏の2名が講師として「誰を幸せにしたいか」がテーマとなる第4回講義受講生に、これまで〜現在行っている活動、その根底にある考えや想いについて講義を行っている。

魚研
なかおちメカブ丼セット

ところで、ぬま大学は昼過ぎから行われるので、恒例となった昼食である。今回は、大島ウェルカムターミナルの魚研でなかおちメカブ丼セットを頂いた。驚くことに900円である。衝撃的な価格だった。提供可能量は限られているらしく、早めに注文しないといけなかったようだ。注文したのは12時前で、これがラストである。運が良かった

魚研
住所:宮城県気仙沼市浦の浜363
定休日:火曜日
営業時間:水曜日〜月曜日 11時-16時
※コード決済可能

Google
HATOBA のソフトクリーム

なかおちメカブ丼セットを食べた後は、HATOBAのソフトクリームを頂いた。HATOBAは以前記事に取り上げた喫茶店である。

HATOBAのソフトクリームは絶品である。他とは明らかに異なる美味しさがある。ぜひ食べて欲しい。なお、暑くて風が吹いている中で食べたため、ソフトクリームの飛沫が服に滴模様をつけるに至った。3日振りくらいのアクシデントである。人間とは学習しない生き物だと強く感じる。

アスナロウ荘

ぬま大学の会場はアスナロウ荘である。

大島小学校

アスナロウ荘は元々中学校だった建物を改修して造られたシェアオフィスである。裏手には小学校がある。

中学校の痕跡が見られる

先述した通り、今回は志田氏と今野氏の講義を聴いた。その後両名に対する質問時間があり、グループワークを行い終了となっている。具体的な講義内容は記載しないが、筆者にとって心から聴いて良かったと思える内容であり、学ぶところが多かった。とりわけ自身にとって欠けている点を大いに感じさせる内容であったため、改めて考えるきっかけを頂けており、感謝の念が絶えない。

グループワークでは、素敵な内容のお話と素敵な内容のプロダクトに触れられて、大いに刺激になった。自分の内側からは絶対に出て来ない内容に触れられる機会を得るのは、とてもありがたいものである。改めて頑張らなければならないと思いを新たにする時間であった。

陽が落ちるのが早くなった
団平

団平
住所:宮城県気仙沼市本浜町1-2-16
定休日:火曜日
営業時間:17時-22時
※電子決済可能

団平

懇親会は団平で行われた。美味しい刺身を肴にして、魚料理と芸術的な手造り小物についての話を同じ受講生と語り合えてとても学びがあった。魚の話は実際にそれを仕事にしている方に聴くに限る。実りのある良い時間だった。


筆者のnote活動は、皆様からのおひねりによって支えられております。
本noteをわずかでも良いと思っていただけましたら、ぜひ以下の記事からおひねりをいただけますとありがたく存じます。
いただいたおひねりは、本note活動維持、地域への還元に役立たせていただきます。

気仙沼市に関する記事をマガジンにまとめています。ぜひ読んでください:こちら
気仙沼市で開催されるイベントなどが「気仙沼の掲示板」にまとまっています。ぜひブックマーク・シェアをお願いいたします。
以下は広告です。ぜひ購入して余暇を充実させましょう。


この記事が参加している募集

皆様のサポートのお陰で運営を続けられております。今後もぜひサポートをいただけますようお願い申し上げます。