マガジンのカバー画像

氷の世界

22
叙情詩を描く心の存在は、時間がとても影響しています。「氷の世界」に気付いたのは、17歳の頃でした。 その時、私は「氷心」ひょうしんの存在に気付きました。「氷心」とは、氷のような… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

追憶

追憶

眠れないのです

君の形が 目の奥まで

もうすぐに 夜は明けて しまうというのに

長い旅の終わりが見えて
僕は ひどく疲れてしまい

もうこれ以上って
心は呟く

あたたかな国へ 光を求めて
今度は 西に 歩いてみよう

手のひらで 
小さな
花びらは
ほころんで
散る

もう
その儚さを
あなただとは
思わない

僕は
ぬかるみに 癒しを覚え
泥だらけになった靴を 
愛しんだ

喉の渇き

もっとみる
あの頃

あの頃

小さなおひざを立て 両手を組んで
神様にお祈りをした

「麻疹にかかった弟をお救いください」

私は泣いた

高熱でうなされる弟を 思うと 本当にかわいそうで 切なくて悲しくて とてもつらかった

あの頃

幼いのは 私たち二人で
姉たちは 学校に通っていたから
ちゃんと自分達でご飯を作った

幼さは 実は宝で とても尊いものと
大人は気付けない 
この世には 良い親なんていないし
良い家庭もない

もっとみる
夜の魔神 

夜の魔神 

宵闇 葉桜 薄明かり

囀る 鶯 漆黒の
海に 沈んだ 歌姫と

抗う 波間の 最果てに
浮かぶ 小舟と 朧月

波のまにまに さざめく 灯り

お前の涙と ちぎれた想い
花びらほどに 浮かんで 消える

もう泣かないで 涙を お拭き
お前の 好きな あの人は

歌に誘われ やって来る

あの人は 

あの人は

お前の好きな
あの人は

夜の支配者
魔神なる

姿なき 魔神とて 逢瀬の 運命(さ

もっとみる
それが愛であるならば

それが愛であるならば

銀色に光る道がある
秋には 銀杏(いちょう)という黄色い葉っぱで埋め尽くされて 私はあなたと 静かな喜びの中で 歩く

枯葉のように カサカサと音はしないその
黄色い葉っぱは 二人して歩く 天国の絨毯 柔らかな光沢で あなたを包む

やがて秋風の最後には 少し寂しい音をさせて 去り行くのだ

秋の空には宵の星が光り 今日を 生きた二人を祝福してくれる

私はあなたを愛している

この星の輝きと

もっとみる
本当の心

本当の心

僕は震えてた

三月 弥生
薄紅の朝

春の香りがして 
小さな枝の蕾が膨らむ

もう 春 
僕には お別れの時がやって来た

冬が逝くなごり 
冬に 悲しくなる
冬に 切なくて
逝ってしまう 季節を 
誰も留めることは出来ない

全てを白く染めた 冬
身体中が凍りついて
感覚を無くした 冬
冬に 巡り合い
冷たさの中で 時を過ごした
あたたかな君しか 知らない

過酷な別れを 
冬が逝くのは

もっとみる
純情

純情

君に捧ぐ

生まれた時から 瞳
淡い灰色

道を探して 生きる道を

僕は困難に出会い 十分苦しんで 果てを求めた

あの時 あなたに出会わなければ
ここにいない

砂浜に立って 風を見る
貝殻の声
透明な石の音楽
唐突な雨 蘇った 記憶

瓦礫の中から
咲いた花を摘み取って 
あなたに届けた

もうそれで 振り返ることもせず 今

僕は
あなたのぬくもりの中で 
生かされることを知り

もう

もっとみる
心を

心を

もう終わりにしませんか

探し疲れて 望み過ぎて 散った心を

その鎖みたいな呪縛 過去を全部
飲み込んだ心を

あなたのように 

誰にも告げず 消えることが
初めからの約束で 世界がどんなに 錯綜しても
立ち止まらずに 終わりにする心を

何事もなかったように 
荷物を片付け
窓を閉め
ドアに 鍵をかけたら
螺旋の階段を降りていく

私の記憶の 
燕の詩の断片や
あなたを綴った回顧録 

翡翠

もっとみる
実はね

実はね

内緒の話があるんだ

実はね
今も直ぐ
君の隣にいて
話を聞いている

君がね
アイスを食べる
その後
街で買い物をして
一つ手前の駅で降りたら
少し歩きたいって

実はね
君には気付かれないように
実はね
透明人間
ほらね

君の心臓に
聴診器を当てる
白衣の先生
僕はね

だって
全部知ってるよ

君の好きな音楽
好きな食べ物
好きな色
好きな場所
そして

一番好きなひと

だってね

君が

もっとみる
君を拐って

君を拐って

走る夜汽車は 止まらない
君が泣いて 星を呼ぶ

愛し過ぎた誰かの胸で 君は涙が
止まらない

君の想う人は 僕じゃない

悲しみの天使の
魔法はもう使えないから

君は 両手を伸ばして 星を呼ぶ

あなたの心に 灯る愛
僕の知らない誰かのイニシャル

張り裂けそうな胸で 吠えていた僕は

僕は 狼になったみたい
真っ黒な汽車を追いかけて
走り続けた夜のこと

あなたのこと

僕のこと

湖に 溶

もっとみる
轍(わだち)

轍(わだち)

僕を掴んで
抱きしめた君の
あまりに細い指

その次の水曜日
この地上を去った

あの時のあなたは
最期の別れを
全身にこめて僕を
抱きしめたんだろ

君のいなくなった部屋
カーテンは音も無く
窓の光を容易に迎え入れ
忘れもののような
植物たちは
重い息をする

何故…

運命や
宿命が
人の命を左右して
僕たちが
終わりを迎えなければならなかったの?

だけど僕には
止めることができず
君は力尽

もっとみる
strawberry

strawberry

可愛くて 淑やかで
それでいて刺激的
いつも 魅了された

ねぇ その香りは君がどこにいても
僕には 容易く見つけることができたし
うまい具合に 風に溶けて やって来た

ねぇ 本当は 相思相愛

春はおもむろに消えるのが好きで
夏は短く照りつけた
秋は隠れてしまい
たちまちは冬なんだよ

僕の心は
君の名前をくちずさむだけの
臆病者
本気で会いたいのに
いつも探しているのに
綺麗な君に とどかな

もっとみる
in Rest …

in Rest …

in Rest…
それは夢 まだ枕に 顔を伏せ
月の夜 神秘の光に 呼び起こされ

僕はうつろに 曖昧な空を見る 

悲しみが雲のよう
冷たい雫は 耳に流れ落ち
残り香が 僕を包み
何かを終わらせようと
思い出をかき消して行く

心地良い調べに身を任せ
全てを忘れることにした

一時の安らぎ 優しさ 悲しみ、
悲しみ 優しさ 同じ物

in Rest…時間は止まり
静寂を求めて 森に眠る

君は 

もっとみる
小さな思い出

小さな思い出

時間はあまりにも待ってくれない
通りすがりの人を 君と間違えて
追いかけてしまったのも思い出

寂しいなんて言ったら僕の負けだよ
今までせっかく我慢してきたのに

雨と風の昼下がり
その冷たさは容赦なく僕の頬を殴る

今夜は …静かな夜に
一人静かに照明を落としてぼんやり
きっと
ワインを暖めて飲んでいたい

未だにまだ信じられない
君のいない部屋
その温もりと香りが残されている
この部屋には ま

もっとみる
あなた

あなた

ネコのとなりで
CDからピアノの音が流れる時間
心地よく

あなたを描いた日記帳は赤茶けて
大好きだった紅茶の匂いだけがする

カーテンを開けると広がる澄んだ空色は
悲しんだ過去を望まない
全部吸い込んで逝ってしまった

忘れようとしない
思い出すこともない
私は形を変えることが出来たから

あなた

あなたが必要
あなたは全て
あなたのぬくもり
そしてここに
私と一緒に 生きている
永遠に
一人

もっとみる