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「天才とホームレス」 第9話

「あ〜、これはビジネスとしてはダメだねぇ〜」
その言葉に、目の前が真っ白になった。

「いや、あくまで、、、」
社長さんは続けるが、そのあとの言葉が入ってこない。
てっぺいもあんぐり口をあけている。

「今日はもうやめとこっか」
ニコニコしながら社長が言った。
僕はハッとして、
「あ、すみません、、、
 あの、、、」

「いや、わかるよ。
 ごめんね、キツイこと言って。
 おっちゃんに本気でやれって言われてるからねぇ。
 また話そう!」

「最後にこれだけ。
 アイデアとしてはほんとに面白い。
 これはやろう!
 でもお金、お金のことを考えてほしい。
 良くも悪くも、ビジネスはお金なんだよ。
 頼むよ」
そう言って僕ら二人の肩を掴むその手は力強かった。
この人もまた、僕らに本気で向き合ってくれているとわかった。

それにしてもショックだ。
河川敷の土手の上に座る二人。

プレゼン資料は僕が作った。
正直、めちゃくちゃ大変だった。
でもてっぺいに見せたらめちゃくちゃ喜んでくれたから、「これはいける」と思ってた。

「なぁ、ゆきや。なにがあかんかったんやろ」
いつになく弱々しい声だ。
僕は黙って考えていた。

「おっちゃんに聞いてみるか?」
やっと出た言葉がそれだった。
「そやなぁ、、、。
 いや、でもそれ悔しない?」
わかる。。。
僕もそんなことしたくない。
「だよな。
 それは最終手段だよな」
聞いてもおっちゃんは答えてくれるだろう。
でもこれは僕らの宿題だ。

「よし。
 これは僕に任せてくれへんか?」
そう言って立ち上がった。
「え?」
驚いているてっぺい。
「これは僕が得意な気がする。
 お金って言ってたし。
 僕はてっぺいのアイデア、天才だと思うから。
 ここからは僕にやらせてくれよ。
 てっぺいはもっともっとアイデアを出せよ」

てっぺいはぐっと口をつぐみ、
「わかった。」
と、頷いた。

僕らはしばらく夕日を見ていた。
長い沈黙の後にてっぺいが言った。
「負けたなぁ」

「うん。」
染みた。



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