てしこ

コロナ渦で読書好き❤︎そしてアート好き❤︎ 早稲田大学卒→元旅行会社勤務✈️→脱サラ イギリ…

てしこ

コロナ渦で読書好き❤︎そしてアート好き❤︎ 早稲田大学卒→元旅行会社勤務✈️→脱サラ イギリスバーミンガム大学大学院でArt History and Curatingを学ぶ🎨 島で3年間隠遁生活🌴→今は地元で転職活動中。

記事一覧

「推し、燃ゆ」を読んで

この本の帯に豊﨑由美さんが「すべての推す人たちにとっての救いの書であると同時に、絶望の書」と書いてあるが、本当にに絶望をみた。 無職になって、いままさに「なにわ…

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2年前
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人には話せないそれぞれの金銭事情を身にしみて知れる「三千円の使いかた」

「金銭事情」は友人同士で話すのは、タブーな感じがある。 旅行や外食でもなんとなく「高い」と思いながらも、「この時ばかりは気にしてはならぬ」と笑顔で応じる。クーポ…

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2年前
4

文豪の生活を描いた「めぞん文豪」を読んで悶々。

「太宰治・石川啄木・川端康成らが現代を生きていたら…」を妄想して描いたヤングキングコミックス連載の漫画「めぞん文豪」。文豪たちが一つ屋根の下で共同生活をしながら…

てしこ
2年前
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「そして、バトンは渡された」の納得できないところ

瀬尾まいこさんの本は一度も読んだことがなく、ミーハー的に話題の映画が観たくなって読んだら、サクサク1日で読めるほど、物語が面白く展開していく。 (ここからネタバ…

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2年前
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東山魁夷「風景は心の鏡」

東山魁夷の作品が好き。 自然へと回帰するようなやさしい気持ちになるのが、私にとっての東山魁夷。 そして、彼が書く文章も好き。文体すら芸術性がある。 例えば、『日…

てしこ
2年前
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孤独に襲われ夜は、横尾忠則・穂村弘の「えほん・どうぶつ図鑑」を切り取って.

どこへ行っても自分の居場所を探しているような。きっとどこかで「誰か」が私を待っている気がして。それでも目が覚めると変わらない朝。 どうも。初っ端からポエマー気取…

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2年前
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平野啓一郎「本心」から学ぶ現代社会問題

平野啓一郎の「本心」…。これは「小説の枠に収まりきれない未来予測」だった。 今後やってくる自分の「未来」、気候変動問題、格差社会、少子高齢化、超長寿社会…。その…

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2年前
2

電車と船を乗り継いで島に帰る。街灯が灯り、夜が始まるというのに、真っ暗な世界に帰るので、いつも切ない。たまたま、久石譲のMerry-Go-Land(ハウルの動く城のオープニング)を選曲したら、世界が変わった。車窓からの景色が明るく、気持ちも明るく。船からの眺めもジブリの舞台。

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2年前

「悪童日記」から学ぶコロナ渦の生き方

「悪童日記。ラスト3行は忘れられない」…レビューを読んだ時、そう書かれていて壮絶なラストを想像したが、想像以上であった。なんだろうこの気持ち。双子の「ぼくら」の…

てしこ
2年前
4

原田マハ「リボルバー」はゴッホを愛するものが思い描く夢物語

自己紹介が遅くなりましたが、私はヴィンセント・ヴァン・ゴッホを愛してやまない者です。 ゴッホの絵に心を射抜かれ、脱サラ。美術を一から学ぶため、イギリスへ渡航し、…

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2年前
3

村田沙耶香「殺人出産」で思わず殺人を肯定してしまいそうな感覚に陥る脅威

※ネタバレあり 「コンビニ人間」を読んだ時も、「地球星人」を読んだ時も、読み終えた際は、恐怖を感じ、ボロボロと涙が出てきた。村田沙耶香が描く世界が怖くなって、夜…

てしこ
2年前

「推し、燃ゆ」を読んで

この本の帯に豊﨑由美さんが「すべての推す人たちにとっての救いの書であると同時に、絶望の書」と書いてあるが、本当にに絶望をみた。

無職になって、いままさに「なにわ男子」の沼にはまりかけている私の身としては、自分の事の顛末を覗き込んでいるような…。

(以下、ネタバレ含みます)
ところどころ自分とも重なった。「社会不適合者」物忘れも激しく、片付けられない。バイト先でも注文を忘れたり、なかなかこなせな

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人には話せないそれぞれの金銭事情を身にしみて知れる「三千円の使いかた」

人には話せないそれぞれの金銭事情を身にしみて知れる「三千円の使いかた」

「金銭事情」は友人同士で話すのは、タブーな感じがある。

旅行や外食でもなんとなく「高い」と思いながらも、「この時ばかりは気にしてはならぬ」と笑顔で応じる。クーポンを提示するのも「ケチケチしている」と思われそうで気が引ける。

そんなこんなで日常にふと際立つのが、自分自身のお金がない惨めさ。僻み。そして、ケチくさいことへの嫌悪感。

決して、裕福な家庭で育ったわけではない。無理をして大学に行かせて

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文豪の生活を描いた「めぞん文豪」を読んで悶々。

文豪の生活を描いた「めぞん文豪」を読んで悶々。

「太宰治・石川啄木・川端康成らが現代を生きていたら…」を妄想して描いたヤングキングコミックス連載の漫画「めぞん文豪」。文豪たちが一つ屋根の下で共同生活をしながら、SNSを駆使してtweetしたり、クラウドファンディングしたり…。現代を生きていく姿が見られるなんて、なんて面白そう!と期待して購入したが、正直期待外れであった。

なにせ主人公の太宰がイメージと違って、泣き虫の愛らしいピュアキャラで描か

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「そして、バトンは渡された」の納得できないところ

「そして、バトンは渡された」の納得できないところ

瀬尾まいこさんの本は一度も読んだことがなく、ミーハー的に話題の映画が観たくなって読んだら、サクサク1日で読めるほど、物語が面白く展開していく。

(ここからネタバレ入ります)

サクサク読める理由の一つが、会話のテンポの良さ。特に森宮さんと優子の会話。森宮さんのすっとぼけ具合が茶番劇のように快活で、日常の出来事がほのぼの、ほっこりする。森宮さんが、毎日作るあったかい料理も元気が出て好き。学校であっ

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東山魁夷「風景は心の鏡」

東山魁夷「風景は心の鏡」

東山魁夷の作品が好き。

自然へと回帰するようなやさしい気持ちになるのが、私にとっての東山魁夷。

そして、彼が書く文章も好き。文体すら芸術性がある。

例えば、『日本の美を求めて』という魁夷の本では、「風景は人間の心の祈り、そして心の鏡」と述べて、自然との調和を訴えています。

風景は、いわば人間の心の祈りである。(…)庭はその家に住む人の心を最も良く表すものであり、山林にも田園にもそこに住む人

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孤独に襲われ夜は、横尾忠則・穂村弘の「えほん・どうぶつ図鑑」を切り取って.

孤独に襲われ夜は、横尾忠則・穂村弘の「えほん・どうぶつ図鑑」を切り取って.

どこへ行っても自分の居場所を探しているような。きっとどこかで「誰か」が私を待っている気がして。それでも目が覚めると変わらない朝。

どうも。初っ端からポエマー気取りましたが、好きな人も恋人もいない時、途方もなくどうしようもない気持ちになる時はありませんか。わたしにはあります!

そんな気持ちに寄り添ってくれたのが、なんと横尾忠則のえほん!

絵:横尾忠則 文(詩):穂村弘の『えほん・どうぶつ図鑑』

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平野啓一郎「本心」から学ぶ現代社会問題

平野啓一郎「本心」から学ぶ現代社会問題

平野啓一郎の「本心」…。これは「小説の枠に収まりきれない未来予測」だった。

今後やってくる自分の「未来」、気候変動問題、格差社会、少子高齢化、超長寿社会…。その上でやってくる「自分の死」や「愛する人の死」。

普段目を向けないこと、現代社会問題を、小説を通してとても考える機会になった。平野啓一郎の、作品を通しての社会を変えていこうというメッセージ性にはとても胸を打たれる。

舞台は、今からほんの

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電車と船を乗り継いで島に帰る。街灯が灯り、夜が始まるというのに、真っ暗な世界に帰るので、いつも切ない。たまたま、久石譲のMerry-Go-Land(ハウルの動く城のオープニング)を選曲したら、世界が変わった。車窓からの景色が明るく、気持ちも明るく。船からの眺めもジブリの舞台。

「悪童日記」から学ぶコロナ渦の生き方

「悪童日記」から学ぶコロナ渦の生き方

「悪童日記。ラスト3行は忘れられない」…レビューを読んだ時、そう書かれていて壮絶なラストを想像したが、想像以上であった。なんだろうこの気持ち。双子の「ぼくら」の日記を覗き見していたら、それを影で知っている「ぼくら」に、最後にまんまとやられた気分であった。この本は「私が生涯に選ぶ名著30」に勝手にノミネートされた。

この本の一人称は「ぼくら」。舞台は、第二次世界大戦期末〜戦後にかけての(おそらく)

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原田マハ「リボルバー」はゴッホを愛するものが思い描く夢物語

原田マハ「リボルバー」はゴッホを愛するものが思い描く夢物語

自己紹介が遅くなりましたが、私はヴィンセント・ヴァン・ゴッホを愛してやまない者です。

ゴッホの絵に心を射抜かれ、脱サラ。美術を一から学ぶため、イギリスへ渡航し、修士論文は「ゴッホ」について。麦畑行って、ゴッホのお墓の前で嗚咽しました。ちゃっかり「ひまわり」も添えて。なので、ゴッホとゴーギャンの研究者でもある、主人公「高遠冴」に妙に感情移入…。

本の結末というと、ゴッホファンが一瞬でも「幸せな気

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村田沙耶香「殺人出産」で思わず殺人を肯定してしまいそうな感覚に陥る脅威

村田沙耶香「殺人出産」で思わず殺人を肯定してしまいそうな感覚に陥る脅威

※ネタバレあり

「コンビニ人間」を読んだ時も、「地球星人」を読んだ時も、読み終えた際は、恐怖を感じ、ボロボロと涙が出てきた。村田沙耶香が描く世界が怖くなって、夜は眠れなくなった。



村田沙耶香の作品は、日頃なんとなく感じる「社会の圧力」や「違和感」をそのまま物語として体現し、ダイレクトに自分へ責めてくる。社会の体現としての登場人物たちの声が、時に自分に向けられているような感覚で、傷つけられ

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