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「世界は祈りでできている」

「世界は祈りでできている」

世界は祈りでできている

祈りは消えない。
願いは終わらない。

誰かの思いは目に見えない
ところで静かに降り積もり
溢れる時を待つ。

やがて積もった祈りの海は
マグマのように熱くなり
小さな刺激で爆発する。

その爆発が火をつけて
その脳みそが回りだす
そうしてモノが生み出されるのだ。

良いも悪いも元を辿れば
誰かの祈りであったのだ。

世界は祈りでできている。

宇宙と歴史のはじまりが

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「天才とホームレス」 第8話

「天才とホームレス」 第8話

さっそくロードマップをおっちゃんに見せる。

おっちゃんはじっくり見た後、ニヤリと笑って
「あとは社長と話せや」
と、言った。

3人で猪肉を食べて解散した。

次の日、河川敷にあの3人が遊びにきていた。
宇宙の映像を夜まで眺めていたあの3人だ。
町工場に派遣されて3ヶ月ほどが経っていた。
数学女子のセナ、パソコンオタクのハマ、日焼け坊主のヤヘイである。

昨日に引き続き、河川敷は宴会である。

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『公園物語』 その6

『公園物語』 その6

二つ目の砂場に着手しはじめた。

うちの近くにある公園は、
高低の2箇所に分かれる。

低いところにあるメインの大きい公園と、
僕ら家族が拠点にしている高台にある公園だ。

その二つの間に森がある。
その森を降ってもう一つの公園を通り、
僕らはいつも児童館に行く。

その低いところのメイン公園の砂場も、
綺麗にすることにした。

しかし、骨が折れた。

行くのに山を降らなければならないからだ。

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「天才とホームレス」 第7話

「天才とホームレス」 第7話

河川敷に着くと、目一杯に紙を広げて、
てっぺいが何かを描いていた。
牧場で描いていた地図に熱心に書き込んでいるようだった。

それが読めない文字なのか、絵なのか、僕にはわからない。
でもとにかく思いつくままに書き殴っている。
出てくるアイデアに手が止まらないという感じだ。

おっちゃんは微笑みながら、その横を通って家に入っていった。
僕はてっぺいをずっと見ていた。

一時間が経つ。
てっぺいはまだ

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『公園物語』 その5

『公園物語』 その5

僕はとにかく、高い山を作ることにした。

砂場もすっかり綺麗になって、娘も砂場に飽きてきて、
何をしようかと悩んだ末に、でっかい山を作ると決めた。

とにかく砂を集めていく。
100均で買ったスコップを僕が、冷凍庫で氷を掬う用のスコップを娘が持って、そのプロジェクトは動き出した。

これには理由があるんだ。
前の梅雨明けに学んだが、砂場は放っておくとどんどん草が生えてくる。
雑草の、根っこも種も根

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「天才とホームレス」 第6話

「天才とホームレス」 第6話

その牧場はハイテクだった。

一見、家族経営の小さな牧場に見えたそこには、たくさんの科学技術と哲学が詰まっていた。
そこは完全に自給自足になっていたのだ。
電気、ガスなどのエネルギーも、だ。
ここは本当に日本なのか?

僕が学んだ限りでは、日本の食料自給率は世界でも最低水準で、エネルギーに関してはことさらに低いはずだ。
それがここでは、、、

BBQの後、牧場の全貌を見せてもらった。
牧場は思って

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『公園物語』 その4

『公園物語』 その4

公園に"救い"の手が入った。

行政だ。

公園のボーボーに伸びていた雑草を一気に刈ってくれたのだ。
電動の機械で。
僕が手動でやった草刈りはなんだったんだと思うけど、まあそれはいい。
今がいいならそれでいい。

それによって公園がすごく綺麗になった。
なるほど、清潔感って大切なんだな。

これで「虫がいるからあの公園いきたくない!」って言ってた子どもたちも公園に来てくれるだろう。
どうやら僕は公

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「天才とホームレス」 第5話

「天才とホームレス」 第5話

中学が始まるまでの春休み、
僕らは毎日おっちゃんのとこにいた。
朝から晩までだ。

あれからママがとやかく言うことはなくなった。
まだパパとは話せていないけど。
おっちゃんはそのことについて、何か聞いてくることはなかった。

その日、おっちゃんのナワバリの広さに、さらに驚くこととなった。

朝、おっちゃんが「肉が食べたい」とつぶやいたかと思うと、農具を置いて歩き出した。
僕らも声をかけられて、おっ

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『公園物語』 その3

『公園物語』 その3

砂場の草はなくならない。

だいぶ減ったかと思ったら梅雨に入り、
梅雨が明けたらまた生えていた。
しかもけっこうしっかりしたやつ。

悔しさに混じって、まだ続けられるという安心があることに、僕は驚いた。

そろそろ暑くなってきた。
夏になったらどうなってしまうのか。
まだ草を抜いているのだろうか。

終わりの見えない草抜きを、終わりが来るまで続けていく。そのうち何かが見えるはず。

そんな時、妻が

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「天才とホームレス」 第4話

「天才とホームレス」 第4話

「お前は何をしてるんだ」

第一声がそれだった。
グッと胸が苦しくなる。

「この大事な時期に遊びまわって、
 中学受験もせず、母親にもそんな態度で、、、」
相変わらずこっちの話は聞かない。
ろくに家にいないくせに。

「僕は公立中学に行きます。
 私立受験はしません。まあもう間に合わないけど」
カッとなって立ち上がった。
前と同じだ。
同じじゃダメだ、と思って言葉を絞り出した。
「あのさ!
 僕

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『公園物語』 その2

『公園物語』 その2

天邪鬼で多動症で注意散漫の僕は、
おそらく苦労した人生だった。

なにかしなければいけないことがあるときは、
なるべく自分を騙して、これは別に大事じゃないと思った方がやれるのだ。

なるべく「べき思考」のプレッシャーを減らさなければ、僕は苦しくなってしまう。

小学校の時はずっと授業中に小さい声で歌ってたし、
中学の数学のケアレスミスは止まらなかったし、
高校で受験勉強中、両足で貧乏ゆすりをして、

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「天才とホームレス」 第3話

「天才とホームレス」 第3話

てっぺいは「教室ビジネス」を急速に発展し始めた。

家庭教師が教えてくれたことがある。
「良いビジネスモデルは売れる」
僕はこのとき、この言葉を理解した。

てっぺいはクラスに弟子を作り始めたのだ。

「えんぴつけずり」「消しごむハンコ」の注文は増え続けていた。
そして自分でもできるんじゃないか、という男たちも出てきていた。
それを見て、「教えてやろうか」と声をかけていったのだ。

そして注文をそ

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「天才とホームレス」 第2話

「天才とホームレス」 第2話

日曜の夜、僕にパパとの交渉の場が設けられた。

毎日あった家庭教師を半分に減らしたい。できるだけあの河川敷のブルーシートの家で、てっぺいとおっちゃんと過ごしたい。そして門限を6時に設定し、余計な心配をされるリスクを減らしたい。だから、まずてっぺいの話をしてその次、、、

「ダメだ」
は?

なにも言っていない内に放たれたパパの一言目がそれだった。
あまりの強引さにイラついた。
用意してただけに狼狽

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「天才とホームレス」 第1話

「天才とホームレス」 第1話

小六のこんな中途半端な時期に転校してきたコイツは、ひどく個性的な見た目をしている。

髪の毛はボサボサで、服は汚れていて、ずっと口を開けている。
授業中もずっと歌ってるし、貧乏ゆすりもひどい。
黒板を見ることもなく、何かをノートに書き殴っている。

かと言ってずっとひとりぼっちなわけじゃなく、休み時間になるとクラスの人気のある女子を口説いていた。
とにかくマイペースで周りの目は気にしない。
だいぶ

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