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『公園物語』 その8

炎天下の2時間鬼ごっこはキツい、、、。

ラジオ体操に行き続け、3日に1回は鬼ごっこに誘われる。
どうして小学生は鬼ごっこが好きなんだろう。
僕が鬼の時が面白すぎるので(大人だからわがままも暴言もぶつけられる)、
「もう、あんたがずっと鬼やってよ!」
、、、それのどこが面白いんや、、、。

とまぁこんな感じで順調に仲良くなる。

2週間はあっという間に過ぎた。

そのラジオ体操をやっているのは、林さんというおじいちゃんだった。
子どもたちから「おい、はやし〜」と言われてもニコニコしている。
そして余計なことをしたらしっかり叱る。
文句をダラダラ言ってる小学生たちもうまく扱う。
すごい。

そして聞いているともう何十年もこの活動をやっているらしい。
もちろんボランティアで。
本当にすごい。

みんなの話じゃ、林さんはここら辺でも有名な人らしい。
いろんな委員をやっているという。
この人と知り合えたことも、実はすごいことなんじゃないか? すごい広がってるんじゃないか?
と、帰り道に微笑んだ。

ある日、1人の少年の親が来た。

僕を怪しげに見ている。気がする。
そりゃそうだ。
こんな日に限って娘は連れてきていない。

さすがの林さんは知っているらしく、林さんを見つけて駆け寄っていた。
「あのヒゲ面のおじさんは誰なんですか??大丈夫なの?!」と言われている気がした。
でも林さんが
「あの人は、いっつも子どもたちと遊んでくれてね。
 ほんとにいい人ですよ!あっはっは!」
と言うのが聞こえてきてぐっときた。
なんて信頼してくれてるんだ、、、林さん、、、。

それで安心したのか、その後のそのお母さんの目は優しくなった。

ラジオ体操が終わり、スタンプに並んでいる間に、
なんとそのお母さんが話しかけてくれた。
「いつもこの子がお世話になってます〜!
 いっつも遊んでもらってるそうで!」
「いえいえ!こちらこそ!
 うちの娘ともよく遊んでくれるんですよ〜!
 めっちゃしっかりしてますねぇ!」
娘がいるアピールをここで挟む。
「あ!娘さんがいるんですね!」
パァッと顔が明るくなる。娘の力は偉大だ。
「そうなんです〜! 2歳なんです〜!」
「えー!
 この子ったらなんにも言わなくて、もう!
 最近になって急に食卓に聞いたことの名前が出てきて、え?だれ?って聞くと、ヒゲが生えた30歳っていうからなんかびっくりで!しかも呼び捨て!
 ごめんなさいね〜」
なるほど、、、
そら怪しいわ。

でもここで誤解が解けてよかった。
それどころか、
「娘さんを連れてラジオ体操に来てるなんて、いいパパですね〜!!すごーい!」
と、評価が逆転している。不思議。

なんにせよ、よかった。
これは大きな転換点。
保護者に届いた記念の日。

また、世界が広がった。

帰り際に、
「よ〜!いつもありがとうね〜」
と、林さん。
「いえいえ〜、ありがとうございます〜」
と、言うと、
「君、これ受け継いでくれへんか〜」
と笑顔。

それは広がりすぎかも、、、

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