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『公園物語』 その7

朝、7時に目が覚めた日は、散歩に出ることにした。

我が家の朝は遅い。
自慢じゃないけど遅い。

子育てが始まってから、仕事がないにも関わらず、
自分一人で静かにする時間は少なくなっていた。
当然だ。

でも、静かにする時間は僕にとって必要だった。
放っておいたらカラカラと回り出してしまう頭を、空っぽにする時間だからだ。

何も考えずに「ただ生きる」ということを、
僕は妻から教わった。
もちろんなにも考えていないわけではない。
妻も僕も。
しかし「ゆだねる」ということを、その大切さを、僕は教わったのである。

気を抜くと頑張ってしまう僕、焦ってしまう僕だから、
「ゆだねる」ためには、「静まる」必要があった。

ある朝7時に目が覚めて、「散歩に行きたい」と思った。
だから家を出たのだ。

一人の静かな時間のために、朝のその時間が狙い目だと、帰ってきてから思った。発見だ。

その日から早く目が覚めた日は散歩に行くようになった。


小学校で夏休みがちょうど始まったぐらいの頃もまた、朝から散歩をしていた。

いつもの公園をただグルグル歩く。
小さな丘の上に座る。
また生えはじめた雑草の上を踏んで倒す。
そんなことをしていた。

そんな時、
「お!なにしとん!」
と、後ろからの声。
なんか、ビクッとしてしまった。
ちょっと恥ずかしい。
「お、おう!
 おまえらかー。まあ朝の散歩や!
 おまえらは?」
小6男子たちだった。


実はこの小6たち、
以前、買い物帰りに下のメイン公園で、
とんでもない下ネタを叫びながら野球をしているところを見かけて声をかけたのだ。
「〇〇〇〇〜!!! ヒットーー!!」
とても、僕の口からは言えない。
「おい、めっちゃ下ネタやん(笑)」
そう声をかけたのだ。
すると嬉しそうにもっと下ネタを叫びだした。
「おいおい! それ意味わかって言ってんの?」
「え、知らん」
「いや、めっちゃ恥ずかしいことしてんで」
「え、じゃあ教えてよ」
と、言うので、全部解説することに。
なんでこんなことに、、、
でも彼らは嬉しそう。
帰り際に一人が言った。
「バイバイ!下ネタ解説おじさん!」

そんな小6男子たち。
「おまえらは? こんな朝からどこ行くん?」
「おれら? ラジオ体操やで!
 あ! 下ネタ大好きおじさんも行こや!」
「誰が下ネタ大好きおじさんやねん!!」
大好きはあかんやろ、、、

と、そんなこんなでラジオ体操。
そこにはどこに隠れていたのかというぐらい、たくさんの小学生がいた。
小4女子たちのグループもいる。

初めこそ「え?誰?」みたいな目線で見ていた子どもたちも、同じ小学生の友達がいる大人には、すぐに心を開いてくれた。
怪しむ目に負けないコツは、じっと待つことだ。
時間が経てば、人は異物に慣れる。

ラジオ体操出席カードを作ってもらい、今日のスタンプを押してもらった。
一番前の真ん中にスタンバイした31歳。
全力でラジオ体操をやりきった。
それだけで爆笑。得なもんだ。

ラジオ体操のあとは縄跳び大会。
というか、いつまで跳んでいられるかという耐久レース。
もちろんそれも全力で。

さらにはそのあと2時間しっかり鬼ごっこ、、、
静かな朝の散歩はどこに、、、

それでもそこでめちゃくちゃ友達になった。
これはでかい。

その日から2週間、毎日行った。

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