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#037.ロングトーンって何だろう 2

前回に続き、ロングトーンについて書いてまいります。今回は実践的なお話が多くなります。前回の記事は、こちらからご覧いただけます。


ロングトーンで何ができる?

ロングトーンは「音の長く伸ばす練習」とは限りません。前回お話したようにロングトーンは具体的な内容を自由に入れて目的を持たせるための「箱」ですから、その箱に何を何のために入れるかを具体的に決めて実践することが大切です。

今回はその時のためのヒントを挙げてみたいと思います。

休憩や休符をこまめに含める

僕が音大生の頃、1,2年生の室内楽の授業では最初に金管全員が集まってロングトーンで全調の音階をノンストップで吹き続けるという意味不明な練習がありました。なぜそんなことが始まったのかよくわかりません。ただただキツいだけでした。金管楽器、特にトランペットはマウスピースが口から話せない状態がたった数分続くだけで唇の血流が悪くなり、健康に演奏し続けることが難しくなります。バテでも意地で吹くとか、まったく意味のないことですから、ロングトーン練習は定期的に休符を含めたパターンで行うように工夫しましょう。

全ての音階を演奏できるようにする

先ほどのお話にあがった音大生の時の練習方法には問題がありますが、全ての調の音階を演奏することは大切です。音階(調)は音楽を構成する最も重要な存在のひとつですから、シャープやフラットがたくさんついているから難しい、だからやらない、と逃げていても、明日渡されるパート譜がシャープだらけの曲かもしれません。
そもそも難しいと感じるのは何も調号が書かれていないものを基準と考えているからです。吹き慣れてしまえば、どのような調号でも同じように演奏できるはずです。

音程感を養う(音階)

音階が原則的に短2度(半音)と長2度(半音+半音/全音とも言う)で構成されているのはご存知と思いますが、どこが長2度でどこが短2度か理解できていますか?そしてその音程の違いを感じ取れますか?

さらに、短調の和声短音階になると増2度(半音3つ分)の音程も出てきます。

こうした音程をイメージする力、音楽的に美しい音階を演奏できるようにする技術をロングトーンでじっくりと実践できます。また、半音階で短2度の連続を美しく演奏することも大切です。

なお、短調については過去に詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

音程感を養う(インターバル)

徐々に音程を広くしていくインターバル練習も音程感を養うには効果的です。金管楽器は特に、広い音程の移動を難しいと感じる場合が多く、それを解消する正しい音域変化についてもロングトーンは研究できる良い方法です。

上記の譜例のように2人で演奏することでそれぞれの音程から生まれるハーモニーを感じることもできます。

音を出すためのルーティンの確立

楽器を構えて音を出すまでの一連の流れ、セッティングルーティンを確立させることが安定した演奏を求める上で非常に大切です。
常に丁寧なセッティングで演奏をするためにロングトーンを利用するのもひとつの手段だと思います。

タンギングの質やアーティキュレーションの表現

スタッカートやアクセントなど、楽譜に出てくる様々なアーティキュレーション記号にはどのような表現の可能性が考えられるのか、それぞれの場面でどのように解釈し、演奏するのかをロングトーンで実践するのも良いと思います。
経験則ですが、アクセントは舌を強く突く、と考えている奏者が多いように感じます。ですが、それが本当に効果的な演奏につながるのか、いままで正しいと思っていたその方法を検証するのも、他のアプローチでもっと的確な表現ができないのかを研究するにもロングトーンを利用する価値はあると思います。

音の終わり(リリース)の表現

「音の処理」「リリース」などと言われることもありますが、管楽器はポップスやジャズ作品以外では原則として音を吹き終える際に舌で止めることはしません。しかしこれが難しく感じる方も少なくありません。舌で止めずに安定した終え方をするにはどのように演奏すれば良いかを研究することもロングトーンは有効です。また、盛大に演奏を終えたり、フレーズを優しくまとめて演奏し終わるなど、語尾の様々な表現もロングトーンで身につけておきたいところです。


このように挙げてみるとロングトーンには本当にできることが無限にあり、個人練習時でも複数名で行う場合でも様々な題材を提示して、意欲的なロングトーンの時間になれたらと思います。ぜひ今回の記事を参考に、まずは個人や少人数できちんと結果につながるロングトーン練習を行なってください。次回は主に合奏でのロングトーンについてお話しします。



荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。