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新型知財戦略

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2020年7月の記事一覧

日仏のワクチン開発の相違

慶応大岡野先生の講演を聞いていたら、日仏のワクチン開発の相違を語っていた。日本は、一例でも有害事象が出るとストップする。フランスは、有害事象について、統計学的処理を行い、利益衡量をする。これだとワクチン開発は日本ではできないことになる。日本人はどうしても統計学的な話に弱い。ここをどうにかしないと発展しない。

ところで、ワクチンについて製薬会社にお金を出してもらうという話が出てきた。日本ではもうか

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E-2082事件

2019年6月,日本国内で実施された治験の健康成人を対象とした臨床第I相試験で,1名の被験者が治験薬の投与完了後,5日目に自死した事件があったらしい。新薬候補物質を人類に初めて投与するヒト初回投与試験(first in human trial: FIH 試験)として行われたもので、英国ロンドンの、2006年に抗ヒトCD28モノクローナル抗体TGN1412事件や、2016年の、フランスブルターニュ地

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保険償還制度と知財

医療ビジネス上重要な点。保険上の価格設定。これにも戦略が必要。

A申請、B申請、C申請今年改訂 事 務 連 絡 令和2年2月7日

医療機器の保険適用上の区分は次のとおりとする。

A1(包括) 当該医療機器を用いた技術が、診療報酬の算定方法(平成 20 年厚生労働省告示第 59 号。以下「算定方法告示」という。)に掲げられている項目のいずれかによって評価され、保険診療で使用できるものであっ

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再審査期間と使用成績評価期間

医薬品にある再審査期間は事実上のデータ保護権として作用していますが、医療機器で導入された使用成績評価期間は、再審査期間とは意味合いが違うこととなった。PMSとの関係で、医療機器では、事実上の参入阻止期間にはなっていないが、新規性による。ということのようです。

新医療機器が、既承認の医療機器(使用成績評価の調査期間中のものを除く。)と構造、使用方法、効果又は性能が明らかに異なる医療機器と言えればよ

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医療機器の承認・認証審査基準と知財審査・評価

Clinical performance臨床性能

Clinical efficacy臨床的有効性

Clinical effectiveness実社会での有効性

医療機器の審査における基準。性能は実施可能要件、臨床的有効性は進歩性の要件、実社会は産業上利用可能性に類似する概念と思われる。あるいはefficacyとeffectivenessは、進歩性の両輪と考えてもよいかもしれない。

規制と知

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非知財情報・非特許情報という表現やめませんか?

非知財情報・非特許情報という表現やめませんか?

今日の話は過去の自分への反省も込めています。

2017年4月以降、極力使わないようにしているキーワードがあります。それは

非知財情報・非特許情報

です。

知財情報・特許情報に非ず、で非知財情報・非特許情報です。

ちなみに ”極力使わない” と書いたのは、まだ使ってしまっているケース(過去から続いているセミナーアジェンダに掲載されている例なども含めて)があるからです。

ちなみに拙著「特許

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On sale bar

アメリカというのはつくづく面白い国だと思う。

特許が認められる要件に新規性(novelty、anticipation)という基準がある。この中にOn sale barというものがある。訳しにくいが販売行為による新規性喪失というもの。

アメリカは2013年に先発明主義から先発表優先先願主義に移行していて、実質的には他の国の先願主義(最初に出願した人が特許をとる)に移行したことになっている。原則と

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リスクマネジメントと知財

本日は、リスクマネジメントに関して学ぶ機会があった。知財の講義ではなかったが、いろいろ気づきがあったので書いてみたい。

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用語の定義~知財デュー・ディリジェンス(知財DD)

このところ、用語の定義の相違に悩まされることが頻発している。一例が「知財DD」。

特許庁も、

https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/h30_jitsumusya_txt/27_pp.pdf

で詳細に説明している。そこでは、DDを「出資や提携、買収を検討する際に行う、相手方会社のリスク評価及び価値評価の

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7月に頼まれているセミナー

「知財戦略と医薬品ライセンスー医薬品研究開発、臨床試験、薬事の戦略ー」

【セミナー項目】
1.知的財産権の本当の意味~「独占権」ではありません
2.「特許」をとることの意味~自分が「特許」をとることと、他人の特許を「侵害」しないことは、
まったく異なります!
3.知財制度と権利行使~訴訟提起が前提の米国のANDA制度
4.研究開発と知財戦略
5.臨床試験と知財戦略
6.薬事と知財戦略
7.特許の

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温故知新 漢方と特許

漢方薬というのは傷寒論等に代表される古典に由来する治療術と思われており、特許とは無縁と考えられている向きもあるが、実は、漢方でも特許はとることができる。台湾などでは、特許の審査基準に漢方薬草に特化したものがある。

https://www.tiplo.com.tw/jp/tn_in.aspx?mnuid=1258&nid=43250

同様の動きは中国でもあるようです。

http://kyk-i

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Utility Patent とDesign Patent(特許と意匠)

本日は、特許と意匠の両方で保護する客体について議論があった。特許で十分と考える会社。意匠こそ重要と理解してくれるアカデミア。議論の結果意匠の重要性が理解された。知的財産に対するコスト意識はやはり格差があるとも感じた一日。